国外追放で光を見る
森を抜けて一時間ほど経った時,光が見えてきた。リリスは戦いすぎで忘れていたが,既に戦い始めた時には真夜中だったのだ。もう朝日が昇ってもおかしくない時間帯なのだろう。
「今までの朝の中で一番綺麗……」
リリスはそうポツリと呟いた。
リリス達が来た国,リュミエールはとにかく夜明けと日没が綺麗と有名である。『光の国・リュミエール』と看板には書かれてあった。ジェイクとは離れて行動することになり,リリスとカーティスはホテルを探してから色々なところを回ることにした。
今回泊まるホテルは二十階建てで,二人はそこの十九階に泊まることができた。
「眺めがいいねー。ここからだったら誰にも邪魔されずに朝日が見られそう!」
「確かに。二人だけで見れそうだねっ」
「一人で見るつもりだったんだけど……」
リリスは苦笑しながらそう言ったが,カーティスは意思を変える気はないようだ。彼が早起きできるわけがないだろうと考えたリリスは適当に頷いた。
「さてっ,どこから行こうか」
「うーん……ちょっとさ,別々に行動しない?」
「えっ,急にどうしたの」
「あー。えっと,なんとなく。どう?」
「いいけど……浮気とかしないでね」
カーティスは驚きながら,すぐに普通の表情を取り戻した。
「そんなことするはずないよー。僕はずっとリリス一筋だから」
「ふふっ,ありがと」
ホテルを出て別々の行動を始めたリリスは,どこに行くのかを迷っていた。
「さてさて,どこに行きましょうかねー……ん?」
リリスは裏路地のようなものを見つけた。光の国には相応しくなさすぎる。真っ暗闇だった。
「……なんだか,更に迷っちゃいそう…」
暗闇の中を彷徨っていると,足元を誰かに掴まれた。後ろを振り返ると,古い服を着た男がリリスに必死に懇願していた。
「……お願い,します……食料を…下さい…」
「えっ,あっ,どうぞっ!」
リリスは焦ってパンと水を取り出した。水は,属性魔術が苦手なリリスはとても迷ったが,他の場所から転移させて飲める水を提供した。
「ありがとう……ございます……」
男はオリビアと名乗り,リリスに感謝の言葉を告げた。
「あのー。なんでこんなところにいるんですか?他の人は見当たらないですけど……」
オリビアは困った顔でリリスと街を歩き始めた。
「助けていただきありがとうございます……で,なんで僕があんなところにいたのかですよね」
「はっ,はい。見た感じ,この国は治安も良さそうですし王政でもなさそうですし。身分差別とかではないんですよね……?」
「そうです。元々,僕は孤児で。それで……」
「それで?」
「神の遺伝子と結構似ているらしくて…」
⦅うん?つまり……⦆
神の子でもあるリリスは目を見開いた。
「兄弟……?」
「なんでそんなことになったんですか!」
リリスは声を小さくして,オリビアに伝えた。
「(私も『神の子』だったりするんですよ。つまり兄弟なんです)」
「えぇ……」
オリビアは軽く引いていた。リリスが周りを見回すと,二人の様子を白い目で見ている人達がいた。
「けど,なんで『神の子』なのにそんなに酷い扱いなんですか?」
「この国,聖女信仰で神の子の存在が許されてないんですよね。正確に言うと,聖女様が神の子っていう認識らしくて。僕みたいなのは悪魔の子認定されてしまうんです。ついでに僕はちゃんとした神の子じゃなくて,イレギュラーって天啓で……」
「そんなことはどうでもいいですよっ」
そう言って,リリスはオリビアの手を引いて仕立て屋に入った。
「いらっしゃいませ……なんでお前がいるんだよ。悪魔の子がぁ!?!?」
「全然悪魔の子じゃないです。だから,早く彼におすすめの服を紹介していただけませんか?」
リリスからは殺気が滲み出ていた。それに気づいたオリビアと仕立て屋の女が戦慄していた。
「なんか……ごめんなさい」
「全然いいですよ!私が全額支払います!!」
そう言って,財布を取り出した。オリビアは少し顔を赤くしている。リリスはそれが気になって尋ねてみた。
「あの……敬語を止めませんか!」
「というと?」
「(ほら,僕たちって兄弟なんですよね。普通に話してみたいです…)」
「いいよっ!ところで,オリビアって何歳なの?」
「二十五歳……」
「じゃあ,兄さんだっ!」
「えっ!リリスって何歳なの」
「私……あれ,何歳だっけ。二十歳はいってないと思うんだけど…」
「誕生日はいつ?」
「えぇっと…あ,今日だ」
オリビアとの会話で思い出した。そうだ。リリスの誕生日は今日ではないか。十九歳になったリリスは,変わらない態度で服を待っている。
「なんで誕生日を忘れるの……」
「んー。随分家族に祝われてないからなぁー」
オリビアに呆れられたリリスだった。
「こちらの服はどうでしょうか。とてもお似合いだと思いますよ」
「確かに!これ,買います!」
試着室で着替え終わったオリビアを見て,リリスは絶句した。とても似合っていたからだ。
「似合ってる……似合ってるよ!兄さん!」
「そ,そう?リリスに言われると嬉しいな」
リリスは,オリビアがいつか日の目を浴びることを願って,彼の方を見ていた。




