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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
華國編
75/106

国外追放で冤罪を解く

「そのお菓子……私に頂戴っ!」

「じゃんけんねー。はい私が勝った」

「「「あーっ!?」」」


 リリスは随分と後宮という場所に慣れていた。しかし翠蘭兄妹の冤罪を解くための証拠も見つけて,後は黒幕を追い詰めるだけとなっていた。


「これって不正に資金を得ていたっていう証拠だよねー?これを邏明さんに突きつければいいんだよね」

「リリス,邏明って誰?」

「…………え?前,会ったことあるよね」


 リリスはそう言ったが,碧帝は首を横に振っている。そこでようやくリリスは誰が有名な家の長を殺したのかが分かってきた。


「今日,邏明さんって人のところに乗り込みます」

「分からないんだけどさー,宮廷だよね。どうやって行くつもり?」

「簡単な話だよ。脱走すればいい」


 本気で言ってるの,と碧帝はそんな顔で見ていたが,リリスは気づかずに前回と同じように透明化の術式を使って宮廷に忍び込んだ。


「さてさて,邏明さんとやらの住居はどこかなっと…………カーティス!!」


 リリスが見た先には,カーティス達の集団もいた。彼らも真相に気がついて乗り込んできたのだろうとリリスは考えた。ここで少しいたずら心が芽生えたのか,驚かしてみたいという気持ちになってしまう。罪悪感はあったが,碧帝をその場に留まらせておき,カーティスの背後に忍び寄る。


「わぁっ!!」


 リリスがそう言うと,カーティスは倒れてしまった。流石に驚きすぎではないだろうか。逆にリリスが驚いてしまい,透明化の術式を解除してカーティスの顔を見た。しかし,服装はカーティスでも顔は彼ではなかった。春雷(チェンレイ)だった。


「リリス,そんなんで僕を騙せると思っ…………可愛い……」

「えっ,今度こそ倒れちゃったけど大丈夫!?」


 リリスの装束姿で倒れてしまってから目覚めるのには数分くらいかかった。


「起きた?」

「可愛い,似合ってる」

「あのさー,イチャつくのは後にしてほしいんだけど……まずあそこにいる女子について教えてくれないかな?」


 ゼルセピナは虚空を指差した。しかし,主神二人とリリスには見えていた。そこに碧帝がいると言うことが。

 それが見えなかったので,翠蘭兄妹とカーティスは頭に?を浮かべていた。碧帝は透明化を解除してゼルセピナと話し始める。


「ねえねえ,なんでリリスちゃんを誘拐したの?」

「ひぃっ……グリーシア神話の主神様じゃん……」

「そのことは秘密によろしくね。でも,信仰されている人口で言ったらほぼ大差ないんじゃない?」


 どうやら神の中の序列は信仰されている人数で決まるものらしい。二人は邏明の屋敷に行くまでずっと話していた。



「また来たんですね。今度は女官まで,一体今回は何の用ですか?」

「罪を認めなさい」


 翠蘭は邏明の質問に秒で答えた。彼女の返答を聞いて,邏明は取り乱していた。だが,それも少しの話で,すぐに普段の表情へと戻っている。その様子を見て,リリスは彼が犯人であることを確信した。というのも,リリスは連続殺人と強盗の罪を立証できるからここに来たわけではないのだ。


「罪と言われても……何のことか分かりませんね」

「少し前にあった連続殺人事件と強盗の件です。貴方,犯人ですよね?」

「確か,あの事件って武術の達人とも言える人達が殺されているんですよ。自分で言うのもなんですが,自分は相当な運動音痴の部類に入りますよ」

「貴方が運動をできるかどうかではないんです。魔術が使えるかどうかです」


 『魔術』という単語を聞くと,邏明は今まで以上に動揺していた。カーティスは証拠を突きつけてさらに畳み掛ける。


「これ,見覚えありませんか?」

「それっ,家宝の…………!?」

「知っているようですね。これにはそこにいる『壊れた女神』の操作の仕方及び現世へ下位の存在としての出現方法が書かれている魔術書です」


 リリスは驚いた。昔には神を従者としてこき使うような術式を生み出した人がいるのか,という驚きだ。しかし,リリスは知らない。神の力を少し借りたとはいえ,たったの数週間で神を現世に出現させたことの凄さを。下位の存在として転生させる方法を発見した一級魔術師でさえ,開発には数十年かかっているのだ。


「ここにいる神を使えば殺人だろうがなんだろうが可能ですよね?神に勝てる者など,この世界にほとんど存在しないんですから」

「…………くそっ,碧帝!!そいつらを殺せ!!」


 邏明が言った瞬間,碧帝の目つきがガラリと変化し,殺戮者(さつりくしゃ)の目つきになった。彼女の攻撃はリリスの防御結界ですらも貫通してくるほどの強さだった。


「さてっ,こんなところでは不本意だったけど……戦ってみたかったんだよねー,別の神話の神様と。他の人たちは警備隊か,皇帝でも呼んできて!後,プレーメスはそこの男を抑えて」

「はぁ……俺も戦いたかったんだけどな」


 プレーメスは邏明を蹴って倒れさせ,彼を椅子代わりにして二人の戦いを見守ることにした。


 * * * 


「哉藍様っ!えっと,邏明様の屋敷で戦闘が行われているので止めていただけませんでしょうか」

「そんなことできるはずないじゃないですか!?あれ見てください。絶対に人間同士では戦ってませんって,あれ?」


 哉藍はそこで気がついた。目の前にいたのは,冤罪だということが確定したが,元々国で危険人物として見られていた一級魔術師達だ。


「翠蘭さんに,春雷さんじゃないですか!!こんなところにいたら衛兵たちにバレますって。早くどこかに行ったほうがいいん…………」

「さっさとついてきて下さい。僕も手痛いことはしたくないので」

「兄様,結構怖いよ。貧民街でのノリを皇帝にやらないほうがいいと思うんだけど」

「そう?けど,ここで拒否をするんでしたら強引に連れて行くしかなくなるっていうのは事実なので」


 哉藍は無言で頷いて二人について行った。



「カーティス,こんな異国人がついてきて下さいなんて言って信用してくれるかな?」

「…………まあ,そんなわけにもいかないだろうね」


 リリス達は警備隊を呼ぶために,詰所に来ていた。


「あのー,あそこで乱闘騒ぎとか色々あるんで出動していただけませんか?」

「いいですよ。皆!容疑者を取り押さえることが最優先だ!」


 あっさりと来てくれた。不思議に思ったリリスだったが,彼らの善意に感謝をして邏明の屋敷まで案内をした。



「意外とやるねぇ……」

『主神同士の戦いだから当然っちゃ当然なんだろうけどね』


 そう言って,ゼルセピナと碧帝の衝突は続く。碧帝はゼルセピナを殺すために,しかしゼルセピナは別のことを目的として動いていた。


⦅呪いの核があるとしたら臓器あたりなんだろうけど,あんまり傷つけたくないなぁー⦆


 ゼルセピナは『呪いの核』を探していた。彼女を操り人形から純粋な神に戻すためには核を破壊しないといけないということが神卸の書には書かれていたからだ。当然,カーティス達には報告していない。危険を冒す可能性があったからである。


「いたたたっ……おい,上に乗るなよ」

「嫌だね。人間如きが俺に指示できると思うなよ」

「はぁ……というか,あの女なんなんだよ。動きが人間じゃねぇ」

「確かに。脳筋の動きじゃない…………だとしたら,彼女は神の尖兵だよ」

「碧帝は主神同士って言っていなかったか?なんで主神が神の尖兵ってことになるんだよ」


 プレーメスにそこまで教える義理はない。そんなことを話しているうちに,決着がつこうとしていた。プレーメスは半歩後ろへ下がって碧帝の攻撃を避け,最後はプレーメスの力強い殴りで終わった。すると,碧帝の体は光の粒子となって消え,どこかへ行ってしまった。



「ゼルセピナさん達,大丈夫でしたかっ!」

「余裕だよー。神をなんだと思っているのかな?」


 ゼルセピナのその言葉を聞いて,リリスは安堵した。そして,プレーメスの椅子になっていた邏明を警備隊に捕縛させた。彼らが行こうとした瞬間,リリスは不敵の笑みを浮かべて邏明に話しかける。


「邏明さん,まだ罪を自白していませんよね?」

「な,何のことだ……」

「これです,邏明さんの収入。なんですか?いつも収入が一定ですよね」

「安定しているんだ。それがなにか?」

「そんなはずないんですよ。陛下に視察しに行ってもらった邏明さんの土地,あそこでは一昨年から米の豊作が続いていましたよね?だったらなんで収入が増えていないんですか?」


 リリスはさらに言葉を続ける。


「貴方が言いたくないのなら私が言います。この人,国家反逆をしようとしていました」

「…………なに?」

「殺された人,あの人たちは保守派だったようですね。貴方が陛下が悪い人だと言っても信じないで陛下を信じた。それが目障りだったから殺すように指示したのでは?」

「うっ…………」

「それは罪を認めるってことでいいんですよね?」

「…………はい」


 そうして,邏明は殺人,強盗,国家反逆,侮辱罪で逮捕された。

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