国外追放で伝える
「どうしよう!?カーティスとジェイクに状況を伝える方法がない!」
「うーん…術式使えないから魔術で信号を送るみたいなこともできないしなぁー」
春雷の言葉で閃き,リリスはさっそく二人に話した。
「カーティスにそのまま魔力を送ったらどうですか?これだったら術式ということにはならないですし」
「送れはすると思うけど,それで状況を伝えれるっていう訳じゃないよねー」
「だったら暗号として送るのはどうでしょうか。それだったら伝えられると思います」
「じゃあ,『薔薇式暗号』で伝えます。多分カーティス,分かるので」
リリスがそう言うと,翠蘭が驚いたように言った。
「えっ!?あれって一級魔術師以外で解読できる人とか,いたんだ!?」
「ローゼンタールの国立図書館には薔薇式暗号の解読方法がありましたから……禁書指定されていたんですけどね」
カーティスは読めない魔術書,ホラー小説以外は国立図書館の本を読破したと言っていた。そして,王族なら禁書指定されている本でも読めるのだろう。その可能性に賭けて,リリスはカーティスのいる方向へと魔力を放つ。
「翠蘭さん,なんで『薔薇式暗号の書』は禁書指定されているんでしょうか……?」
「うーん……あれは魔術書だから,魔力不足で事故る人も多かったんじゃないかなぁ。そのカーティスって人は結構魔力量あるんだね」
翠蘭がそう言い終わった頃には,リリスの魔力がカーティスへ送られていた。
* * *
「…………」
「どうしたの,カーティス」
「いや,なんかリリスの魔力が送られてきたんだよね。あと『薔薇式暗号』みたいな感じで送られてくるんだよね」
「何?その『薔薇式暗号』?って」
⦅そういえばあれの解読方法が書かれていた本は禁書指定されていたんだっけ。とにかく送られてきた魔力からできることをしてみよう⦆
カーティスはリリスから送られている魔力量を紙に書き出した。そして暗号を解いていく。
「うーん……イ,マ,ロウ,ゴクニ,イ,ル?リリスは何をやってるの……」
⦅リリスは冤罪をかけられやすいんだから⦆
カーティスは呆れながらさらに送られて来た魔力を読み取る。
「えーっと……クロマク,ベツ,ニ,イル……黒幕ってなんの黒幕?ジェイク,なんか知ってる?」
隣を歩くジェイクに聞いてみた。
「なんだろう……?あっ,確か戴冠式の前に国王を暗殺しようとしたとかで三人捕まっていくのは見たよ。リリスさんに似ている人も捕まってた気が……」
「多分それだ。暗殺の冤罪で捕まっているらしいから無罪を証明してほしいってことかな……?」
そう考えていたカーティスの元に再び魔力が送られて来た。それをメモに書き,暗号を解いていった。
「ハンニン,ナイブ,ニ,イル,コレガ,トドイタラ,マリョク,オクッテ」
そう解読したので,リリスへ魔力を送り,犯人探しを始めた。
「うーん……まずはリリスの無罪を証明することだけど,捕まった他の二人も冤罪だとしたらその人達の無罪も証明したいよね」
そう言いながら,戴冠式が行われるはずだった場所に行き,魔力の残像が残っている所を見つけたので,調べた。
「魔力が微かに残ってる……けどこんな雑に魔力を扱うなんてリリスならありえない」
「確かに。リリスさんの魔術愛はすごいもんねー」
二人はリリスが馬車の中で魔術について永遠と語っていた頃を思い出した。
「けど,こんなの証拠にならないよね……けどこの魔力の流れとリリスさんの魔力の流れが一致しないことを言えばいいんじゃない?」
ジェイクの案をカーティスは即座に否定する。
「それは駄目だ。最終手段で使うかもしれない」
「なんでー」
「リリスの魔力の流れは異常だからね。すぐに一級魔術師ってばれちゃう。あまり他の人に正体を伝えない方がいいらしいから」
そう言うと,ジェイクは目を大きく開けた。
「リリスさんって一級魔術師だったんだ……」
そんなことを話していると,警官がやって来た。
「お前ら,何やってる!!」
「すみません!」
カーティスがそう言い,現場を離れようとした。そしてなんとなく目の前に現れた警官の魔力の流れを見てみた。
「!?」
「どうした。何かあったのか」
カーティスが警官の魔力の流れを見ると,黒幕の魔力の流れとほぼ一致していた。
「カーティスー。早く退散しよー」
ジェイクの手を握りすぐに広場から離れた。
「なんのつもりー?」
「ジェイク,多分あの人犯人だよ」
カーティスは目を細めてそう言った。
* * *
カーティス達が犯人探しに奮発している頃,一級魔術師三人組は現実逃避のようなことをしていた。
「ねえ兄様ー。うち達の処刑日いつになると思う?」
「まだ処刑って決まったわけじゃないから希望を持っていた方がいいと思うよ」
リリスは春雷の言葉を否定する。
「国王の暗殺未遂ですよ?不敬罪とかで処刑確定ですよ。それにしても一人で牢獄に入っていた時と比べて結構楽しいですね」
ローゼンタールの時と心持ちが違うというのもあるが,一人の時は話し相手がいなく,退屈だったし辛いことを共有できる人がいなかった。しかし三人でいるので,退屈なことは何もなかった。
「じゃあリリスは処刑日がいつになると思うー?」
「そうですね……早めに行わないと王家や政府の面目が立たない気がするので……遅くて一週間後だと」
リリスがそう言った時,警備の人が入って来た。
「お前らの処刑日が一週間後に決まった」
その言葉を聞き,翠蘭は目を輝かせて質問をした。
「国王は来るんですかっ」
警備の人は困惑しながら答える。
「来るぞ。国王が直々に死刑宣告するらしいからな」
「そんなこと言って良かったんですか?自分達で言うのもなんですけど凶悪犯ですよ」
リリスが尋ねると,彼は笑いながら答えてくれた。
「実はさ。俺,お前達のことそんな疑ってないんだよ」
「「「?」」」
「つまりさ,他に犯人がいるんじゃないかって思ってるの」
「なんでそう思ったんですか」
「いや……俺の師匠は一級魔術師でな。けど魔道具とか魔術を使わないにも長けていたから教えてもらっていたんだ。その師匠と雰囲気とか魔力が似ているんだよ。あ,そこの女は除いてな」
リリスは警備にそう言われ,少しむっとする。しかし,警備はそんなことも知らず,再び話し始める。
「なんか困ったことあるか?脱獄以外なら手伝うぞ」
「貴方の師匠について教えてください」
「困ったことじゃないじゃんかよ…まあ暇つぶしに話すか」
警備の人・ジャックは一級魔術師の師匠について話し始めた。
「俺は親がいなくてさ,孤児ってやつだよ。で,師匠に拾ってもらった。けどおかしいんだ」
「おかしいというと?」
ジャックは真面目な顔で言った。
「俺が子供の時から歳を取ってねぇんだよ」
それを聞いた翠蘭と春雷は顔を見合わせて言った。
「ドミニクさんだね」
「僕もそう思う」
ジャックは驚いた表情で言う。
「なんで師匠の名前知ってんだよ」
「えっ,ドミニクさんって誰ですか」
翠蘭と春嵐はリリスに説明をする。
「ドミニクさんはね。不老不死なんだよねー。実験で不老不死の術式を打ち込まれたんだ。けどそれって魔力量が高くないと即死なの」
「けどドミニクさんは魔力量が高かったから成功したんです」
「けど最近,初めて決闘に負けたらしくてさぁー。気づいた時にはロイ共和国からいなくなってたんだよね」
「待ってください。ロイ共和国のドミニクですか?」
リリスにはその名前に覚えがあった。王城で戦ったあの人だ。
「そうだけど…知ってる?」
「多分ですけど倒したの,私です」
その言葉にリリス以外の三人は目を丸くした。
「師匠倒すとかバケモンだろ…他に困ってることとかは?」
そして一つだけ,ジャックに頼み事をした。
「それじゃあ……もし警察本部に白髪の男性が来たら話を聞いてあげて下さい」
「連れかなんかか?」
「はい。彼だったら私達の無罪を証明してくれると思うので」
「この状況で笑ってる……余程その人を信頼してるんだな」
リリスは笑いながら,
「私の愛する恋人なので」
とそれだけ言った。




