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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
神々の森編
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国外追放で五人旅

『カーティス君ー。痛い,痛いってぇ!?』

「ちょっ,カーティス?少しは遠慮してあげたらどう?」

『さてさて次はどの道を進めばこの森を抜けられたっけなー』


 ゼルセピナは三人の話を完全に無視して,森の探索を始めた。歩いていくうちに,少しずつ幻想的な森から現実的な光が差し込んでくる。もしかしなくても森から抜けられる時が近いのかもしれない。


『あとはこっちを歩けば……っと,』

「そろそろですか?」

『そうなんじゃないっ。うーん……』

「どうしたんですか,プレーメスさん。そんなに悩んで」


 プレーメスはボソボソと何かを言っている。その内容を聞いて,リリスとカーティスは何を言っているのかよく分からなかったが,ゼルセピナはニヤニヤとしながら簡単にその内容を伝えてくれた。


『つまりねー。彼は人間に化ける術式を考えているんだよ』

「「というと?」」

『ふふっ,多分だけど旅をしたいんじゃないの?しばらくこの森から出てないしさー』

『神ってさ,魔力がすごいから中毒で人殺しちゃうこともあるんだ。だとしても,旅の守護神とも言われている僕がこんな森に囚われてるなんて最悪だよ……』


 神にだって,人間と同じくわがままな部分もある。というか,神の方がわがままかもしれない。だって自分の都合のいいように世界を創っているのだから。


『俺だってあっちの世界に行ってみたいよー』

『確かに。ねえリリスちゃん,私たちも途中まで同行してもいいのかな?』

「私はいいですけど……カーティスは大丈夫?」

「僕も神の遊びに付き合えないほど忙しいって訳じゃないしね……うん。いいよ」

『『マジで?やったぁっ!!』』


 そうして四人は,ゴールである森の出口を探した。途中途中で他の神に出会って不思議な顔をされたが,リリス達は全く気にしない。そうこうしているうちに,今まで見てきた神々しい光から,いつも見てきた,ただ眩しいだけの光になっていく。これにより,四人はここが森の出口であると確信した。


「到着ー!だけど問題は……」

「この二人をどうやって人間にするかだよね」


 リリスとカーティスは悩み込んでしまう。そこで,ゼルセピナが提案した。


『だったら,神話に基づいて私達を人間にすればいいんじゃない?』

「どういうことですか?グリーシア神話にそんな話なかったと思うんですけど」

『俺たちの神話の話じゃないよ。彼女が言っているのは多分,創世神話のことだ』

「確かに。創世神話にはありましたね,そんな逸話」

「これを基にして神を人間にする術式を組み立てる……よしっ,やってみるよ」


 リリスは神々の力を借りて,術式の組み立てと神話の考証を行った。数時間後,リリスはつい大声で言ってしまう。


「で,できたー!!これでやっと森を出られる……!」

『その術式を私たちに撃ってみて』

「わ,わかりました!それじゃあ……【神を人間に,高を平に】」


 リリスがそう言うと,今まで神々しく光っていた二人の神が実体を持った。すると,二人はリリスの頬を触り始める。


「なに,してるんですか?」

「うーん?ちゃんと人間になったか,試してるんだよー」

「柔らか……うぐぁっ!?」

「ちゃんと質量を持つとより痛くなるんですねー」

「さっさと行きましょう!あの森の向こうに」


 四人は森を出ると,そこにはジェイクが立っていた。とても不思議そうな顔をしている。確かに,四人になっているということが謎なのだろう。


「その二人……誰!?」

「こちらのお二方は,えっと,森で出会ってですねー……」

「少しの間,旅に同行させていただくことになりました」

「は,はぁ……」


 ジェイクは,リリス達に真剣な表情で話を始めた。


「二人共……あれから()()経ってるんだけど」

「「……え?」」


 そんな感覚が全くなかったリリスとカーティスは,唖然として神二人の方を見る。恐らく,死者の国と同じように,時間の感覚がこの世界と違っているのだろう。


「まあいいんだけどさー。で,そこのお二人さん。お名前は?」

「あー。ゼルセピナって言います。そっちはプレーメスです」


 ゼルセピナがそう言うと,ジェイクは怪訝な顔をした。


「ゼルセピナにプレーメス…………グリーシア神話?」

「主神みたいに周りに尊敬されて,強い人間でありなさいって意味らしいよ!」

「なんだー!ちょっと似てたし,リリスさんだったら神様でも連れてきそうだなぁーってちょっと思ったんだよね。まあ,神様がこんなに簡単に地上に出てくることなんてないよねー!」


 あはははー,とリリスとカーティスは笑っていた。しかし,意外と真相を当てているのでバレないかどうか不安で仕方がなかった。


「とりあえず,次の国を目指しましょう!」


 * * * 


「リリスちゃんー。次の国はどんなところかな」

「うーん……」

⦅そろそろ中華っぽいところに行きたいなー……そんな国あるのかなぁ⦆


 そんなことを考えていると,国境らしきものが見えてきた。なんの偶然か,国境の門が少し中華風に飾られている。そこを無事に抜けると,今までの欧州風の街とは違っていた。


「なんて表現すればいいんだろう……今までにはない感じだよねー」

「こういうの,中華風っていうんだよね?」

「わぁっ,わぁっ!こういう国って初めて見た!」


 五人は,泊まる予定のホテルに荷物を置いて街をぶらぶらと歩き始める。


「うっわー!なんか世界が違うように見えてくる!」

「確かに。全くの別世界だよね」

「リリス,俺と一緒に回らない?」

「リリスは僕と回る予定なので……邪魔しないでいただけます?」

「また男性を(たぶら)かしてるよ…じゃあ,俺は一人で回ってますんで。四人は好きにしていてくださいー」


 そう言ってジェイクはどこかへ行ってしまった。それと入れ替えで,見知った顔がリリスに話しかけてきた。


「リリスー!遅かったねー!」

「結構待っていたんですよ」

「その声……翠蘭さんと春雷さん?」

「せいかーい。やっと来てくれたんだね!待ってたんだよ!」

「あ,ありがとうございます……?それにしても,なんか風格ありますよね。ここ」


 翠蘭とその兄,春雷(チェンレイ)は腕を広げて,満面の笑みで言う。


「「ようこそ!華國(ホワグオ)へ!」」

「ほわ……ぐお?」


 恐らく華國という国での発音なのだろうが,慣れるのには少し時間がかかりそうだ。


 リリスが周りを見回してみると,翠蘭兄妹以外の国民はなんだかピリピリとしている。


「何か……あったんですか?」

「ああ,この雰囲気のこと?なら大丈夫。リリス達に警戒している訳じゃないから」

「?」

「とある武器が大和国って所から運ばれてきたんですよ。それを他国に悪用されないか,それが不安なんだと思います。あと半世紀は僕たちの国が所有していないといけないらしいですからね」


 カーティスはすかさず気になったことを質問する。


「その『とある武器』ってなんですか……?」

「武器……とも言えないんだけどね。青白い光を放つ『何か』だよ,あれは」


 青白い光を放つ『何か』。そして大和国にあった武器という情報。これでリリスは仮説を立ててしまった。


「それで,その武器は何なのですか?」


 初対面のはずのゼルセピナだが,ずかずかと聞いている。神としても,自分の知らない武器となると気になってしまうのだろうか。


 翠蘭は声を少し低く,そして小さい声でその武器の名前を四人に話した。


「【神殺しの光】……大和国では【神殺しの武器】って呼ばれていたらしいんだけどね。正式名称は一番最初に話したやつだよ」


 その瞬間,空気が凍ってしまった。それには春雷も気づいたのか明るい声で翠蘭の話に追加をする。


「まあ。神を殺せるほどの魔力を持つものだと僕は思っていませんけどね」


⦅私は触れてもいいものなのだろうか⦆


 リリスはそれについては結論を出せなかった。しかし,


⦅あの二人には絶対に近づけない方がいい⦆


 そう思いながら,ゼルセピナとプレーメスの方を見る。彼らを人間にする術式の基となった創世神話の中では創世神は人間によって処刑されることになっていた。もしかしたら,同じようになってしまうのかもしれない。


 リリスにできることは,怪しいものから二人を遠ざけておくことしかできないのだった。

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