国外追放と夜桜
今度こそ,道に迷わないようにリリスはダンテに着いっていった。
「だ…シリル。おすすめの場所とかある?」
「まあ,人に聞いてみようかな。すみませーん」
ダンテが話しかけたのは女性二人組だった。傍目から見ても彼女たちはダンテにメロメロだった。眼鏡を掛けてさらに魅力が上がったといったところか。
そんなことを考えていると,ダンテが戻ってきた。
「あの店がおすすめらしいよ。なんか色々なスイーツを食べられるんだって」
「スイーツ!?行こう!今すぐに!!」
「リリスさんはスイーツが好きなんですか?」
「はい。甘いの,大好きなんですよ」
そう言って店に入った。メニューを見ると,お腹が鳴ってしまった。
「ご注文はいかがしますか?」
「じゃあこのパフェでお願いします」
四人で同じものを頼んだ。少しすると,とても美味しそうな苺パフェがテーブルに置かれた。
食べ終わったあとは,植物園や図書館を回り,気づけば夜になっていた。
「僕のわがままに付き合っていただきありがとうございました。じゃあ解散で!」
ダンテの合図で解散したリリスは,目的の場所へと向かった。そこに行ってみるとリリスしかいなかった。夜桜がとても綺麗に見える公園だ。
一人で公園の桜を見ていると,隣から声が聞こえてきた。
「こんなところにいたんだ。穴場なんだね,ここ」
「カーティス?よくここが分かったね」
「ホテルの窓を見ていたらリリスが見えたから,ついてきちゃった」
少しの沈黙の後,話し始めたのはリリスだった。
「あのさ,助けてくれてありがと。ダサいとか言っちゃったけど後がダサかっただけで,かっこよかったから」
「全然フォローになってない……」
「ごっ,ごめんって!けどかっこよかったから」
少しいじけたような表情でカーティスは言う。
「じゃあホテル出る時になんで強引に行っちゃったの」
「記憶あるの……」
「あるに決まってるでしょ。酔っていても記憶くらいは残るよ。で,なんで強引に行っちゃったの?」
「……私だって街を回りたかったんだもん」
リリスがカーティスを見ると,少し笑っていた。それに釣られて笑ってしまった。
「ふふっ,やっぱりカーティスは笑っているのが一番だよ」
「じゃあリリスも笑っている顔が一番可愛い」
二人が楽しそうに話している時,強い風が吹いてきた。そして,強風で舞い散った桜の花びらの一枚がリリスの鼻に付く。
それをカーティスが取ろうとすると,リリスは少しあたふたとしていた。
「じ,自分でとれるよっ」
「僕がとる」
そう言って,カーティスは桜の花びらを取った。
「ごめん,強引に取っちゃって。嫌だった?」
リリスは全力で首を横に振った。
「全然嫌じゃないよ!逆にかっこよかった」
それを聞くと,カーティスの顔はみるみるうちに赤くなっていった。
「リ,リリスは人たらしだね…!?僕は付き合っているからいいけど他の人にはそんなこと言わないでね!」
その言葉を疑問に思い,首を傾げながら言う。
「?私はカーティスにしかかっこいいとか言ったことないよ。あっ,アリサには言ってたと思うけど」
「本当?」
とカーティスは再度確認する。
「うん。本当だよ」
すると,赤面していたカーティスに抱き寄せられた。突然の出来事にリリスは再び焦る。
「かっ,カーティス……?」
「じっとしてて」
言われた通りにじっとしていた。それから五分くらい経ってカーティスは話し始めた。
「こうしたらリリスがもっと僕のことを好きになってくれるかなぁーって。どう?僕のこともっと好きになってくれた?」
⦅カーティスがっ,可愛すぎて眩しい!尊い!⦆
カーティスの作戦通り,リリスは彼のことをもっと好きになっていた。
「ずるいよ。そんな笑顔されたら好きになるに決まってるじゃん」
「ふふっ,そういえば人が誰もいないけど…この公園,どうやって見つけたの?」
「うーんっと,確か古本屋の隅の方にここの特集があったんだよねー。多分だけど,他の公園はライトアップされているじゃない?けどここはされていない。だから目立たなかったんじゃないかな」
「確かに,月の光しか光源がない。僕はこっちの方が好きだな」
「私も」
リリスは眩しいのが苦手なため,月明かりしか光源がないくらいがちょうどよかった。
「眩しすぎないでいいよね。ねえ,昼に一緒にいた男,誰?」
「えっ?春雷さんなら昨日も説明したと思うけど」
「違う。黒髪の眼鏡掛けてた人」
ダンテの変装姿だ。リリスはそれを思い出して伝えようとカーティスの方を見るとハイライトが失われていた。
「カーティス…さん??」
「また知らない人を連れてきて……」
「違う,違うって。ダンテさんの変装姿!」
「嘘だー。だって,あんな雰囲気のイケメンじゃないでしょ。優しい感じのイケメンっていうか……あの人全然雰囲気違ったよ」
「私もちょっと思ったけど…けど本当だからね?怪しいって思ってたら本人に聞いてみてよ」
その後は二人以外,誰もいない公園を歩いた。
「それじゃあ…帰ろっか」
二人は手を繋いで帰った。
その時,強風で公園の桜の花びらは美しく舞っていた。
* * *
朝になり,荷物をまとめ終わった二人は部屋を出た。そして,ジェイクのいる左隣の部屋の扉を叩いた。
「ジェイクさーん」
「おはようございます…リリスさんですか。何かありましたか?」
そう言って出てきたのは寝起きと思われるダンテだ。
「ジェイクさんっていますか?できれば起こして欲しいんですけど…」
「分かりました。少し待っててください」
ダンテが部屋に戻って一秒も経たずにジェイクは出てきた。
「リリスさーーん!次の国に行くんだね?早く行こう,そうしよう!」
そう言ってカーティスを部屋から出し,足早にその場を立ち去った。
「ジェイク,急にどうしたのさ?」
「あれは悪夢…あれは悪夢…」
「ジェイクさーん!」
「はっ!二人ともどうしたの」
「いやなんか顔色悪いから。何かあった?」
ジェイクは機嫌が悪そうに即答する。
「国王二人に抱き枕にされてた」
「「は?」」
意味不明な状況すぎて話を聞いていた二人はついそんなことを漏らしてしまった。
「本当なんだって」
「父上ならやりそうなんだよなぁ……」
「父上ならやりそうなんだよなぁ……」
「ダンテさんも何やってるんだろ…」
⦅ジェイクさんも大変だなぁ⦆
他人事として考えていたリリスとカーティスはジェイクの馬車に乗って春の国・フリューリンクを出た。
「なんか全然人がいないところに来たねー」
「うん。魔力は感じられるんだけど…」
「二人ともどうする?元に戻る?」
馬車に乗っていた二人はジェイクに頼み,馬車から降ろしてもらった。
「元には戻りたくないんだけど…遠くまで見れる人,いる?」
「俺が見るよ。うーんっと,結構遠くだけど都市が見えるね。そこに行ってみる」
「そうしよう。次はどんな国か楽しみだなぁ」
外の風に当たって休憩してから,再び馬車に乗った二人は話しながら遠くにある都市を目指した。
「ねえカーティス,暇だから何かしない?」
「いいけど何する?」
「うーん…」
カーティスは閃いて,そのアイディアをリリスに伝える。
「伝言ゲームなんてどう?」
「いいね。じゃあ私が背中に字を書くから,当ててね」
そう言ってリリスはカーティスに窓に方向を向かわせた。
⦅なんて書こう…?こういうのって加減が難しいんだよなぁ⦆
「書き終わったよー」
「難しいね,これ。えーっと…イテロ…合ってる?」
「正解はねー…イチゴでした!惜しいねー。じゃあ,カーティスの番」
⦅ふふっ,くすぐったいなぁー。なんて書いてあるんだろう⦆
少し考えて仮説を出した。
「どっ,ドラゴン…とか?」
リリスがそう言うと,カーティスは驚いた顔をし,喜んでいた。
「すごい!よくわかったねー」
「カーティスがちゃんと伝言してくれたからだよ……!?」
そう言っていた間,カーティスがくすぐってきた。
「へぇ…リリスってくすぐりが効くんだ」
「ひひっ,カーティス,くすぐったいっ…!」
そんな会話をしながら馬車の中で一日を過ごした。ジェイクは寝なくてもいいらしいので,夜の間も馬車を走らせてくれた。
ジェイクの見た『大きな都市』までの道のりは,まだ長い。
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