国外追放で療養する
「……リリス?大丈夫?」
目が覚めると,カーティスの顔が近かった。つい照れてしまったリリスは,毛布で顔を覆った。
「大丈夫……なのかな?体に異常はないよ」
そう言うと,カーティスは抱きついてきた。
「く,苦しい……」
「あっ!ごめんね……病み上がりだもんね」
そう言って,カーティスは放してくれた。リリスは,辺りを見渡した。
「ここはどこなの?」
「ああ。エレーナさんの家だよ……っていうか外で泊まってたの?あんな寒いのに?」
⦅カーティスには内緒にしておきたかったのに!!⦆
「なんでそのこと知っているの?どこかで見かけたの?」
「ミハイルさんから教えて貰ったんだよ……一日目はコートなしで寝たんだってね。しかも雪が積もってるベンチで寝てたんでしょ」
「あはははー……元々そういうのには慣れてたから」
「慣れてたとか慣れてないとかそういう問題じゃないんだよ」
そんなことを話していると,部屋にエレーナが入っていた。そして申し訳なさそうに話した。
「本当にごめんなさい!」
「えっ,なんでですか」
「だって,ミハイルがホテルを出禁にさせたらしいじゃない」
そう言われると,リリスは苦笑した。
「あれは……まあ嫌いな人を見たらそうしたくなる気持ちも分かりますよ。本能ですからしょうがないですよ」
ミハイルは真顔で言った。
「別にフォローなんてしなくてもいいですよ。惨めになるだけなんですし」
「ミハイル!せっかくリリスさんが許してくれるっていうのにその態度がなに!?」
「二人とも喧嘩しないで下さい!」
カーティスが止めようとするが,二人の喧嘩はさらにヒートアップしてしまった。
「そもそもミハイルはさ……ちょっと重いんだよ。愛がさ」
「重い……?俺は頑張ってエレーナを愛しているのに」
「(カーティス,これ止めた方がいいやつだよね)」
「(うん。頑張って止めよう!)」
そう言った瞬間に魔術が放たれた。リリスのものではなく,エレーナとミハイルのものだった。
「【運命操作】」
「【完全凍結】」
「わー!?バトル始まっちゃったよ……カーティスどうする!?」
カーティスは戦う二人を諦めたような目で見た。
「僕はこのまま戦わせておいてもいいんじゃない?ほら,二人は楽しそうじゃん」
⦅本気でどうしよう!?一級魔術師にでも【魔力分散】って効くのかな⦆
一か八かで【魔力分散】と唱え,二人の魔力を倒れない程度に抑えた。
「……ごめんなさい。取り乱しましたわ。とにかく今日はこの家でゆっくりしてくださいまし」
そんなこんなでエレーナ達の家に泊まることになった。
「うわっ,この家広くて迷っちゃいそう」
「リリスは方向音痴だから迷うんだと思うよ。けど広いよねー」
リリスとカーティスは夕食を食べるために一階へ降りた。すると,とても良い匂いが漂ってきた。
「うわー。ビーフシチューみたいな匂いがするー」
「多分ビーフシチューだよ。エレーナさんの料理は。そういえばリリスって料理できるの?」
「うっ……」
子供の頃は魔術を極めすぎて家事を一切やってこなかったのである。そして,前世で唯葉と彼女の兄に料理を振る舞ったら不味すぎて泣いていた。
⦅あの時はすごく申し訳ない気持ちになったなぁ…見た目は悪くなかったと思うんだけど⦆
「リリスー?料理できるのー?」
「……できないよ」
「あら!料理すら出来ないだなんてみっともないですわね!」
料理もちゃんと出来ているエレーナは言った。
「むぅ……私だって護身術は人より出来ますし?」
「リリス,自慢になってないからね」
もっともである。
ミハイルは五人分の夕食を運んでくれた。
「リリスさーん!大丈夫だったー?」
「ジェイクさん!知ってたんだね」
「風呂から上がった時にリリスさんを抱えているカーティスを見たからね」
「皆さん,食事ができましたよー」
そして,エレーナの作ったビーフシチューを食べ始めた。
食事を始めて五分ほど経ったくらいでミハイルがこんなことを言ってきた。
「皆さんの得意属性魔術ってなんですか?」
⦅嫌な質問来ちゃった!?⦆
属性魔術とは,四大属性魔術に加え,氷,植物の属性を含めた魔術である。しかし,リリスは属性魔術が一個も使えないので困っているのであった。
「俺は氷属性魔術です」
「僕もですー」
ミハイルとカーティスは氷属性が得意らしい。
「私は風属性魔術が得意ですわ」
「俺は火属性魔術ですね」
エレーナとジェイクも言ってしまい,言うしかないような状況になってしまった。
「リリスさんは何が得意なんですの?」
「あー,えっとー……得意な属性魔術なんてありません」
リリスは早口で言ったつもりだったが他の人には聞こえていた。
「リリスさん……そんなんでよく一級魔術師になれたね」
「私,訴えますわ!属性魔術が使えない一級魔術師なんて聞いたことありませんし!」
「待って下さい!!リリスは『得意な属性魔術がない』って言っただけであって属性魔術が使えないとは言ってません!」
「………使えません」
「「「「………」」」」
擁護してくれたカーティスですらもしてくれなくなった。
「分かりましたわ。決闘しましょう!」
「いいですけど……私,結構強いですよ」
そう言ってリリスは言葉を続ける。
「そうだ。エレーナさんとミハイルさんがコンビを組んで下さいよ。私は一人で行けます。もしそれで私が負けたら次の会議の時に訴えていいですよ」
「……俺はいいよ。エレーナはどうする?」
「一級魔術師として恥じぬ行動をするように」
五人は庭へ出た。そしてカーティスの魔術で結界を張り,決闘が始まった。
⦅うーん……秒殺できるけど流石に可哀想か⦆
リリスが確認した二人の戦法は,エレーナが後方でサポートをし,ミハイルが前に出て魔術を放つというものだった。
そして決闘が始まってから二十分が経った頃,そろそろ決着をつけることに決めた。そして,リリスが普段使っていない魔術を使った。
「『惑星と接続』対象は【冥王星】」
そう言うと,結界が壊れるほどの威力の攻撃が,エレーナとミハイルに向けて放たれた。そして同時にリリスは言う。
「【透明化】神の力と接続」
正直リリスの【透明化】だと,惑星規模の魔術を無効化できなかったと思う。しかし,神の力と接続することで完全に無効化できると思った。案の定,接続魔術は無効化された。
「今のは何……?」
「惑星と接続って聞こえたけど……」
「はい。私は属性魔術が使えない代わりにこういう術式が使えるんです。まあ,これは有名な魔術書の応用なんですけどね」
そうして,二人との決闘はリリスの勝利に終わった。
「リリス凄かったねー。中級の結界を破壊できるのだって一級魔術師の中でも少ないんじゃない?」
「そう?寒かったから早く終わらせたかったんだけど」
カーティスは驚いていた。
「大丈夫!?今も寒い?温めるよ」
「今は寒くないけど……」
リリスがそう言ったが,抱きついて離してくれない。諦めてそのまま眠ることにした。
「はぁ…リリスあったかいね」
「カーティスも温かいと思うよ」
「そう?ふふっ,やっぱ近くで見ると可愛いなぁ」
⦅吐息で……眠れない!!⦆
前世で配信者のASMRをかけっぱなしで寝よとしたが,音質が良すぎて寝れないあの現象を思い出してしまった。その時も,吐息で鳥肌が立っていた。
頑張って寝ようとしたが,一時間は眠れなかったリリスだった。
どうでしたでしょうか?
誤字脱字がありましたらご報告下さい。




