国外追放で告白される
リリスは千鶴に抱きかかえられたまま,どこかにつれていかれた。
カーティスはその二人の様子を見て考え込んでいた。
「リリスは魔力を視れば場所はすぐに割り出せるけど……あの女,厄介だな。本気で一目惚れしてそう」
そう考えてカーティスはリリスの魔力を視てついて行った。
「ねえ,結構遠ざかったはずなんだけど,なんでこの男はついて来てるの?ストーカー?」
「大丈夫です。もし彼がストーカーだったとしても私は許しているので」
ふうん,と千鶴が言ってリリスの手を握って言った。
「あそこは結構おすすめのスイーツ屋なんだけど入ってみるかえ?」
「はい!!」
カーティスは二人に追いついて小さな声で話し始めた。
「(あの女目移りすることはないよね?)」
「(ないない。大丈夫!私にとっては恋愛対象はカーティスしかいないから!)」
リリスがそう言うと,カーティスは安心したのか笑っていた。
「ここよ。わっちの生まれた国の菓子。その名も和菓子よ!」
甘い食べ物の中でも和菓子が一番好きなリリスはとても嬉しそうに店に入っていった。
「みたらし団子美味しー!もっと頼んじゃっていいんですかっ」
「もちろんよ。全部私が払うからなー」
「物でしかリリスを釣れないなんて可哀想」
カーティスがボソッと言った。しかし,千鶴にも聞こえていたらしくこう言い返された。
「あんたやってこの子に好きになってもらう為ならなんでもしてたんと違います?私の場合はそれが和菓子だっただけや」
カーティスは何も言い返せない様だった。リリスはそんな二人の会話にも気づかず,一人で茶を楽しんでいた。
リリス達は和菓子を食べ終わったので店を出た。
目の前には戦車があった。
しかしさっきとまでは違い,リリスにも心の余裕があった。だから普段の実力を思う存分に発揮することが出来
る。
「ふぅーっ.......」
集中して虚空から杖を取り出して戦車の方へ魔術が放たれた。
「わぁ!貴女,可愛いだけじゃなくてかっこいいところもあるんやね!」
戦場の中心で千鶴は顔を赤くしながら言った。
「私,貴女のことが好き。婚約者がいるのは分かっとる。けど,こんなに人を守りたいって思ったんは初めてなんよ。だから……!」
リリスは少し悲しい顔をして千鶴に近寄り,そして短い間ハグをした。
「えっ……?」
そう困惑するのは千鶴だった。
「ごめんなさい。千鶴さんのお気持ちに応えることは出来ませんが……そのっ,友達になって頂けませんか?」
その言葉にはカーティスもポカンとしてしまった。
「リリス,友達って自然になるものだと思うよ。もしかして,今までもそうやってきた?」
リリスは昔を思い出すが,そもそも友達が少なかったからどうやって友達になるのかをあまり知らない。
「言ってたんじゃないかな……うん,言ってた気がする」
カーティスは完全に呆れていて,千鶴も笑いを必死に堪えているのがすぐに分かった。
「ええなぁ。友達,なろか。性格に難しか無いって言われたんやけどよろしく」
ついでにカーティスも友達になった。魔術師ではないから交信術式は使えないとのことだったが,千鶴の住所を教えてくれた。
目の前の敵を捌ききって別れようとすると,千鶴の後ろから音もなく知らない男が現れた。
「ボス,依頼です。標的はこいつらです」
そうして男は千鶴に紙を見せた。すぐに彼女の顔は曇って殺気立った声で命令する。
「これはどこからの依頼か?」
「ローゼンタールの王子からです。それがどうかしましたか?」
『ローゼンタールの王子』と聞いてリリスとカーティスはとても嫌な予感がしていた。
「あのー……依頼と言うのは?」
リリスがそう言うと,男はやっと存在に気がついたかの様に顔を上げた。すると,いきなり拳銃を突きつけてきた。
「楽に殺されたいなら命令に従え」
「えぇ……」
「あと,そこの男。依頼人から伝言を受け取った」
「なんですか?」
カーティスが手を挙げながら言った。男は紙を広げながら淡々と読む。
「えー……『久しぶりですね兄さん。貴方達がマリアの害になると認識したので殺し屋を差し向けました。僕から言いたいことは一つだけです。地獄でも頑張ってくださいね』とのことです。」
それを言われ,カーティスは明らかに怒っていた。しかし,男はさっきと変わらない口調で話す。
「それでは,地獄でも頑張ってください」
彼がカーティスを撃とうとした時だった。威厳のある声が辺りに響き渡った。
「やめよ!!」
そう言ったのはいつの間にか手に拳銃を持った千鶴だった。
男は困惑する。
「ボス自ら殺す必要はありませ……」
「そういう話やない。その依頼は辞退する」
「なんでですか!こいつらを殺せば大金が入るというんですよ。殺さない理由がないじゃないですか!」
「うるさい。逆らったらどうなるか,分かっているんだよな」
今までの千鶴にはなかった,頂点に立つ者の威厳を感じた。
「で,でも……」
「うるさい言っておる。次反抗したら殺すぞ」
その言葉には,色々な修羅場を潜り抜けたリリスも鳥肌がたった。
千鶴の殺気もそれで収まってしまった。
「まあ,ここで他の奴を殺して奪っていくでもええんと違うか?」
「は,はい……」
彼女は思い出したようにリリス達に提案をする。
「思い出したわ。良かったらうちの国,来ぉへん?」
リリスとカーティスも『大和国』について気になっていたので,彼女の提案に乗ることにした。
「あのー。こちらの方とはどのようなご関係で?」
千鶴は普通のように言う。
「部下だよ。此奴はこき使われるのが好きらしいから使ってあげてる」
「ただ人を殺すのが好きなだけです。使われたいわけではありません」
男は即座に訂正を入れた。リリスはとても気になったのでさらに追究することにした。
「あの,人を殺す職業って……」
「ああ,マフィアってやつだよ。で,私がその長や」
ツッコミを入れたのは比較的まともなカーティスだった。
「マフィア!?なんでこんなところにいるんですか!!」
その質問にも千鶴はどこかを見ながら答える。
「うーん……金稼ぎと実力上げが主な目的かなぁ……私の【秘術】もまだまだ未完成やしなぁ…」
「秘術って?」
男は千鶴の言葉で焦っていた。
「ボス!それは幹部たちだけの秘密でしょう!!」
「あー,すまんすまん。けどこの二人は信頼できるから。なんでも喋っていいんだよ」
とても呆れていた。そして千鶴はどこか楽しそうに言った。
「じゃあ,ローゼンタールの王子とやらの依頼は断っておきなさいな。その代わり,三人で他の雑魚片っ端から殺ってくからさ」
「三人って?」
「リリスと,カーティスとそれから私。そうに決まっておるやろ」
「決まってませんって!リリスもそう思うよね」
「まあ,思うんだけど…」
「友達なんやから敬語とか必要あらへんで!」
「じゃあ,次の日から私の国に向かおうか。今日は休んどいてな」
千鶴に協力してもらい,安全にホテルに戻ることができた。
* * *
ホテルに戻り,休憩の間に買っていたもので夕食を済ませた。
「なんか色々なことがありすぎて疲れちゃったよー」
「そうだねー。で,なんでカーティスは抱きついてくるわけ?」
無理矢理にカーティスの手を外すと,彼と目が合った。
⦅今考えてもやっぱりイケメンだよなぁー⦆
「そんなにじっと見つめないでぇ……」
なぜか彼の顔は赤くなっていた。
「なんでそんなに照れているの?」
リリスは事故でカーティスとキスをしたことを知らない。なぜこんなにもカーティスが慌てているのか分からずに,夜遅くまでカーティスに尋ねていた。
「ねえねえ,なんで目を見るだけでそんなに照れてるのっ」
「教えない!絶対に」
結局,この攻防の果てに勝ったのは寝ずに逃げ切ったカーティスだった。




