国外追放で捕まる
「……ふふっ,可愛いー」
そんな声が聞こえてきたので,つい起きてしまった。
「カーティスって顔近っ……」
やはりイケメンは近くから見ても遠くから見てもイケメンらしい。
「リリス覚えてるー?寒いって言いながら僕の方に寄ってきてさー。すごい可愛かったんだよね」
照れながらも,リリスは着替えをした。そしてトイレに行くために階段を降りてミハイルとエレーナの部屋を通り過ぎようとしたところだった。とてつもない程の甘い声が聞こえてきた。気になってしまったので,二人の部屋を覗いてみることにした。
「ねえ,エレーナ。君が可愛くてしょうがないんだけど」
「私も同じよ。貴方が好きでしょうがない。あの三人の前でもっと仲良いってところ見せつけたかったのに」
⦅そういえばここって愛の世界だったな⦆
さらにじっくりと覗いてみる。
「えへへー。あったかーい」
⦅エレーナさんキャラ崩壊してない!?めちゃくちゃ悪役令嬢キャラだったのに!?⦆
なんか触れてはいけない感じがしたので,見なかったことにして早くトイレへ向かった。
戻ってきて来て数十分が経った頃,エレーナの声が聞こえて来た。
「朝食が出来ましたよー!!」
エレーナの作った料理を食べた。前世の中華料理のような雰囲気があって懐かしさを覚えた。
「エレーナさん,この料理ってここの郷土料理だったりするんですか?」
「違いますわ。翠蘭からレシピが送られて来たんですの。全く……」
⦅確かに。翠蘭さんの名前は中華っぽいもんな⦆
何事もなく食べ終えたリリスは,この国を出るために,荷物をまとめ始めた。
「いい国だったねー。すごい古そうな魔道具屋もあったし」
「そんな魔道具屋あった?リリスの手袋は有名な魔道具屋で買ったんだけど」
⦅そこのエリアに行ってないのかな?穴場みたいな雰囲気してたし⦆
* * *
「エレーナさん,ミハイルさん。本当にありがとうございました。今度は会議の時に会いましょう」
歩きながらリリスは言った。そして二人は手を振ってくれた。リリスには見えていなかったが,エレーナの腕にはリリスの作った花の腕輪が着けられていた。
ジマーニアまでの道は吹雪いていたが次の国までは吹雪いておらず,到着するのが早かった。国境が近づくと,魔物が現れた。しかし,とても弱かったので【魔力分散】だけで倒せてしまった。
「国境警備隊だ。この国に来た目的は」
「観光です」
そんな質疑応答を十分続けると,やっと国に入れてくれた。
リリスが最初に見たのは懐かしい,桜並木だった。そして周りを見ると,桜だけではない,水仙やしだれ柳もあった。しばらく歩いていると,ガイドが立っていた。
「ようこそ!春の国・フリューリンクへ!」
「色々な国の花が植えられているんですね。とてもきれいです」
そう言うと,ガイドは喜んでいた。
「そうでしょう!!この地域は年中春の気候なんです。だから国賓の方々がこの国に訪れたときに植えて貰っているんです」
ガイドと別れ,とりあえず本屋に寄った。本で観光名所を調べるためである。
「ふーん。花見できるところもあるんだ」
「花見って?」
カーティスはどうやらしたことがなかったらしい。それもその筈,ローゼンタールには桜がなかったからだ。
リリスは短めに説明をした。
「そんな文化があるんだー」
「観光名所になっているらしいよ。明日とか行ってみない?」
「いいね。屋台とかあったら行ってみたいし」
二人は本屋で本を買った後,ホテル探しをした。そして,泊まるホテルは春の花を基調とした部屋のある綺麗そうなところだった。そこに荷物を置き,すぐに街の方へ向かった。
「ふむふむ……カーティス,ちょっと離れたところで戴冠式をやるんだって!見に行かない?」
「面白そうだね」
この街はとても華やかだが,首都は別にあるらしい。せっかくなので,歩いて首都まで行ってみることにした。
「うわぁ!お花見用の食料まで売ってるー!」
「このお菓子はですねー。大和国ってところの『団子』って言うですって!つい最近そこの商人が来てですねーこれの作り方を教えてくれたんですよ」
⦅日本みたいな国もあるんだ!行ってみたいなぁー⦆
二人は団子を買って食べた。そして,色々な屋台を周って気付けば首都に到着していた。戴冠式が行われる場所へ向かうと見知った顔がいた。
「うちは暗殺とかしないってぇ!?ねえ,兄様からもなんか言ってよ!?」
「翠蘭は確かに国王様を狙ったわけではありません。ただ暗殺者の攻撃を逸らすために魔術を放っただけなんです」
「お二人とも何かあったんですか?」
警備隊の人に捕まっている翠蘭と春雷に話しかけた。
「このお二方と知り合いなんですか」
警備隊の一人がそう言う。
「まあ友人というか,そんな感じです」
「じゃあ少し取り調べさせて下さい。この二人には国王暗殺の容疑がかかっているので」
リリスは二人と共に連行された。そして薄暗い部屋で取り調べが始まった。
「……あの,もう四時間くらい経ってると思うんですけど。帰りたいのですが」
リリスがそう言った時,別の人が部屋に入って来た。
「すみません!先ほど連絡があり,捕まえた女の服から魔力のこもったナイフが出て来ました!どうやら遠隔攻撃できるものだと思います」
「捕まえた女というのは今,俺の目の前にいる女か?」
リリスは安心していた。魔道具だったら亜空間の中にしまっていたからだ。
「えっと…どっちもの装備品から出て来ました。どうやら別の人の魔道具と接続すると威力が高まる魔道具のようで男の方にも入っていました」
「ああ分かった。お前,牢獄行きだ」
目の前の男に笑いながらそう言われて強制連行された。リリスが取り調べをした男の魔力を見たら国王暗殺の現場に微かに残っていた魔力にほぼ一致していた。
⦅あの男が黒幕……!?国王を殺そうとした罪で死刑とかなんないよね!?⦆
地下牢に閉じ込められ,周りを見た。すると,翠蘭と春雷もいた。
「全く……全然話に取り合ってくれないし,なんか知らない魔道具が出てきたし」
「私,多分黒幕知ってます」
「本当ですか!?僕達を陥れた人は誰なんですか」
「多分ですけど……私を取り調べていた人です。内部の人だったら魔道具をこっそり入れることも可能だと思いますし,暗殺の時に残っていた魔力の残像と彼の魔力が一致していました」
黒幕が分かったところで地下牢には【術式無効】の結界が張られていたので,魔術は使えなく,大人しくする三人だった。
「んー……助けてくれる人はいなそうだし,このまま三人で処刑コースかな?だとしたら他の一級魔術師たちが許さないと思うけど」
「あっ,けどカーティスとジェイクさんがいます。なんとか冤罪を晴らしてもらいたんですが……ところでお二人は何をしにこの国に来たんですか?」
リリスの質問には春雷が答える。
「戴冠式を見に来たんですよ。というか極秘の護衛だったんです。ダンテさんいるじゃないですか。あの人に頼まれて…」
「そんなことよりリリス,カーティスさんとジェイクさんって誰?」
「私の連れです。二人とも頭がいいからきっと私たちの冤罪を晴らしてくれるはず」
「おぉー!いいね!兄様もいいと思わない?」
「いいと思うよ。けど黒幕をどうやって伝えるの?僕たちは今,術式を使えないから何か行動を起こすのも難しいと思うんだけど」
数秒前まで声が聞こえていた地下牢に,沈黙が流れた。
「どうしよう!?あの二人に今の状況を伝える方法がない!?」
こんな結論に至ってしまった三人だった。




