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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
霧の国・マジェスティア編
35/106

国外追放と一級魔術師

 日が昇り,リリスが目を覚ますと,そこはまさかの岬の上だった。

「岬の上で眠っていたの!?」

「うぅっ…床が痛い…」


 リリスはギルバートを担ぎ,街の方へと向かった。そして,街に到着すると一枚の号外新聞が渡された。

「『満月の夜にライオネル岬へ向かうための木々や魔物が一瞬で消失し,数分後には元に戻った』……私じゃん」

 ギルバートをホテルに置いて街を歩いていくと,「神のご加護」だとか「神が降臨なさった」とか言っていた。

⦅あー……絶対に言わないでおこっと⦆

 そう考えながら,一級魔術師だけで行われる会議の会場を探した。

 ぶらぶら街を探索していると,ダンテと女性を見かけた。そして,二人が入っていった建物を見た。

「あっ,ここじゃん」


 そう独り言を呟き,中に入った。廊下を進んでいくと,円卓が見えてきた。しかし,座っていたのは半分にも満たない。座っていたのは,だ。


「えぇ……何をしているんですか」

 リリスがつい,言ってしまった。ほとんどの人が集まっているが,筋トレしている人や,イチャイチャしている人達,生物実験をしている人もいた。


「リリスさん。ようこそ,一級魔術師の集まりへ!」

「……ちょっと帰ります」

 リリスは一級魔術師とはもっと威厳のある感じだと思っていたのだ。しかし現実はそうではなかった。

⦅胃が痛い……⦆

 帰ろうとするのを,ダンテは全力で止める。

「待って下さい!!普通の人は僕と,そこにいるアンネさんしかいないんです!本当に死にそうなんです……」

 そこまで言われたら帰れなくなるのがリリスだった。


「あと三十分したら会議が始まりますから……やる時はやる人達なんですよ」

 ダンテの言葉を信じたリリスは,他の一級魔術師の人たちに挨拶をし始めた。

「アンネさんですか……?えっとリリスと言います。お願いします」

 アンネは一息ついて言った。


「貴女は普通の方ですよね…?ね?」

 物凄い圧を感じた。確かに周りの人間がこんなに変人だったら疑うのも納得できる。

「はい。私は至って普通の人間です」

「嘘よ!!あの女の未来が見えないわ!!」

 叫びながら言った女はリリスに近づいてきた。慌てて結界を張って攻撃を防いだ。

「なんで攻撃してくるんですかっ!」

「うるさい,うるさいうるさい!!私よりも魔力が高いなんて……そんなこと,あるはずない!!」

 続けて攻撃してきた。リリスは呆れたので【魔力分散】でとりあえず,攻撃してきた女の魔力を分散させた。

「エレーナ……そいつは至って普通みたいな顔をしているがこの中で一番強いと思うぞ……えぇっと,俺の名前はミハイル。同じ仲間同士仲良くしようよ」

⦅そいつ呼びの時点で仲良くする気ないじゃん!!⦆


 ミハイルはエレーナの婚約者らしい。そして,エレーナは自分よりも魔力の低い相手を占うことができ,彼女の魔力の半分よりも少ないと,ある程度の『運命』を操作できるとのことだ。

「エレーナ様より上…全然普通じゃないぃぃぃ」

 カオスな状況が続いている中,ダンテは一級魔術師しかいない場を仕切った。

「あのー。そろそろ『会議』を始めますよー」

 ダンテがそう言った瞬間に他の人達は動き出し,自席に座った。

「……私の座る場所ってどこですか?」

「貴女の席なんてありませんわよ」

⦅ひぃぃぃぃっ!?⦆

 エレーナに怯えてしまった。

「ま,まぁ…リリスさん。僕の隣はどうですか?」

「そうしますぅぅ…」

⦅よしっ。この会議では空気になろう…⦆


「早速,会議を始めようと思います!今日の会議は…新しい人と仲良くなるっていうのはどうですか?」

 ダンテは全力で場を和ませようとしたが無理だった。エレーナはリリスを完全敵視しているし,ミハイルも殺気を隠していない。何より,三十人が座ることに出来る円卓に四人欠けているのだ。


「とりあえず生存報告しましょうか…フェリクスさん,いない人の魔力信号は?」

「あっはい。えーと…ドミニクさん以外死んでますねー」

 フェリクスと言われたた男は軽々しくそう言った。

「まあ,ドミニクさんは死なないでしょうね……」

 空気になりきろうと思っていたリリスだったが,『死亡』という単語が出てきて,ついツッコんでしまった。

「皆さん人が死んでいるのに反応薄くないですか!?」

「一級魔術師だって人間ですのよ?死ぬのは当然ですわ」

 エレーナに強く言われ,何も言えなくなったリリスは,静かに座った。

⦅あれ……?今ドミニクって言った…まあ他人か⦆


 リリスがそう考えている間にも,話題は変わっていた。


「それじゃあ,自己紹介をしましょう!それじゃあ僕から」


 ダンテはそう言って,立ち上がった。

「僕はダンテ。得意な魔術は四大属性全般です。特に水属性です。よろしくお願いします……それじゃあ次の方」

 そう言ってリリスの方を見た。意図が分かったリリスは立ち上がった。

「えっと……リリスと言います。得意な魔術は総合魔術,星を使った魔術です……よろしくお願いします。えっと次の方…」

 そう言ってリリスの方を見た。意図が分かったリリスは立ち上がった。

「えっと……リリスと言います。得意な魔術は総合魔術,星を使った魔術です……よろしくお願いします。えっと次の方…」

 そう言うと,隣にいたアンネが立ち上がった。

「……アンネでしゅっ。得意な魔術は…召喚とか,黒魔術とかっです。お願いしますっ」

 噛んじゃったぁぁぁぁと言いながらアンネは座った。そうして自己紹介が続いていった。

「ミハイル。得意なのは氷属性魔術だ……よろしく」

 彼が素っ気なく挨拶をし,エレーナに引き継いだ。

「エレーナですわ。得意なのは星を使った占い,『運命操作』,総合魔術ですわ。よろしく」


「えっと。自己紹介が終わったので質問とか,最近の魔術研究の結果などの報告があれば伝えてください」

 リリスはダンテに聞きたいことがあったので手を挙げた。


「あの……アルティスタで行われた天使降臨の儀式ってどうなりましたか?」

 ダンテは笑顔で聞き返す。

「どうなったと思います?」

 その問いに,真剣な顔で少し悲しそうに言った。

「失敗したんでしょうね。神話に基づくと悪魔を従えているとかそんな話もありましたから」

「確かに。呼び出す天使を間違えてしまいましたね。しかし,僕たちはあまり被害を喰らいませんでした」

 リリスは疑問に思い,首を傾げた。

「なんでですか?」

「………あの天使は,ローゼンタールを襲ったんです。聖女・マリアが嫌いだからと……そして神がお怒りになられたとも言われていました」

「どうして怒ったんですか?」

「娘をいじめたとか言ってたけど,ローゼンタール出身の女性で優れている魔術師で『神の子』候補ってリリスさんしか知らないんですよね。どうなんですか?『神の子』だったりします?」

「あは,あはははー」

 棒読みで笑ったリリスをエレーナはじっと見つめた。

「貴女……神の子とは言いませんわよねぇ?」

「あはは,もちろん言いませんよー」

 リリスは変人の集いで精神が半分壊れていた。凡人の考え方とはまるで違っていたのだ。

「いや,発言は彼女の自由ですから…で,ローゼンタールは今,絶賛水難多発中ですよ。僕もあの聖女,うざいと思っていましたし。マスティマさんに協力させていただきました」

「は,はぁ……」

 そして,ダンテはとてつもないことを口にした。

「そうそう,聖女・マリアが国に帰ってきた日に第一王子が死んだそうですよ」

「えっ………?」

⦅どういうこと?事故かな⦆

「どうやら黒魔術が使われたらしいです。恐らくカリヤル様の仕業だと」

「カリヤルは黒魔術なんて使えたんですか……」

「………残念ながらリリスさんの書斎からこっそり見ていたとの噂があります。けどカリヤルさんって馬鹿ですよね。あんなのが王位継承権を継げるはずがないのに」

「確かに。あの阿呆は救いようがないですわね」

 ダンテの言葉にはエレーナとミハイルも同意していた。

「兄様ぁーローゼンタールには救いようのない馬鹿な王子もいるものですねぇー」

 そう言っていたのはさっきイチャイチャしていた人たちだった。

「えー…翠蘭(スイラン)さんでしたっけ」

「そうそう!でこっちが兄の春雷(チェンレイ)だよ!で,ローゼンタールで王位を継げそうな人っていったら第二王子くらいしかいないよねぇー」

「翠蘭,リリスさんが困惑しているでしょ。あんまり馴れ馴れしくしないの」


 翠蘭は植物を操作する魔術を得意とし,春雷(チェンレイ)は雷神を降臨させ,術式に組み込んでいるらしい。

「翠蘭さん,もう一回言ってください!」

「えー。いいけど。ローゼンタールで王位が継げそうなのって第二王子しかいないって話ー?」

⦅やっぱりそうだ。第二王子しかいないってことは……⦆

「カーティスが国王になるの!?」

⦅いや,流石にカーティスが王位を継ぐみたいなことになれば婚約者は選ばれるはず……⦆


「それじゃあ,時間も来ていますし……これにて会議を終了します。次回の開催地は後日ということで……リリスさんはいつでも会議に参加できるように僕との交信術式を渡しておきますね」


 リリスは疲れながら建物を出た。

「貴女のようなのが一級魔術師だなんて……聞いているだけで吐き気がするわ」

 エレーナにそう言われ,少し落ち込んだリリスだった。


「ギルバートさんと……帰るか」

 リリスはギルバートのいるホテルへ向かった。

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