国外追放と心霊現象Ⅱ
今回は短めです
「眠い……寝ていいかな」
リリスは朝早くから除霊に精を出していたので,疲れてヘトヘトになっていた。カーティスは頷いたが,ベッドに飛び込んだリリスを見て近寄って抱きついてきた。
「……僕も怖いから一緒に寝てもいい?」
「もう二人ラブラブしすぎじゃないの!?ねえ,いつからそんなんなの!?」
ジェイクが二人の状態に大声でツッコミを入れていたが,聞かないふりをした。本当に眠かったからだ。カーティスの質問も無視して睡眠に入ってしまう。
「あー。もう寝ちゃったっかぁ」
「カーティス,なんであんなにリリスさんもデレデレなの。前はすごい冷たくあしらわれてたじゃん」
カーティスは顔を赤らめながらリリスに聞こえないような声でジェイクと話した。その廃屋にある席に着き,少し話し始める。
「なんか,不思議だよね。僕も付き合ってくれるとは思ってなかったから……こんな僕が,リリスと付き合っても良かったのかなぁ」
カーティスは話を続ける。
「僕は,リリスに見合うような人間じゃないよ。魔術はリリスよりできないし,王子の務めだってパーティーに参加すらしたことないし……本当に僕で良かったのかな」
そのカーティスの弱音を聞いて,少し苛ついたジェイクは机を叩いた。
「リリスさんがカーティスが良いって言ってくれたんじゃないの。それなら,リリスさんに直接に聞いてみたらどう?」
そうとだけ言って,ジェイクは布団に入って寝てしまった。
「………あっ,もうベッドの空きないじゃん」
廃屋にあったベッドは二つ。それをリリスとジェイクが占領している。カーティスはため息を吐きながら,椅子に座りながら眠った。
* * *
「カーティス……ベッドに寝させておこっかな」
そう言って,リリスは魔術でカーティスを運んだ。
⦅さて,何をしようかなー⦆
リリスは,想定よりも早く目覚めてしまった。廃屋周辺の除霊も終わってしまったので,二人を起こして早くこの森を抜けようとまで思っていた。その時,交信術式で誰かと繋がっていた。カーティスとジェイクを起こすのは悪いと思ったリリスは,外に出て会話をすることにする。
『リリスー。見えてるー?』
「翠蘭さんと春雷さん!どうしたんですか」
『妹が早くリリスさんに会いたいらしくて。今はどこにいるんです?』
「去り人の森って言うらしんですけど……」
リリスが不確かな口調で言うと,兄妹は驚いていた。
『あの森に入っちゃったの!?』
「何か,あるんですか?」
翠蘭は説明をしてくれた。死者の国に行けない人々が集まりやすいこと,その森の面積は小国一つと同じくらいの規模であること。
『まあ,リリスだったら心配ないと思うんだけどねー』
『一番心配ですわよ。阿呆すぎて,自分が死にかけているという事実にすら気づいていませんでしたもの』
「あのー……そこに誰かいるんですか?」
リリスが警戒していると,画面にはエレーナがいた。それを見て,リリスは少し嬉しそうにする。
「わあ!エレーナさんもいたんですね!その……私があげたブレスレットって身に着けてたりします?」
『だっ,誰がするっていうんですの,あんなもの』
『あれっ,その腕輪の花ってローゼンタールの国花ですよね。どこで手に入れたんですか』
春雷は笑顔で言う。
「ところでなんですけど,なんで三人は一緒にいるんですか?ミハイルさんはどうしたんですか」
リリスのその質問には翠蘭がサラサラと答えた。
『リリスに薔薇の書っていう魔術書送ったよね?それの解読に協力してくれるらしいから。エレーナさんとミハイルさが協力してくれるってすごい珍しいことなんだよー?』
それから,少しだけ解読に協力をして交信術式を切った。
「ねえ,さっきの男誰?」
「わぁっ」
リリスが廃屋へ戻ろうとして振り向くと,そこにはカーティスがいた。少しだけ,いじけている様に見えた。
「さっきの男って……春雷さんなら仲間というか友人というか…?まあ,そんな感じ」
言葉を濁すと,カーティスは抱きついてきた。
「急にどうしたの……?」
「リリスは,なんで僕と付き合ってくれたの」
「急に何言ってるの。もちろん,カーティスは私のことを大切にしてくれるし優しいしかっこいいし……とにかくね!私はカーティスに救われているから。そんな悲しい顔をしなくても良いんだよ」
「うんうん。リリスさんはやっぱり,カーティスの本質を見てくれてるよねー」
いつの間にかジェイクも起きて外に出ていたので,早速森を抜けるために荷物をまとめて廃屋を後にした。
「うーんっと,翠蘭さんからもらった地図によると……この道を抜けると後少しなんだよね」
「助かるねー」
霊は近づいてきたが,カーティスもトラウマを乗り越えたらしく,サクサクと除霊をしていった。
「翠蘭さん曰く,この森にはすごい強い霊がいるらしいから二人とも気をつけてね」
地図を使っていくと,とても大きかったはずの森も後少しというところまで近づいてきた。
「千鶴……?」
リリスは目を見開いた。どうやら,千鶴もこの去り人の森で迷ってしまったらしい。幽霊は言葉を話せない。しかし,なんとなく伝えたいことは分かっていった。今の千鶴には自我というものがない。けれども,千鶴からは苦しそうな雰囲気が漂っていた。
「除霊……しても良いのかな」
リリスの手は震えていた。もう一度,彼女を殺すのが怖かったのだ。決心をして,リリスはあることを言った。
「神のご加護が在らんことを」
そう言うと,一瞬だけ千鶴に自我が戻ったように見えた。そして,話せないながらも口だけ動いていたのをリリスは見逃さない。
『ア,リガト,ウ』
そんなことを言っている気がした。
リリスは千鶴の除霊を終えると,さらに森の出口に繋がっているところまで一直線で進んだ。
「ふぅ……もうこれ,夜じゃない?」
リリスがふと空を見ると,すでに真っ暗になっていた。
その時だった。カツンカツンと杖を床に打ち付けるような音が聞こえて来た。リリスが警戒してそちらの方を見た。
「……師匠……?」
そう言うと,師匠は無言で彼女を襲って来た。
「……っ!?」
手加減など一切ないため,死ぬかもしれない。
相手には何もデメリットがなく,リリスには死というデメリットが付き纏ってくる。
生まれてきた中で最初で最後の命懸けの戦い。
それが真夜中である今,始まろうとしていた。




