国外追放で花火を見る
「もう食べてもいいかな」
「いいんじゃない?もうお茶も熱くないだろうし」
リリスがそう言うと,カーティスは目を輝かせながら食べ始めた。
「いただきます」
リリスも手を合わせてから食べた。どら焼きの皮は前世で食べたようなものとは違っていたが,とても美味しかった。
「苦いけど……美味しいね,このお茶」
「でしょ!じゃあ,私は善哉頼もっかな」
そう言って女給を呼んで注文をした。待っている間,二人は次はどこに行くかを話していた。
すると,帯刀した二人組の男が店に入ってきた。リリスは武器を見慣れているため,あまり気にしていなかったが店側はそれを見て青ざめていた。
「早くしろ」
片方の男がそう言うと,女給は泣きそうになりながら厨房へと駆け込んでいった。
『嫌な客だねぇ……あんなに横暴な態度取らなくてもいいのに』
『そうだよね。優しく接客してくれる人に命令口調とか。本当,常識がなってないと思うよ』
リリス達はローゼンタールの言葉で話していたのだが,意味がわかるのか彼らはリリス達のところまで来て刀を抜いた。
「撤回してもらおうか!!」
⦅だるっ……!!⦆
当事者はのんびりとしていたが店の中にいた人たちの中には焦っている人や店から逃げる人もいた。
⦅そういえば,前世の歴史科目では帯刀してたもののあんまり斬りつけてなかったんだっけ……ならいっか!⦆
そう考えてリリスは焦るのをやめた。カーティスもパニックになるほどのことではないと判断したのか,落ち着いて茶を啜っていた。
そんなことをしていると,今まで喋ってこなかった
「お前ら!この人を知っていてそんな態度をとっているのか!!」
「いや誰ですか……?」
リリスの素早いツッコミでついに抜刀した男は顔を真っ赤にするほどに怒ってしまっている。
「儂は……将軍だぞ!!この国の!!」
⦅ふーん将軍……⦆
「えっ,将軍!?」
リリスはまずいと思った。将軍に逆らえる人など,この国のどこを探しても見当たらないだろう。そこで斬りつけられてしまう恐れがある。
「ちょっと待ってください!!」
そう言ってカーティスは将軍の元に近づいて耳打ちをした。それが終わると,少し嬉しそうな声で将軍は店を出て行った。
「あっ,ありがとうございます……!」
店にいた人のその言葉を笑顔で終わらせて再び席に着いた。
「ねえ,カーティス。何を吹き込んだの」
「これが終わったら将軍の所へ行かないといけないけど……事情はそのときに説明すると」
リリスは善哉を食べて店を出た。
「じゃあ説明するね」
「お願いします!」
カーティス曰く,店にいた人たちに危害を加えなかったら海外の情勢を教えると取引をしたらしい。そんなに簡単に世界情勢を教えても良いのかとリリスは思ったが,人の命に比べたら安いものだとカーティスは言った。
「投げかけられた質問に答えるだけで良いんだよね?」
「うん。けど嘘は吐いちゃいけないよ。なんでも,嘘を見抜ける魔術師がいるっぽいから」
そんなことを話していると,城に到着した。案内してもらってたどり着いた場所は,見晴らしの良い天守だった。
「よくぞ来てくれたな。そこに座ってくれ」
そう言われて二人は座った。
「先程はすまなかった。早速だが,質問に答えてくれないか」
「「はい」」
リリスは正面に座っている将軍ではなく,その隣に立っている男を見た。
⦅おそらくあの人が魔術師……けど嘘を完璧に見抜ける術式なんて聞いたことがない⦆
早速,質問が始まった。それと同時にリリスも話しながら魔術師の解析を始めた。
* * *
二時間もしないうちに,質問は終わった。二人はどちらも嘘を吐かなかったため,嘘を見抜ける魔術師の登場する幕は無かった。
「なるほど………その『電脳の国』という国の技術がすごいのか…」
「はい。おそらくその国しか所有していない最先端技術です」
「わかった。もう帰って良い」
二人はお辞儀をしてその場を立ち去った。
「カーティス,花火の時間まであとどれくらいある?」
「えーっと後一時間くらいかな……ってあとすこしじゃん!?」
急いで祭りの会場に向かった。リリスの案内で,だ。
「はぁっ,はぁっ……あれこんな森,道案内にあったっけ?」
「あぁぁぁぁぁっ!?なんで僕はまたリリスに道案内を頼んじゃったの!!」
道に迷ってしまったのだ。持っていた腕時計を見てみると,大会の開催まであと一分もなかった。
「これは……もう間に合わないかな。とりあえず帰ろ」
二人が戻ろうとした時,ヒューーという音がした。リリスが後ろを見てみると花火はもう始まっていたのだ。今まで暗闇だったから分からなかったのだが,とっくに森を抜けていたのだ。崖から見る花火は誰もいなかったということもあってさらに美しく見えた。
「綺麗」
カーティスがボソッとそう言った。リリスは,無自覚に彼の手を握っていた。
「……!?」
「あっ,ごめん!嫌だった?」
リリスは焦って握っていた彼の手を離した。カーティスはすこし残念そうな表情をしてリリスの手を握り返した。
「全然嫌じゃないよ。手を握って,花火をみよう」
そうして二人はそのまま花火を見ていた。時々,感想を語り合いながら静かにじっと見ていた。
その時のリリスとカーティスは笑い合って幸せそうだった。
「綺麗だったね!花火って人生の中でもトップクラスで感動したよ」
「本当綺麗だったでしょ!」
リリスの言葉を聞いたカーティスは,純粋な笑みを彼女に向けた。
「けど,リリスの方が綺麗だよ」
「えっ,急に?」
突然そう言われたリリスの顔が赤くなっていた。
「あれー?リリスさん,顔赤くなってないですかー?」
「そっ,そんなことないわよ!花火が赤かったからそう見えただけじゃないの?」
「じゃあ……もうちょっと近くで顔見せてよ」
カーティスが顔を近づけてきた。リリスは慌ててカーティスから遠ざかる。
「ん?どうして離れるの」
「ちっ,近いから!」
⦅カーティスの顔が美しすぎてそんな近くからじゃ直視できないよーっ!?⦆
「どうしたの?」
「………かっこいいから,そんな人に見つめられると照れるじゃない」
彼女の顔は真っ赤になっていた。その様子を見たカーティスは目を丸くして柔らかな表情で微笑んだ。
「リリスにそう思われてるって考えたら…嬉しいな。大丈夫,そんなにリリスを追い詰めるつもりはないよ」
花火大会も終わったので,カーティスは立ち上がった。
「さて,帰ろっか……ってどうしたの?リリス」
リリスはカーティスに尋ねられて苦笑いをする。
「あははは……さっき,後退りした時に足が枝に刺さっちゃったみたいで……」
カーティスは半眼でリリスの方を見ながら言う。
「つまり……?」
「歩けないんだよね」
カーティスはため息を吐きながら,それでもすこし嬉しそうにリリスを背負った。
* * *
リリスは申し訳なさそうにカーティスの背中に乗せてもらった。
「うぅ……ごめんね。重くない?」
「全然!むしろ,軽すぎないか……」
そして,旅館に着いた二人は,一番最初に部屋へ行って【回復】をしてもらった。
「ありがと。ふぁぁ………眠っ,もう寝てもいいかな?」
「ふふっ,リリスは本当に可愛いね」
カーティスはリリスの頭を撫でた。そしてカーティスは布団に入って彼女の頬にキスをした。
「……カーティス,どうやら君は私を寝させる気はないんだね?」
二人は同じ布団に入り,どちらかが寝るまでずっとハグをしていた。




