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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
戦の国編
52/106

国外追放と次の国

「おはよー……ってカーティス!?全然眠ってないんじゃないの?」

「おっ,おはよー…いい天気だね……」

 明らかにカーティスは睡眠不足だったので心配して顔を近づけると,急に彼の顔が赤くなった。

「睡眠不足だったり,急に慌てたり……一体どうしたの?」

「なんでもない。もう朝だって!朝ごはん食べに行こうよ」


 そう言って二人はダイニングへと向かった。二人を目にしたエリザベートはニヤニヤしながら話しかけてきた。

「お二人さーん。昨日は随分と楽しんでいらしたそうでー。ね?カーティスさん」

「?カーティス何かしたの」

「何もしてない。してないからね」


 カーティスのその反応を見て,エリザベートはくすくすと笑っている。


「婆ちゃんおはよー」

「だから婆ちゃんじゃないっつってるでしょ!」


 そしてルーカスもダイニングへ入ってきて料理を並べ始めた。リリスはそれを見てあることに気がついた。

⦅ヘレンさんへの態度が良くなってる…?⦆


 彼女を雑に扱うような態度も取っていない。不思議に思ったが,あまり追及しないでおいた。


 朝食を食べ終えると,二人は街のホテルへ戻って次の国に行く準備を始めた。

「もう行っちゃうんだ」

「はい。次の国にも行ってみたいので」

「いいねー。じゃっ,お二人とも幸せにねー」

「ヘレンさんとルーカスさんも早く付き合った方がいいですよ」


 カーティスがそう言うと,ヘレンは少し複雑な表情でこちらを見つめてきた。それでなんとなく悟って,リリスはカーティスの手を引いてマギーという国を離れた。

「なっ,なんでそんなに強引に国を出て行っちゃったの?」

「あの二人見た?」

「ヘレンさんとルーカスさんがどうしたの」

「あの二人,お揃いの指輪はめていたでしょ。昨日ははめていなかったのに」


 あっ,とカーティス。そしてその指輪はお互いの薬指にはめられていた。その意味に気づいて少し笑っている。

「あの二人,やっぱお似合いだったねー」

「うん,で?カーティスはなんで眠れなかったの」

「カーティス,昨日眠れなかったんだ。何があったー?」


 カーティスはコソコソと馬の世話をしていたジェイクに耳打ちする。そして,それが終わると急にジェイクが笑い出した。

「待って!ちょっとツボに入ったかも……。とりあえず良かったねー,カーティス」

「声が大きいよ!」

 リリスはとても気になったが我慢して次の国へと向かった。



 馬車に乗って数時間しか経っていないのに,次の国の看板が見えてきた。

「あそこが次の国なのかな?」

「そうみたいだね。えーっと……『ここから先は戦の国。覚悟のある者以外入るべからず』…なんだこれ?」

「戦の国ってことは……多分戦ってるんだろうね。どうする?」


 カーティスは即答した。

「この国を通らないと他の国にも行けないだろうから…行くしかないよね」


 諦め顔で『戦の国』へと入国していった。そして入った瞬間,早速命を狙われた。リリスとカーティスには見覚えがあった顔だった。


「わぁ。ドミニクさんじゃないですか」

「なんだ,皆さんはなんでここに?」

 経緯を説明すると安全なホテルまで案内してくれた。


「ここっていつでも戦ってるんですか……」

「はい。色々な国色々な身分の者たちが戦っています。基本戦闘狂しかいませんけど」


 カーティスとジェイクは,ドミニクの発言に軽く眩暈を起こしていたがリリスはそうではなかった。

「一日中戦えるって素敵じゃないですか!見た感じだと魔術師はあんまりいなそうだから純粋な戦闘力だけで勝敗を決めるんだね……」

「そうです。まあ,色々な国とは言いましたが実際は『大和国』の人が半数を占めていますね。実際に剣士としても活躍している人だって多いですし」


 それを聞いてさらにリリスは興奮した。彼女の様子を見て,カーティスは少し困惑している。

「リリスが今までにない程に嬉しがってる……」

「当然じゃない!魔術が通じない世界での戦い。これも良いと思うのよね」


 転生する前は,乙女ゲームのようなものよりも戦略ゲームや戦闘ゲームの方が得意で好きだったリリスにとって天国のような場所だった。唯葉に貸してもらった【乙女ゲーム】が人生で一番最初にプレイした恋愛ゲームだった。


⦅そういえば,唯葉何してんのかなぁー。今までありがとうの一言くらいは言っておきたかったんだけどなー⦆


 前世での唯一の親友,唯葉のことを考えながらホテルに荷物を置いて早速外に出た。

「うわぁ。まさに地獄」

「まさしくこれが戦場という名の天国!」


 カーティスとリリスの言葉が被ったが,言っていることは恐ろしいほどに逆だった。

「何,物騒なこと言ってるの!普通地獄でしょ」

「これが価値観の相違ってやつだね。うん,みんな違ってみんな良い」

「残念ながらこの状況を天国と言っているリリスさんはおかしいと思います」


 ドミニクの発言でジェイクは飲んでいた水を吹き出しそうになっていた。何故かツボにハマってしまったらしい。

「そんなことよりっ!命を第一にするならドミニクさんについて行った方がいいと思うよ。二人とも」

「なんで?」


 疑問に思ったジェイクはリリスに尋ねる。

「ドミニクさん,プロだから」

 カーティスは口を尖らせながら更にリリスの方へと寄って行った。

「知ってるけど僕はリリスと一緒に行くよ。ジェイクはどうする?剣術でいえば心配する必要ないけど」

「じゃあ,俺は一人で行くことにするよ」


 四人は国の中で会っても決闘を挑まないということを誓い,別れた。


 * * * 

「さあてうふふー。どの様に不意打ちをかけようかなー」

「思想が物騒!生き残る方法を考えようよ!」


 カーティスもそう言っているが,ちゃんと襲いかかって来た人を返り討ちにしている。

「神のご加護が在らんことを……」

「一人一人に言っているんだね」

 カーティスはリリスの行動を見て感心している。

「まあね。この人達は沢山人を殺しているだろうから【地獄(ヘル)】行きは確定だろうけど……現世に居るよりはマシだろうからさ」


 そんなことを言って油断しているといつの間にか集団に囲まれていた。

 その中の男に言われた。

「名前は」

「えっと,リリスとカーティスです」

 正直に答えてしまった。その名前を聞いて,集団は物珍しそうにこちらを見てきた。

「その名は…西の国出身か」

「ま,まあそうなりますけど」

 リリスがそう言うと,男は丁寧に自分の名前を名乗った。

「我の名は本宮成一もとみやなりかずだ。覚えておいてもらえると嬉しい」


 はぁ,とカーティス。突然名乗られて不思議に思っていたのだろう。しかし,リリスはそうは考えなかった。武将が名乗る時はどんな時かを知っていたからだ。

「カーティス,戦う準備は出来てるね?」

「え?」


 リリスにそう言われた瞬間,本宮の抜いた剣が二人を捉えた。

「おっと危ない」

「なんで急に抜刀してきたの……」

 リリスは逃げながら説明を始める。


「実は急に襲いかかってきたわけじゃないの」

「というと?」

「『大和国』?の武将なる人たちは名前を名乗ってから戦わないと卑怯者として扱われるんだよ」


 大和国の決闘のルールを聞いて大変そうだなぁと漏らしているカーティスを見て,リリスもそう思っていた。

⦅不意打ちが一番有効だと思うのに……⦆


 かんがえながら本宮の集団から逃げていると,目の前に彼の仲間と思われる人が現れた。そこまでのことを考えていなかったリリスはとても焦っていた。

「ふぁぁぁぁ!?誰!」

「そこのお嬢さん,助太刀するっす!」

「いや,本当に誰?リリス,彼を助けたり助けられたりしたことは?」


 カーティスのその質問には二人の後ろにいた男が答えた。

「貴方たちの目の前にいるその男に因縁があるっすよ!だからこの俺が助けてやる!」

「その顔は……悠凪か」


 本宮は悠凪を軽蔑の目で見た。

「じゃあ名乗るっす。佐々木悠凪!『大和国』の武士っす!」

「我は本宮成一。『大和国』の武士にして最強。さあ,勝負を始めよう」


 そう言って二人は勝負を始めてしまった。

「うあー。始めちゃったねー。さっさと退散しておくか」

 二人は佐々木悠凪に感謝をしてその場から立ち去った。そしてしばらく歩いていると,前世の中の教科書でしか見なかったものが出てきた。


「……は?あれ戦車じゃん。なんであんなのがこの世界に?」

「どうやら『電脳の国』ってところで生産されているらしいね。未知は恐怖だ。とりあえず逃げよう」

 しかし,人の足の速さに戦車が追いつけないはずもなく慌てていたリリスは転んでしまった。


「まずっ…とりあえずカーティスだけでも逃げて!!」

⦅殺されるっ……!!⦆


 そう思ったがリリスが目を開けると前には女が立っていた。


「情けないなぁー。わっちがこの子の婚約者だったら前に出てこの車を斬っておるぞ」

 そう言って目の前に立っていた女は何かを唱えた。


「【秘術・殺戮(さつりく)の太刀】」


 一瞬で目の前の戦車がチーズのように斬れてしまった。

「わーお」

「あんたなんて言うん,名前。あっ,これ聞いたって戦いはしないからね?」

「じゃあ,リリスです……」


 姫神千鶴と名乗った女は,リリスを『お姫様抱っこ』して走った。

「この子,えらい可愛いから貰ってくわ。そんじゃいな,婚約者さん?」

「「え??」」


 リリスとカーティスの頭に疑問が浮かんでいたが,それを考える前に千鶴はリリスを抱き抱えて遠くへ走っていこうとした。

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