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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
冬の国・ジマーニア編
37/106

国外追放で凍える

「…………カーティス?」

 リリスが目を覚ますと,カーティスが手を握っていた。そして顔を見て見ると,今にも泣きそうだった。

「よかったぁぁぁぁ!生きててくれてありがとう!」

「急にスケールが大きくなった!?」

 リリスは,カーティスが落ち着きを取り戻してからこの国に来るまでのことを話してもらった。リリスが凍死しかけていたことも,無事にジマーニアに到着したことも,今はジマーニアにいる人の家に泊まらせてもらっていることも教えてくれた。凍死しかけていたことを聞いて,リリスは少しショックを受けた。

「ごめんね。この屋敷の人にも迷惑をかけたんじゃないかな?」

「そうかもしれないけど……快く引き受けてくれたし,悪い人ではないと思うよ」

 ベッドから立ち上がり,屋敷の人にお礼を伝えるために一階へ向かった。

「あのっ!この屋敷に泊めて下さり,ありがとうございます!」

「いいのよ。この国に滞在している間は(わたくし)の家に泊まりなさい……ってリリス?」

 顔を上げると,今一番会いたくなかった人物ランキングのトップ十に出会ってしまった。

「エレーナさん?」

「あら,リリスさんじゃないの。あの二人は泊めてもいいけど貴女は今すぐここを出なさい……ってなんで泣いているのよ!?」

「あれっ,私泣いてますか?」

 エレーナにハンカチをもらって涙を止めた。

「私,ここから出ます。その代わり二人のことをお願いします」

「いや本気で言ったわけじゃないのよ!貴女死にかけだったんでしょう?全く……一級魔術師だっていうのになんて情けないのかしら。手が震えていては何も出来ないじゃない」

 そう言ってエレーナは手を握ってくれた。彼女の手は暖かくて,柔らかかった。

「あったかぁい」

「ちょっとっ!?あまり近づかないで!」

⦅なるほどー。エレーナさんはツンデレなのかー⦆


「リリスさん。俺の婚約者に馴れ馴れしく接しないでほしい」

 そう言って,ミハイルは氷の塊をぶつけてきた。リリスはそれを避けることができたが,ミハイルはさらに機嫌を悪くしてしまった。

「ちっ,俺の大事なエレーナの精神を傷つけやがって」

「もっもっ申し訳ございませんでしたぁ!?今すぐ出ていきますので!」


 ミハイルの威圧感に耐えられなくなったので,走って出て行ってしまった。そして,リリスが屋敷を出ていくのと同時に,カーティスが二階から降りてきた。

「どうしたんですか……?」

「邪魔を排除しただけですよ。気にしないでください」

 ミハイルから何となく殺気を感じたので,これ以上追究しないことにしたカーティスだった。


「寒い……火属性に関しては一切使えないから。困ったなぁ」

 リリスは,何も持たずに屋敷を出て行ってしまったのでコートなど持ってくるのを忘れてしまったのだ。道にあった店を見ながらホテルを探した。


「あの,これ下さい!」

 リリスが指さしたのは,とても分厚いコートだった。それを言うと,店でコートを売っていた人はとても驚いていた。

「お嬢ちゃん。その格好でここまで来たのかい?」

「ま,まあ……上にローブは羽織っていましたけど」

 そう言うと,店員は心配そうな顔をした。

「ここは寒いからねぇ。はいこれ。あげるよ」

 店員がリリスに差し出したのはさっきの分厚いコートだった。

「はい。お金です」

「金なんて要らないよ!?その格好のままじゃ死んじまうからさ,サービスだと思ってくれ」

 店員がコートをくれたので,ありがたくそれを貰うことにした。店を出て,再び街を見て見ると聖夜祭のムードだった。

「そろそろ聖夜祭かー」

⦅せっかくならカーティスと過ごしたかったな……⦆

 エレーナ達の屋敷にいるカーティスを思い出した。カーティスとの聖夜祭を妄想して少し悲しくなった。物思いに耽っていると,横から声が聞こえてきた。

「リーリースー!なんで無視するの」

「カーティス!?屋敷にいるんじゃなかったの?」

「ジマーニアを少し回ってきた方がいいって二人に言われてさ,多分リリスは嫌われているんでしょ?じゃあ,待ち合わせ場所を決めようよ」


 カーティスと一緒に待ち合わせ場所を決めた。聖夜祭のために立ち上げられた『聖なる木』の前で集合することにした。

「カーティス。あのさ……二日後の聖夜祭,一緒に過ごして」

「いいよ。僕も一緒に過ごしたいと思ってた。レストランに行かない?」


 そんなことを話し合いながら歩いて行くと,広場に到着した。リリスが辺りを見回してみると,大勢の人がいた。

「人が多いねー」

「だねー」

 リリスは,カーティスにぴったりとくっ付いて歩いた。カーティスは,少し顔が赤くなっていた。

「ねえ。なんでそんなに僕にくっつくの?」

「寒いからだよ。カーティスってほぼ上着着てないのに暖かいねー」

「そっか……暖かいもんね。僕,結構火属性魔術得意だから」

 それを聞いたリリスは少し意地悪なことを言ってみた。

「暖かいって理由だけじゃダメだった?どんな理由が良かったの?」

「……分かってて言ってるでしょ」


 広場から少し歩くと,丘が見えてきた。前世も含めて人生で一度しか雪を見たことがなかったリリスはとてもはしゃいでいた。カーティスもそれに乗じて丘に走っていった。そして雪に飛び込み,笑いあった。

「カーティス!雪ってみたことあった?」

「死者の(ヘルヘイム)以外では見たことないね」

 カーティスはそう言って,雪を丸め始めた。リリスは少しの間首を傾げたが,カーティスがその行動を(おこな)った理由を知ることになる。

「わっ!?」

 リリスの顔の前でボフッという音がした。何があったのか理解できなかったが,顔に雪が付いたと分かった瞬間に前世にあった雪遊びを思い出した。

「やったなぁ……!?」


 目の前には雪玉を投げるカーティスがいた。心なしか,意地悪な顔をしている。

「ふっふふーん。リリスには氷魔術が使えないからねー」

「んーー!!馬鹿にしないでよねっ?」

 リリスが雪玉を投げたが,カーティスには届かなかった。それを見た彼は,笑顔になって言った。


「あれぇー?もしかしなくても運動音痴?」

「違うわっ!!」

 何時間か雪合戦をしていたが,リリスがカーティスに雪を当てれたことは一度もなかった。


 * * * 


「じゃあまた明日ねー」

 二人が別れると,リリスはホテルを探すことにした。カーティスと街を回っていたことで,ホテルを探すのをすっかり忘れていたのだ。もう日が沈みかけているので,適当にホテルを決めようとした。


「お名前を伺ってもよろしいですか?」

「あっ,はい。リリスです」

「リリスさんですか……すみません。ここには泊まることが出来ません。別のところを探してください」


 リリスが確認した十件のホテルは全てこう言ったら断られた。どうしようかと悩んでいると,目の前にミハイルが現われた。


「やあ,リリスさん」

「……こんばんは?えっと,おすすめのホテルとか知りませんか?」

 リリスがそう言うと,ミハイルは不敵の笑みを浮かべた。

「さあ?少なくともこの国のホテルは貴女を泊めさせてくれないと思いますよ」

「……どうしてですか?」

「だって俺がそう指示させたから。じゃあ野宿,頑張ってねー」

 そう言われて数秒考えたリリスは驚きながら言った。


「まさかこの国で野宿することになるの!?」


 ジマーニアでは(ひょう)が降り始めていた。

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