国外追放で和を楽しむ
「わぁ!!狂い咲きの桜に,雰囲気のある建物の数々!これ,全部本物だよっ!」
嬉しそうにしているリリスにカーティスは冷静に大和国の第一印象を言った。
「確かに。どこかの舞台とかにありそうだよね」
「二人とも今日疲れとるやろ。私の管理している旅館があるから,そこに泊まっていきな」
千鶴に案内してもらい,旅館に案内してもらった。
「じゃあ,おやすみなー!」
「おやすみなさーい」
リリスは彼女にそう伝えて扉を閉めた。
「さて,ちょっと聞きたいんだけどさ」
「うん何?」
「なんで起こす方法にキスを取ったの?」
「もうその話はいいでしょ!」
その疑問を投げかけられた途端にカーティスの顔が赤くなった。
「何しても起きなかったんだからしょうがないでしょ」
「本当に全ての方法を試したの?」
カーティスは本気だったらしく,頬を叩く,毛布を剥がす,手を氷属性魔術で凍らせるなどといった例を挙げてくれた。
「なんて言うか……ごめんね。二時間もそんなことさせちゃって」
「いいよ。楽しかったし」
楽しかったんかい,とリリスは思ったが,それでもカーティスは真面目に起こしてくれていたので言わないでおいた。
リリス達がそんなことを話していると,部屋の扉が開けられた。扉の方を警戒して見てみると,千鶴だった。
「千鶴?どうしたの」
「忘れとったんや。ちょっとついて来て」
言われるがままに部屋を出て千鶴の歩いていく方について行った。旅館のあった建物を出て数分すると,湯気が立ち昇っている建物に到着した。
「ここは……?」
「じゃじゃーん。これが大和国名物,温泉や」
首を傾げるカーティスと違い,リリスはとても喜んでいた。
「温泉!!千鶴,入ってもいいんだよね?」
リリスは千鶴の許可を待たずに建物の中へ入ってしまった。カーティスは彼女を慌てて追いかけようとするが,千鶴が止めた。
「焦らんでもええよ。先に施設の紹介でもするか」
そう言って色々な場所の紹介してくれた。そして最後に温泉内でのマナーを教えてくれた。
カーティスは千鶴に感謝をして【男湯】と書かれた所に入って行った。
* * *
リリスは髪や体を洗って湯船に浸かった。
「あったかーい」
夜だったということもあってか,露天風呂にはリリスしか入っていなかった。しばらく入っていると,塀の向こう側から声が聞こえてきた。
「リリスーいるー?」
「いるよー!どうかしたの」
「温泉って,温かいね」
そうだね,とリリスが言った。
それから一時間くらい二人で話した。流石に熱くなってきたので,リリスは上がることにした。更衣室へ戻ってみると,通常の衣服の隣にメモと着物が置かれていた。
「『リリスに似合いそうな着物を用意してみました。良ければ着てみて下さい。』……いいね。着物とか,いつぶりだろう」
そんなことを考えながら着替えて外に出ると,既にカーティスは立っていた。
「カーティスも着物なんだ」
「ふふ,どう,似合ってる?」
「とても似合ってるよ。自分で選んだの?」
「千鶴が選んでくれたんだ。センスいいよね」
旅館へ戻ってみると,ジェイクと千鶴と彼女の部下がいた。
「二人は何着ても似合いすぎてるねー」
「うぅ……リリスの隣役は私より似合っとる。なんでやろ……」
「ジェイクさんは着ないんだね,着物」
ジェイクは不貞腐れた様な表情で言う。
「俺も着たかったんだけどねー。二人と違ってあんまり魔術は得意じゃないから,慣れない服装での戦闘は危険かなって思って」
そんな会話をしながら千鶴達の案内してくれた所へ行った。
目的地に近づくほどにとても良い匂いがしてきた。
「この香り……漬物ですか?」
リリスの質問に千鶴は驚く。
「西の生まれでよく漬物とか知ってるなぁー」
「本で読んだことがあって。美味しそう」
リリスの発言は嘘である。前世で彼女の祖母が毎日のように作ってくれていたのだ。
「大根って知っとる?」
「……ってなんですかそれは」
何も知らないカーティスが尋ねる。
「野菜だよ。とても美味しいんだよ」
夕食会場に到着したローゼンタール出身のリリス,カーティス,ジェイクは目を丸くした。
「あれ,椅子はどこですか」
「持ってくるとか…?」
千鶴は何を言っているの,というような目付きで見てきて言った。
「椅子?そんなもんあらへんけど」
⦅畳に座布団,お婆ちゃんの家に帰ってきたみたいになるなぁー⦆
昔を思い出していたリリスは当たり前の様に座布団の上に座った。
「二人とも,なんで突っ立てんの?座りなよ」
リリスにそう言われてカーティスとジェイクが疑問に思いながらも座った。そして小さい声でカーティスが話しかけてきた。
「(なんでこんな状況に対応できてるの。本当に本で見ただけなの?)」
リリスは無邪気な笑みを浮かべてさらに小さな声でカーティスに伝えた。
「(私,こういう国に住んでいたことがあったんだよ)」
「あれ,リリス。前にローゼンタールから出たことないって言ってなかったっけ。じゃあ,なんで……?」
少し自慢をしようと思ったらまさかの墓穴を掘ってしまった。
⦅まずいっ……!転生したってバレるかも⦆
そう考えて必死に話を逸らそうとしたが,無駄だった。
「もしかして,転生前の記憶だったりするの?ほら,リリスって『神の子』疑惑かかってたじゃん。ねえ,どうなの?」
「あー……保留っていう選択肢はないのかな」
ない!とカーティスは断言した。絶対に誰にも話さないことを約束させて,リリスは真実を話した。
「リリスが死んだのは事故だったんだね……けど生まれ変わって僕と一緒に過ごしてくれてありがとう。僕はリリスに何度救われたことか……」
「いやいや,そんな大層なことはしてないって」
正座をしながら食事をしていると,カーティスは少し辛そうな表情していた。リリスはどうしたの,と聞いてみた。
「足が痺れた……」
「正座しているとよくあるよねー。足を温めたり,姿勢を正すといいよ!ほら,背筋をシャキッと」
そう言ってカーティスの背中を触って正した。
出された白米,漬物,味噌汁,魚を食べて部屋に戻った。
* * *
「リリスー,まだ足の痺れ治んないんだけど……」
「大丈夫?部屋まで歩ける?」
部屋まで無事に戻った二人は布団の上で談笑していた。
「あの時すごい酔っ払ってたんだよー。カーティスとは思えないくらいにね」
「うわぁ……そんなんだったの,僕。迷惑かけてたらごめんね」
「全然いいよ。意外な一面が見れたからね」
そして,リリスはあの質問をした。
「掘り返すのもなんだけどさ,なんでキスなんかしたの?」
その質問に,カーティスは開き直ったような口調で言った。
「あー,もうもう。リリスを起こすためでもあったけど,少しくらいそんなことしてもいいじゃん。恋人なんだし」
カーティスはリリスに顔を近づけて彼女の頬に触れた。
「ふふっ,あったかい。もう一回キスしてもいいんだよ?」
そう言ってリリスの頬にキスをした。
「………っ!?」
「どうしたの,そんなんで照れちゃうんだー」
「うっ,うるさいわね」
リリスは顔を赤くしながら布団に入った。
「私はもう寝るから!」
「じゃあ,僕も寝るよ」
カーティスはリリスに抱きつきながら布団に入った。
⦅また眠れなくなりそうだなぁー⦆
そうは考えたものの,十分後には寝ているリリスだった。




