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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
霧の国・マジェスティア編
36/106

国外追放と女王

「あー……ギルバートさん,よく眠れましたか?」

「えぇ。それに比べてリリスさんはすごい疲れているように見えますけど……」

 リリスは苦い顔をしながら言った。

「一級魔術師達の集まりに行ったんですけど……なかなかに悲惨でした」

「まあ,天才と変人は紙一重とか言いますしね」

 ギルバートがフォローしてくれたおかげで少し気が楽になった。

「ありがとうございます。早速なんですが,船で帰りましょう!」

 ギルバートはそれに応じて,さっそく準備を始めた。そして,質問してきた。

「一級魔術師にはどんな方がいましたか?」

 彼は少し嬉しそうだ。確かに自分の極めている分野の頂点は憧れるものなのだろう。リリスは恐怖を覚えながら話し始めた。

「色んな人がいましたよ。貴族の方に,王族とか……けど魔術師として世界に知られているような人はいませんでしたね」

 リリスやアンネはそもそもで知名度がないし,自分が一級魔術師だと周りに伝える気もないので一級魔術師というのは伝説の存在として語り継がれているのだ。


「僕は準備,終わりましたよー」

「私も終わりました。船に乗り遅れないように早く行きましょ?」

 二人は走って船乗りばへ行き,船のチケットを買ってから船に乗った。そして疲れたリリスは部屋の中でため息を吐いた。

「はぁ……カーティスに会いたい……」

 リリスは本音を愚痴った。今日あった一級魔術師達の集いがとても疲れたのだ。ギルバートは苦笑いしながら話しかけた。

「カーティスさんがとても大好きなんですね」

「はいぃ……カーティスの大切さについてやっと分かりましたぁ」


 マジェスティアに到着し,疲れて眠っていたリリスをギルバートは起こしてくれた。そして港に着くと,疲れていたカーティスと,うきうきそうなクレアが出迎えてくれた。

「リリスー……」

 泣きかけのカーティスはリリスに抱きついてきた。リリスはそれを止めるようなことはしなかった。疲れていたし,なによりカーティスに頼られるというのは悪い気がしなかった。


「魔術の国……死ぬかと思ったぁ……」

「魔術の国ぃ!?なにそこ。行きたい!!」

 疲れが一瞬で吹き飛んだ。そして戦闘狂の面を出したリリスは,カーティスにねだってみた。

「だめだよ……僕が死んじゃう。三千年生きているクレアさんがいなかったらリリスに会えていなかったと思うよ」

 カーティスの言ったことに,リリスは少し違和感を覚えた。そしてその違和感に気づき,言った。


「クレアさんってもしかしなくても女王様?」

「なななななっ何言っているのよ。そんなことあるわけないじゃない」

 完全に焦っていた。少し反応を見るのが楽しかったが,船酔いと疲れで早く寝たかったので,話を早く進めようとした。

「私,ギルバートさんから女王は三千年生きているって聞いたんですけど」

「ギルバートっ!?なに無駄なこと言っているんですか!!」

「クレアさんって女王だったんですねー」

 カーティスはほとんどスルーしていた。カーティスも王族なので,女王だとしてもそういう身分の人たちには慣れているのだろう。

「そうだ。カーティス……第一王子が死んだって」

「…………え?」

「ごめん。私も詳細は分からない。けどそれを教えてくれた人はカリヤルが怪しいって言ってた」

 リリスがそう言うと,カーティスは納得したような表情をしていた。

「確かに。カリヤルは兄さんのことが嫌いだったから……リリス,僕は一回だけ君に嘘を吐いちゃった。実はカリヤルとはあんまり仲良くなかったんだ」

 カーティスの言葉でリリスは少し安心した。

「まあ,私も貴方にはカリヤルと仲良くしていてほしくなかったんだけどね」

「で,結局カリヤルが国王になるのかな。嫌だなーそんな国」


「あのさ,話が別の方向にずれていっていると思うんだけど。私の話に戻して」

 ムスッとした表情でクレアが言ってきた。三千年生きていても精神年齢は子供のままらしい。

「クレアさん,魔術の国ってどんな感じでしたか!」

「えー……私でも死にかけたから一級魔術師になったら余裕で生き延びれるって感じかしら」

「ちっ……」

「舌打ちしたー!今この(),舌打ちしたよね!?」

「はい。女王様。彼女は一級魔術師なのでもっと強い人と闘いたかったのでしょう」

「えー!?こんな小娘がぁ!?」

「クレアさんだって外見だけだったら私よりも小娘ですよ」


 リリスは,クレアに旅をしているということを伝えた。すると,クレアは笑顔で提案してくれた。

「だったら,この近くにあるジマーニアはどうかしら?」

「「ジマーニア?」」

 リリスとカーティスが首を傾げると,クレアは丁寧に説明してくれた。

「ジマーニアはね,一年中寒くて雪が降っているから『冬の国』って言われているの!何と言っても一級魔術師が二人もいるんだよっ!!」

「二人!?」

⦅どうしよう……二人コンビっていったらエレーナさん,ミハイルさんコンビと翠蘭,春雷(チェンレイ)さんコンビしか分からないんだけど……翠蘭達だといいなぁ⦆

 リリスはそう考えながらも,面白そうだと思って行ってみることにした。クレアと話をしていると,ジェイクも寄って来た。

「リリスさーん何してるのー?」

「ジェイクさん!次にジマーニアってところに行く予定なんです」

「じゃあ馬は使えないかなぁ……寒すぎて死んじゃうから」

「じゃあどうやって行くの?」

 その疑問にはギルバートが答えてくれた。

「それなら,マジェスティアから歩いて一時間くらいしたら着きますよ」

「それは良さそうですねー。リリス,そこに行ってみよう」

 カーティスも回復し,二人に感謝の言葉を伝えて霧の国・マジェスティアを離れた。


 二人が見えなくなった後,クレアは焦っていた。

「どうしよう!!」

「クレア様。どうしたんですか?」

「ジマーニアまでの行き方を伝えるのを忘れてた!!」

「ここからジマーニアまでって遭難率高いですよね……」

 少し考えてから,クレアは悟ったような眼をして言った。

「まあ,リリスが一級魔術師なら何とかなるでしょ。多分」

 ギルバートは呆れてため息を吐いた。


 * * * 


「寒っ……これ絶対氷点下いってるって」

「リリス,僕の上着,着る?」

 ありがと,と言ってリリスはカーティスの上着を受け取った。そして仮説を言ってみた。

「もしかしてさー……遭難してない?」

「絶対遭難してるよね,これ」

⦅あぁ,寒いのは昔から無理なのにー……はぁ。早く国に着きたい⦆

「ジェイクも大丈夫?」

「大丈夫だよー。リリスさん,地図持ってるー?」

 ジェイクが辺りを見回したが,リリスが見つからなかった。

「リリス,リリス!?」

 カーティスとジェイクが少し元に戻ると,リリスが倒れていた。カーティスとジェイクが寒がらずに前に進めることが出来たのは,ある程度火属性の術式が使えたからだ。しかし,リリスはほとんど四大魔術が使えないから凍えてしまったのだ。


「ジェイク,早くジマーニアへ行こう」

 リリスを担ぎ,二人が三十分ほど歩くと,豪華な建物が見えてきた。そして,カーティスが建物の扉を叩いた。


「すみません!誰かいますかー!」

 しばらく扉を叩いていると,豪華な扉が開いた。

「なんですの……?」

「あの,人が死にそうなんです!今日だけでもいいから泊まらせてください」

 女は凍死しそうなリリスの顔を見て,すぐ承諾してくれた。

「客人の部屋は二階にありますわ。そこをお使いくださいな」

「よかったね。リリス!早く暖めてあげないと。えっとーありがとうございます!!」

 カーティスが急いで二階に上っていった。それを女は細い目で見た。


「リリス……?」

()()()(),どうしたんだい?」

「ミハイル,遭難者がいたから家に上げたのよ」

「エレーナは優しいねぇ」


 二人はそう言いながら三人のいる二階へ上がっていった。

どうでしたでしょうか?

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