国外追放で冤罪を晴らす
カーティスは一回ホテルへ戻り,荷物をまとめてジェイクの馬車で首都へと向かった。
「犯人は分かったんだけど,どうやって証明すればいいんだろうね」
「……本当にどうすればいいんだろうね。警察内部に関係があったら捜査しやすいんだけど」
そう言うと,ジェイクは思い出したように話した。
「あっ!そういえばアルティスタの国王様が来てるんだよね。なんとかしてくれないかなぁ」
二人はわずかな希望をもってダンテを探した。
* * *
「カーティス,頑張ってくれてるかなぁ……」
「ねえねえ,さっきから気になってたんだけどさー。二人の出会いってどんな感じだったの!?」
「翠蘭,ずけずけと聞かないの」
「えー。リリスさん教えてよー」
リリスは暇だったので二人に話すことにした。
「うーんと……何から話せばいいのかなぁ」
「馴れ初め,気になる!」
「僕も気になりますね……どんな人がリリスさんの心を打ち抜いたのかが知りたいです」
そう言って,春雷はリリスに顔を近づけた。
「おぉっ!?常に女嫌いで有名な兄様が興味を向けているだとーっ!」
「そんなことないよ。早く聞かせて?」
「あっ,はい。私,元々国外追放されていて。そこから旅が始まったんですけど……」
「待って待って。なんで国外追放されてんの!?一級魔術師なんだよね!?」
二人はその時,ローゼンタールの間反対にある祖国にいたらしい。一級魔術師が国外追放というのは例外がないのだろう。
「なんか聖女マリアが国全体に洗脳術式が掛けられてしまって……国王陛下に頼んで国外追放にしてもらったんです」
翠蘭は納得したように頷き,愚痴を言い始めた。
「あぁー。あの女ならしそうだわー」
「あの人のこと知ってるんですか?」
「知ってるも何も兄様が口説かれそうになってたからー。あんな天然ぶった腹黒女に兄様を渡すことなんて,できないよ」
牢屋の壁に向かって歩き出した翠蘭は振り返って再び言う。
「けど,リリスにだったら兄様を任せられるかも!」
「「えっ!?」」
「いやいやいや,翠蘭。そうはならないよね」
「そうですよ,翠蘭さん。私,カーティスと付き合ってるんですよ!?」
「そうだよね……うん,なんでもない。話続けて?」
翠蘭に悲しそうな顔でそう言われ,リリスは再び話し出す。そして話し終えると二人は疑問があるような顔でこちらを見て来た。
「なんか変な所でもありましたか?」
「大ありだよっ。なんで生きてる人間が死者の国に行けるのさ」
「未だに分かりません」
二人は何故か頷き,翠蘭はリリスに抱きついて来た。
「リリスは逆境にもめげずに頑張ったんだね……!!そしてカーティスさんも優しいんだね!本当,幸せになってね!!」
「なんか話飛んでません?」
⦅カーティスは大丈夫なのかな…何かトラブルに巻き込まれていないといいけど⦆
そう心配しながら,リリスは天井を見てため息を吐いた。
* * *
「お願いします!!リリスの冤罪を晴らすのに協力してくれませんか?」
カーティスとジェイクはダンテのいる場所を特定して必死に頼んでいた。
「いいよ,いいからそんな頭下げないでー…」
ダンテは頭を上げた二人の席を用意し,そこに座ることを促した。
「で,なんでリリスさんは捕まっているんですか」
カーティスは事の経緯を話した。すると,ダンテは難しい顔をして言った。
「うーん…国王暗殺か」
「何か知っているんですか?」
「知ってるも何も,僕も戴冠式には参列していましたから」
⦅そうだった。ダンテさんは国王だ⦆
そんなことを考えながらカーティスは別のことを聞いた。
「だったら尚更リリスが無罪っていうのは証明できるんじゃないですか?」
「いえ。僕が無罪を証明できるのはリリスさんと一緒に捕まった二人だけです」
「どうして」
「あの二人は僕が雇った護衛のようなものですから」
「そうなんですか?ダンテさん,前に一級魔術師って言ってたと思うんですが」
「そうですね。けど,僕が一級魔術師だってことは秘密なんです」
あっ,とカーティスが思い出してつい言ってしまった。一級魔術師はの人間が自分が一級魔術師だということをむやみやたらに広めてはいけないのだ。だから彼らの存在は都市伝説の類になっている。
「すみません……」
「全然いいんですよ。で,その二人はなんとかできると思うんですけど,リリスさんは難しいと思います。犯人を特定しないと」
三人が悩んでいるところに,リリスからの暗号が届いた。
「ドン,ナ,カンジ……?はあ,早く会いたいな」
「魔力の暗号…ですか」
「はい。これなら術式無効でも潜り抜けられると思ったんでしょう」
そしてカーティスが状況報告をすると,再び話し始める。
「犯人をもっと理論的に捕まえる方法……」
ジェイクが案を出した。
「無難な考え方は魔術が放たれた場所とリリスさんがいた場所は違うとか,リリスさんがいた場所からは魔術が撃てないことを証明することなんじゃないですか?」
「けどリリスだったら不可能な位置でも攻撃できそうじゃない?」
「「「うーん……」」」
三人が本気で迷っていたその時だった。
「やあ,カーティス!久しぶりー。リリス君は?」
「父上!?」
いつの間にかカーティスの父親にしてローゼンタール国王であるアシュリー・ローゼンタールがいた。
「ここの王族密度高っ……」
王族ではないジェイクがそうツッコんでしまった。
「ねえリリス君はどこ行ったの?喧嘩?」
「リリスさんなら牢獄にいますよ」
ダンテが説明をすると,アシュリーは目を細めて窓の方を見た。
「あの子の冤罪率高くない…?」
「そういう星の下に生まれてきたのかもしれませんね」
「父上もダンテさんもとりあえず考えましょうよー」
カーティスがそう言うと,アシュリーは目を丸くさせてとんでもないですことを言った。
「僕の代理人で来たって言えば?まあ疑われるだろうけど…僕がそう証言すればいいだけだしね」
「いいんですかっ!」
「もちろんだよー。子供のピンチを救うのだって親の仕事だし」
そうして四人は警察本部へと足を運んだ。ジェイクだけは疲労困憊の様子だったが,他の三人が気づくことはなかった。
「ぐっど,もーにーんぐ!ってもう昼?」
アシュリーが暢気そうに言うと,周りにいた警官がざわついていた。
「(見ろよ。あの人,ローゼンタールの国王だぜ?)」
「(しかも隣はアルティスタの国王じゃないか……?)」
「(全員イケメンじゃない!?ああいう人が旦那だったら良かったんだけどなぁ……)」
ダンテが女性に手を振ると,とてつもない騒ぎになっていた。気づけば警察で一番偉い人が出てきていた。
「あーっと,そのーなにか用がありますか?」
「今,国王暗殺未遂で捕まっている三人が冤罪の可能性が高いと思っているんです」
「はいっ!?そ,そうですか……話を聞かせてください」
ジャックはその様子を遠くから見ていた。
「あれは俺,必要なさそうだよなぁ……」
そう独り言を呟いてリリス達三人のいる地下牢へ向かった。
* * *
「んー。暇すぎる!なんかないー?リリス」
「私は二人の話が聞きたいです。昔の話とか」
翠蘭は苦笑いをしながら話し始めた。
「じゃあ兄様の女絡みの話でもする?」
「うっ…トラウマが……」
春雷が頭を抱えながら言ったが,女子二人は気づいていなかった。
「まずー。一人目の女はね。孤児だった私達に付け込んで兄様を誑かそうとしたんだよね」
「はぁっ,はぁっ……」
「あの,春雷さん。大丈夫ですか?わっ」
春雷は疲れたのか,リリスのもとに倒れ込んだ。
「兄様。やっぱり女性には『トラウマ』があるんだね……」
翠蘭が悲しげな表情でそう言った時だった。
「おい!お前らの連れが無罪を証明してくれるらしいぞ!」
「…………!?カーティス,やっぱり無罪を証明してくれるんだねっ!」
「よかったな。お前らを連れてくるように言われているから早く」
そう言われ,気絶した春雷の肩を持って地上に上がった。
* * *
「リリスっ!」
「まだ触れ合いは禁止です。即刻,彼から離れなさい」
そう警告され,しょうがなくカーティスから離れた。
「なぜこの三人が無罪だと証明できるのですか?」
カーティスは淡々と話す。
「それは簡単なことです。ここにいる二人は護衛として,そしてそこにいる女性はローゼンタール国王の代理できたんです」
⦅はっ!?⦆
「まあ,国王陛下であるお二人がそう言うなら…そういうことなんでしょう」
そして別の警官が話し始めた。
「じゃあ,真犯人は誰ってことになるんですか?」
リリスはカーティスの方を見ると,完全に焦っていた。
⦅あれは,『まずいっ!真犯人のことまで考えていなかったっ』って顔してるな……⦆
呆れながら見ていると,ローブを被った男が現われた。
『私は一級魔術師也』
その男が言うと,周りはざわついた。
「それは本当かね?」
『ああ。間違いない』
そう言うと,男は巨大な水球を作り,それを放った。
『魔力の流れを見たところ,そいつが犯人だ。捕まえろ』
一級魔術師を名乗った男によって,真犯人はあっさりと当てられてしまった。




