国外追放と四人行動
酒で酔っていない四人はとても困っていた。酔ってしまった三人のせいというのもあるが,後片付けをどうするか迷っていたのだ。
「よっこらせっ!」
「っリリスさん!?何してるんですか!!」
「この三人が全然退けてくれないので」
そう言って,リリスは三人が寝ていたビニールシートを引き剥がした。その光景に春雷とダンテは唖然とする。
「リリスさんどうする?僕はカーティス持っておくよ」
「じゃあ翠蘭さん背負うか…ダンテさんと春雷さんのどちらか,陛下を背負って下さい」
アシュリーは話し合いの結果,春雷に背負われることに決まった。酔っ払った三人を地面に寝かせて四人は片付けを始めた。
「こんなところですかね」
「おぉー。めっちゃ忘れてたけど桜,綺麗だね」
元はといえば,花見をするために公園にやってきたのだ。まあ,酔っ払わない程度に酒を飲んでもいいとは思うが。
「そういえばなんでカーティスはお酒なんか飲んじゃったの?未成年じゃなかったけ」
ダンテが苦笑しながら説明する。
「アシュリーさんに勧められて飲んでいたんですよ。父親に逆らえなかったのでしょう」
⦅なんかカーティスって大変だなぁ⦆
「リリス…なんで男に触ってるの?」
「触ってないからね!?女性だからね!?」
翠蘭を持ちながらリリスはつい呆れた顔をしてしまった。そんな会話を続けていると,泊まる予定のホテルが見えてきた。ジェイクによると,最初に泊まっていたホテルはカーティスがチェックアウトをしてくれていたらしい。
⦅そういえば花見が盛り上がって一日終わったから……今昼?⦆
さっさとカーティスを寝かせて首都を探索しようとしたが,邪魔する人がいた。
「リリスー。行ぁないでー」
⦅本当に酔いまくってるじゃん!!⦆
「だーめ。カーティスは部屋で寝てて」
「えぇー。僕も行く…」
「だめだって。こんな姿,カーティスの父親に見せてもいいの?」
実際,親子揃って酒に負けている訳だが,それを言うほどリリスは馬鹿ではない。
「別にいいよー僕も回りたいー!」
流石にしつこいと感じたのか,リリスはカーティスを気絶させて強引に寝かせた。
「やっと部屋から出れたーって皆さん何してるんですか?」
目の前には翠蘭と春雷,右を見るとダンテがいた。
「うち達は今から探索をするところ!リリスとダンテさんもそんな感じ?」
「ええ。アシュリーさんを寝かせるのは大変でしたよ。翠蘭は酔いが覚めたんですか?」
「僕の妹はアルコール分解が早いんです。ジェイクさん?という方は起きていたと思うんですけど」
「ジェイクさんならアシュリーさんの抱き枕になっていると思いますよ」
そこでリリスは一つ,提案した。
「皆さん街を回る目的なら一緒に回りませんかっ」
ダンテも,翠蘭も,春雷も全員一致で賛成になった。
「じゃあ,僕は変装してしますね。これからは敬語とかなしで『シリル』とでも呼んでください」
「?シリルって知り合いがいるんですか」
「僕の友人ですよ」
そう言いながらダンテは変装用の眼鏡とかつらを被った。
「どう?別人に見えるでしょ」
「うわっ!まじで別人じゃん!兄様も変装したらどーお?」
「僕はいいでしょ。誰も知らないんだし」
こうして一級魔術師四人組が結成された。
* * *
「カーティス曰く,こっちに美味しいレストランがあるらしいですよ。あははは……」
「へー。こんな裏路地にあるんだ」
⦅完全に道に迷ってしまったー!!とりあえず明るいところに出ないと⦆
リリスは慌てて明るいとこに出た。すると,大きなショッピングセンターのような建物が見えてきた。
「ねえリリス。めちゃくちゃ大きくない!これは強盗が来やすそうだね!」
「翠蘭さん,そんな物騒なことは言わないでくださいね?お願いですから」
一級魔術師のほとんどは戦闘狂である。
そして,強盗が来やすいなどを建物の中で大声で言ったら追い出される可能性もあるだろう。
「リリス,入ってみる?とても面白そうだ」
ダンテが興味を持っていた。反対する理由もないので三人は彼に着いていった。
「「「「おぉぉぉー!!」」」」
四人はとても驚いていた。そして興奮もしていた。その建物はとても広かったのだ。
「うーんっと…地図?」
ダンテは入口の近くに置かれていたものを手に取った。
〈施設案内〉
一階 食品コーナー
二階 衣服コーナー
三階 魔道具コーナー
四階 芸術コーナー
五階 本屋コーナー
他にももっと階があったが,とりあえず五階まで行ってみることにした。
「えー。階段で登るのーってあれ?何これ!?」
翠蘭の声が聞こえて,来たのでパンフレットから目を離すとリリスも驚くものがあった。
「エレベーター……?」
「リリス知っているのかい?」
「えっ,あぁうん。前にこれに似たものを見たことがあって」
⦅乙女ゲームの時代区分からすると今は『近代』だったと思うんだけど⦆
もちろん他の人には前世のことは言ってはいけない。しかし,友達の唯葉とその兄と一緒に遊びに行ったことを思い出してしまった。
「メイドイン……『電脳の国』?」
どうやらこの施設にある機械は『電脳の国』という所で造られているらしい。春雷は少し惜しそうな顔をしながら先を急ごうとした,そのときだった。
四人の背後で女性の叫び声と共に発砲音が聞こえた。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
「うるせえ!!静かにしねえと撃つぞ」
どうやらこのショッピングセンターは強盗に囲まれてしまったらしい。リリス達はこれくらいの認識だった。これくらいで焦る一級魔術師なんていないし,決闘を行いすぎて感覚が狂っているのだ。
「まあ,こんなに最先端技術詰め込みなところに強盗が来ない訳ないよねー。そういえばここ,今日オープンしたらしいよ」
翠蘭は強盗の話を聞かずに喋ってしまった。
「オイ,話聞いてんのか!?黙れっつてんだよ!」
四人は殴られてしまった。
⦅あー…あの人ダンテさんに殴っちゃったよー。死刑になるかも。可哀想ー⦆
あくまで他人事である。もう殴られたくなかったので,交信術式で大丈夫かを聞いた。すると,こんなものが返ってきた。
『殴られるって新鮮ですね。ちょっと楽しいかも』
リリスは無視した。そして,翠蘭と春雷に交信術式を送った。
『どうしますか?さっさと強盗を処分しましょうか』
すると翠蘭から返答が来た。
『まあ,早くここを回りたいからうちがやるよー』
リリスがそれを確認していた時,強盗たちの足元から荊が出現した。
「痛ってぇ!?おい誰だ!」
その様子を翠蘭は楽しそうに眺めていた。
土のないところから植物を生えさせるには一日かけて詠唱をし,魔法陣を組み立てないといけない。しかし,翠蘭にはその必要がないのだ。一級魔術師には天才しかいない。地形を利用する一級魔術師の中でも,詠唱や魔法陣を使わずに魔術を使える人は半分もいないだろう。その中の一人なのだ。
そうして棘のある植物に捕まえられた強盗共は警察に引き渡された。
ショッピングセンターは封鎖され,別のところに行こうとしていると,周りの声が聞こえてきた。
「(ねえ見た?さっきの薔薇の棘)」
「(見たよ。僕も魔術は使えるけどあんなに強力なものは見たことないよー)」
「(本当?じゃあ知ってるー?一級魔術師には魔法陣なしにあんなことができる人がいるんだってー)」
本人がいることにはもちろん気づいていない。兄弟はくすくすと笑いながら人混みの中を潜り抜けていた。




