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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
海底古代都市編
81/106

二神戦争

地の文が多いと思います

 これは,何億年も前の気紛れの戦争の話である。


 * * * 


「セト君」

「どうしたの,兄さん」


 兄さんと言われた誰かは笑顔で勝負をしないか,と言った。この世界を統べる二柱の神はどちらが強いかを決めようとした。

 兄の神は理論のある魔術,弟の神は奇跡を扱う魔法と努力の結晶体である兵器で。


「やるね。けど,まだまだだね?【戦の神】」

「……っ」


 兄は詠唱をして戦の神を創る。セトはその魔術式を解析して,自分の魔法に変換させた。そうして二柱の神は様々な神を創って,戦いに参加させた。例えば仙人,死の女神などである。

 そんな神達の戦いを見ていた『人』がいた。当時,主に信仰されていたのは弟のセトである。そんな彼が戦っているのを見て,人間達は応援したくなった。意気込んだ人々を見て,天才は笑う。そして,そんな天才が魔法というものを解析して人間にも使えるようにした。

 セトの使っていた兵器も模倣して,さらに強化させた。


「ありがとうな,マリー」

「いいんだよ。みんなであの神様集団を倒そう」


 セトは人間達の中にとても頭の良い者がいると聞いた。彼は,マリーに神を殺せる兵器を造ってくれないか,と頼む。最初は驚いてマリーだったが,少し考えると,笑顔で引き受けてくれた。


「まずは,いろんな神様の特徴を調べていかないとっ」


 マリーはそう言って,神々の戦場に乗り込んでいく。その共通点を探すという調査だけでも,神を二,三柱殺した。こんなものかと思ったマリーだったが調べてみると,案の定,一番神格が弱い集団に所属していた。

 そうして殺した神を研究所に運んで解剖し,共通点を見つけ出そうとした。


 * * * 


「これが共通点か……」


 戦争が始まってからおよそ五年で見つけた神の共通点。それは全ての神に『神核』があることだった。それを再び研究して【神殺しの光】と名づける。

 それが完成したという情報がどこからか漏洩してしまったらしい。【神殺しの光】を奪うために神がやってきた。


「試しに使ってみようかな?片手剣に変化」


 マリーがそう言うと,手に抱えた光が青白く光る銀色のナイフに変わった。そしてマリーはため息を吐いて,


「あなた達,馬鹿なの?」

「いきなり何を言い出すんだっ」

「だって,これを食らったら死んじゃうわけでしょ」


 そこであっ,となった神達。しかし,マリーは彼女の信仰するセトのために容赦をしない。

 マリーが一通り神を殺して,研究所を移動させようかなどと考えていた時,背後からコツコツ,といった音が聞こえてきた。咄嗟(とっさ)に後ろを振り向くと,黒髪の美人が机に置いてあった研究資料を見ている。


「なるほどねー。神核にダメージを与えて攻撃しているんだね」

「……貴女は?」

「私,碧帝」


 聞き覚えのない名前だった。そう考えた瞬間,碧帝から黒くて禍々しい物体が飛んできた。マリーが【神殺しの光】で盾をつくっていなかったら今頃,肉塊になっていたことだろう。


「それは……?」

「ふふっ,敵に情報を与えるわけないでしょ」


 目を細めたマリーは近くにあったリモコンで生物型の兵器を一斉起動させた。そして,それらに奇跡の力を込めて碧帝に向かって攻撃した。

 一瞬,自分にどんな攻撃が当たったのか分からなかったのだろうか。碧帝は目を見開いていた。


⦅こんなんで倒れてくれたなら,あの光を使っても良かったわね⦆


 【神殺しの光】を受けた神が死ぬのは当然だが,神格が高い神は触れただけで死んでしまうようになっているのだ。そして,神以外にその光で攻撃しても何も効果がない。つまり,神殺し専用のものなのだ。


 碧帝はすぐに立ち上がって微笑んでいた。何がおかしかったのか,マリーが聞くと,


「これで私の術式が使える」


 そう言った瞬間,碧帝の横の空間からマリーの造った兵器そのものが現れた。何らかの罠を疑ったマリーだが,斉射,と碧帝が言うと,銃器の形をした巨大兵器は一斉にマリーに向けて攻撃をし始めた。


「っ!?」

「これが私の術式。まあ,最終兵器ってやつはまだ隠しているんだけどね」


 碧帝にはそんなことを言う余裕があった。彼女自身でしなくても,兵器達がマリーを攻撃してくれるからだ。


「どう?結構余裕なくなってきたでしょ」

「まだまだっ!!」


 そう言って,マリーは虚空から手榴弾を取り出した。彼女のその様子を見て,碧帝は少し慌てている。自分の危機というよりも,マリーへの心配と同情という感情だろうか。


「いいの?研究資料,全部燃えちゃうけど」


 心配している碧帝の瞳を見つめて,意地悪な笑顔で彼女に言う。


「実は,これじゃないんだ」

「?」

「わたくしの神殺しの光よ,手榴弾に変化なさい」


 光はどこからともなく現れ,手榴弾に変化した。それを見て,碧帝は焦り始める。そしてピンを抜くと,青白い閃光が辺りに広がった。


「殺したか……?」

「残念」


 声が聞こえても,反応をすることができなかった。殺傷能力,そして技術力,あの実力は神と言うしかなかったはずだ。


 ならば,彼女は何者なのだ?


「ふっふっふ……驚いたでしょう?」

「あの結界とやらで防げるはずないっ……!!」


 碧帝は笑いながら言った。何も,彼女自身で『自分は神である』と自称しているわけではない。碧帝が,化け物みたいなただの人間という可能性だってあったはずだ。

 そんなことすら考えていなかったマリーは自分自身を軽蔑してしまった。研究者だというのに,偏見だけで結論を勝手に決めてしまう自分自身がなんとなく許せなくなったのだ。しかし,実力が神と同等かそれ以上ということしか,碧帝については何もわかっていない。考えながら碧帝の攻撃を避けていたが,彼女から答えを教えてくれた。


「私はね。仙人って言って,人間から別の存在へと昇華した元人間なの。君は気づいていなかったかもしれないけど,神様以外はその光でダメージ食らわないんだよね」

「なんで知ってっ……!?」


 わかるよ,と碧帝は言う。どうやら,遠くから先ほどの神殺しが見られていたようだ。あの時は派手にやりすぎてしまって,【神殺しの光】の構造に気がついてもおかしくはない,とマリーは思った。

 碧帝は魔術で誰かに呼ばれたらしく,目眩しをした後にどこかへと消えていった。


 * * * 


「碧帝くん,調査結果ではどうなったか教えてくれるかな?」

「はい。神以外は触っても刺されても何をされても被害はないようですが,神格の高い神になっていくごとにひどくなっていって,最悪,触れただけでも死に至る恐れがあります」


 被害にあった神の人数を聞くと,兄の神は悲しんでいた。碧帝はなぜ悲しんでいるのかが分からず,それを彼に尋ねる。弱い者から死んでいくのは当然の摂理ではないか,と。兄の神は悲しい表情をしながら,


「君も含めてこの兄弟の戦いのためだけに勝手につくって勝手に殺して……ごめんね」


 と言っていた。碧帝にはそれが分からない。戦っている方が,情報収集なんかよりもよっぽど楽しいと感じたからだ。

 話していた時,二人だけしかいない空間に誰かが入ってきた。そこに入ってきた女は,不思議な顔で報告をしてきた。


「あの……貴方様を信仰していると言った人間がいるのですが……」


 それを聞いた兄の神は驚いていた。確かに,全ての人間はセトの方を信仰していると教えられている。そして,この戦争が始まる前までは兄の神の存在を知らされていなかったという。


「名前はなんていうの?」

「アリス・シュプライン」

「なるほど……イレギュラーか」


 イレギュラーというよく知らない単語を聞いた女と碧帝は首を傾げていた。兄の神は説明をする。二人で世界を創ったときに,全てが予定調和だとつまらないから数千年に一度だけ,全く予想もしない行動をするような人間を創った。

 神はどこまでも気まぐれで,それだけで世界を滅ぼしてしまうような自己中心なのだなと思う碧帝だった。

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