国外追放と処刑
リリスは朝早くに目を覚ました。千鶴がくれた着物を見て儚い気持ちになった。
「よしっ!くよくよしてても良いことないし……今日は皆さんに料理でも振る舞おっかな」
「リリスが料理音痴なの,僕知ってるからね」
厨房まで来たリリスはそんな言葉が聞こえて後ろを見た。
「じゃあ,カーティスは私より上手く作れる訳ー?」
「リリスの料理は精神面からしたら君の魔術よりも凶悪だからね……」
どうやらリリスの料理を何回か食べたことのあるカーティスは苦笑いをしていた。
「じゃあ,一緒に作ろうよ」
⦅それで私の料理力が高いってことを証明してやるっ……!⦆
そう意気込んでから三十分。リリスは完全に撃沈していた。
「待って,料理ってこんなに難しかったっけ……」
カーティスはそうボソボソと言っているリリスを半眼で眺めていた。
「リゾットで苦戦している人は初めて見たよ……」
「カーティスってなんでそんなに料理上手なの」
「まあ,僕は器用だから。というかリリスこそ花嫁修行とかで料理とかしなかったの?」
リリスはそれを聞かれて後退りし,彼から目を逸らした。
「あはは……幻想魔術でこっそり抜け出して師匠に魔術を教わってたってことは秘密にしとかないとだよなぁ…」
「リリス,全部聞こえてるよ。本当に不器用なんだから……」
そう言いながらも,カーティスはリゾットの作り方を教えてくれた。
「はぁ……やっと全員分完成させたぁー!」
「お疲れ様。後で抜け出した後の話とか教えてね」
料理を載せた懸盤を,二人は厨房から朝食会場へと運んだ。
「リリスさん,おはよう。すごいねー!自分で作ったの?」
「ま,まあね。上手でしょ」
「実際はほとんど僕がつくったんだけどね」
「ちょっ,カーティス。それ言っちゃだめっ……!」
二人の様子を見て,ジェイクは盛大に笑っていた。
「そりゃあそっか。昔からカーティスって料理上手だったし。リリスさんが料理上手っていう印象があんまりなかったよねー」
「私,皆からどんな風に思われてるの……」
「「魔術馬鹿の脳筋」」
「魔術馬鹿は合ってても良いけど脳筋ではないでしょうが」
カーティスとジェイクの意見が完全に一致し,リリスはついツッコミを入れてしまった。
「おはようございます……って何の匂いですか」
千鶴の部下だった人は会場に入ってきた途端,目を細めていた。彼のその質問にリリス丁寧に説明ををした。
「リゾットって言って,粥の味付けた感じなんですよ。大和国人にはちょっとチーズの味がキツい気もしますが」
「そういえばリリス。この食材,どこから調達したの?」
「えーっとね……私の友達?の行ってた国で貰ってきてくれて,それを交信術式で送りつけてもらったの」
カーティスとジェイクは呆れた表情でリリスを見ていたが,それには気づかない。
「結構美味しいですね」
「本当ですかっ!?ほら,カーティス。私のつくったの美味しいって言われてるよ」
「わー。すごい,すごい」
完全に棒読みである。料理の話をしているとあっという間に時間は過ぎていき,気づけば目の前にあったリゾットもなくなっていた。
「食べ終わったー……カーティス,どこ行こっか」
「うーん……」
二人が迷っていると,千鶴の部下が助言してくれた。
「それだったら,海の上にある神社とかどうですか?」
部屋で着物からいつもの衣服に着替えた二人は旅館の方々に感謝をしてその神社へと向かった。
「ここだね。迫力が凄い……」
リリスはその神社に,何故か威圧感を感じた。
「本によると,ここで願いを込めると勝負運と金運が上がるらしいよー」
ジェイクがあまり興味なさそうに言っていたが,リリスはそれを聞いて目を輝かせていた。
「勝負運……!」
「リリスはもう必要ないと思うんだけど」
カーティスはそう言っていたが,彼女には聞こえていなかった。
「じゃあ……これからも色々な魔術書を解析できますように」
三人は参拝をした後,社の中が気になって入ってみようという話になった。リリスは日本人だったので,わざわざ行かせないように造られている神社にそんなことはしたくなかったのだが,カーティスとジェイクは興味津々だった。
「どうやって行こうか……」
「水属性魔術使って上歩いていけばいいんじゃない?」
「けど,リリスは全く使えない……」
「私は大丈夫。二人だけで行って来なよ」
そういうことに話はまとまり,リリスは魔術書を読んで暇つぶしをしながら二人を待っていることにした。右手に持つのは翠蘭から送られてきた魔術書でその名も『薔薇の書』,左手に持つのは杖を変形させたペン。まだ追加の部分があったらしかったので,再び解読をしていた。
「うーん……これは薔薇式暗号と土地を組み合わせた暗号かなぁ。後で翠蘭さんに地図送ってもらおっと」
そんなこんなで数時間。二人を待っているという事実を忘れて,リリスは暗号の解読に没頭していた。社の方から帰って来たカーティスとジェイクはあり得ないものを見たという表情でリリスを見ていた。
「なんか見たことのない魔術使ってるじゃん」
「そうだねー。暗号の解読,途中まで終わったから試してたんだよ」
リリスは術式の展開を止めると,カーティスの方に近寄って来た。
「何かあったの?」
「あったけど……リリスは見なくて正解だったよ」
「うん。そこに【神殺しの武器】っていう青白い光を出している魔道具があってさ,なんでも神の一族にしか効果がないけど確実に殺せるらしいよ」
もう,夕日が沈みかけていた。
「それじゃあ,戻りますかっ!」
* * *
街の中心部に戻ると,たくさんの人が集まっていた。何やら,大きなイベントがあるらしい。リリスが人混みの中を潜り抜けて一番前へと行くと,正座をしている千鶴がいた。
「千鶴!?」
一日前に捕まったばかりの筈なのに,何ヶ月も食事を抜きにされていたくらいにやつれていた。そして,着物を着ていても見えた傷跡。それは,拷問をされてつけられたものだろうとリリスは考えた。
「リリス,一日振り」
そう千鶴が言っている間にも,町衆は彼女を殺せ,早く消えろなどと言っていた。
「……しょうがない。私はそれだけのことをしてきたからな」
リリスは何も言えなかった。
「何か,遺言はあるか」
処刑役の男はそう言った。千鶴は静かに笑いながらゆっくりと話した。
「今まで支えてくれた人,ありがとう。あと……」
千鶴はリリスをじっと見つめながら再び話を始めた。
「前にも言ったけど,リリス。大好きだよ。よければ私の処刑,リリスに頼んでも良いかな」
えっ,とリリスは動揺したが,処刑役の男は「最期の願いだ。叶えてあげろ」と言って刀を渡してきた。
リリスは恋愛感情ではないものの,この数日間で友情以上の感情を覚えていた。
処刑台に上がり,刀を強く握った。そして,
「ありがとう。さようなら」
そう言ってリリスは千鶴の首を掻き斬った。最期の千鶴の表情は,笑顔だった。
「良かったの?」
カーティスがリリスの所へ近寄ってきた。リリスは処刑役の男に刀を返して,俯いていた。
「……次の国に行こう」
* * *
カーティスにそう言われ,沈黙の後に馬車に乗った。しかし,カーティスが心配したのでリリスも落ち込むのを止めた。窓を開けてジェイクの方を見ていると,暗い顔をしていた。
「どうしたの,ジェイクさん」
「………」
「おーい。ジェイクー!」
ジェイクは馬車を停めて青ざめた顔で二人が乗っていた方のドアを開けた。
「道に迷った……」
リリスが外に出るとそこは森だった。花火大会の前に迷った森とは違い,さらに不気味さがあった。三人がしばらく歩いていると,とあるものがあった。
古びた看板。そこには,『去り人の森』と書かれてあった。
「不気味ってだけで特に何もない………あぁぁぁぁぁっ」
「カーティスどうしたの!?って,そういうことか……」
リリスとジェイクが目の前を見てみると,目の前には女の霊がいた。
どうでしたでしょうか?
エセ関西弁本当にすみません……
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