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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
霧の国・マジェスティア編
34/106

国外追放で星を見る

「さあ!マジェスティアを目指して行くぞー!……っとその前に,今日はこの国を回りたいなあ」

「確かに。僕もマジェスティア戻ったらどうせ仕事だし。リリスさん,行きましょうか!」


 リリスはギルバートと手をつなぎ,離れないようにした。そして,どこへ行くかをカフェで相談した。

「夜は灯台で星を見るとしてー…それまでの間,どうしますか?」


 二人は本屋で『これを見ればすべてが分かる!スターレンの魅力全集』という本を買った。そして,それを読みながら,観光名所で巡る順番を考えた。そして,ギルバートが提案した。

「こことかどうですか?」

「どこどこー?」

 リリスは前のめりになって文字と写真のたくさんあるページを眺めた。すると,ギルバートと手が重なってしまった。その瞬間に手を掴まれた。

「リリスさん。隣,いいですか?」

 そう言って,ギルバートは向かいの席から隣の席に移動した。そして,リリスの肩に頭を乗せた。彼の手は暖かかった。

「えっと…ここの『神に近い場所』ってところはどうですか?」

 ギルバートにそう言われ,リリスは指をさされた項目をのぞいた。


《神に最も近い島》

 ここでは,一般の方でも天啓を聞くことのできる教会があります。また,ライオネル岬にある鐘では,思い人と鐘を鳴らすと,結ばれることが出来ると有名です。そして,神を召喚することもできます。


⦅胡散臭いなぁ……けど少し興味あるかも⦆

 リリスだって,天啓を聞くことが出来るし,その気になれば神さえも召喚することが出来る。しかし,そんなことをしない理由は魔力を大幅に消費をして,疲れてしまうからである。

⦅一般人向けに召喚の儀式で消費する魔力を抑えているなら私にもできるよねっ!⦆


「いいですね。それじゃあこのディーニアという島に向かいましょう」

 そうして二人は急いで『神々の国・ディーニア』行きの船に乗った。


「ディーニアまでは三十分で着くんですね。それまで何をしましょう…?」

「この船には何もないみたいですし…部屋で魔術の研究でもしてましょうかね」

 ギルバートはそう言って,魔道具を取り出した。リリスも結界を張り,彼に協力する。

「ギルバートさんはどのような研究をしているんですか?」

 彼は笑顔で話し始めた。


「僕は魔術は無詠唱で発動させられることができるのかっていう題目(テーマ)を研究しているんです。ほら,詠唱せずに術を発動できるってなったらめちゃくちゃ便利になると思わないですか?」

 リリスはその返答に対して申し訳なさそうに言った。

「すみません…私,もうそれできるんです」

「え……」


 場が一瞬凍り付いたかと思うと,ギルバートが大声で言った。

「リリスさん!すごいです!」

「いや……一級魔術師になれば誰でも使えると思うんですけど」

 実際に,ヘルと共闘した時も彼女は詠唱なしで魔術を使用していた。

「そもそも,一級魔術師って伝説みたいな存在ですからね。神に近しい存在……中には神の子もいるとかいないとか」

 リリスはそれを聞き,ビクッとする。しかし,ギルバートはそれに気づかないまま,話し始めた。


「女王様が三千年かけてすら貰えない称号なんですよ!そうだ,一級魔術師での会議ってあるんですか?噂であるんですよ。次の会議開催都市はマジェスティアだとか」

⦅そういえば私が一級魔術師になってから私宛になんか来てたっけな⦆


 リリスがそんなことを考えていると,船がディーニアに到着した。

「到着ー!さて,ギルバートさん。どこに行きたいとかありますか?」

 その質問に対して,ギルバートは即答する。

「教会に行きたいです。まずは神を拝まないと」

⦅信仰心が強いなぁ⦆

 リリスが『創世教』を脱会したのには,行った地域で宗教関連のトラブルを起こさないためというのもあるが,それ以上に神の存在を信じていないからだ。

⦅この世界とかも神じゃなくて天使が創ったんじゃないのー?⦆

 頭ではそう思いながらも信仰心の厚いギルバートの前では言わないでおいた。


 少し話しながら歩いていると,教会が見えてきた。そして,その教会から出てきた人達の中に見覚えのある顔が見えた。


「ダンテさんですか?」

 アルティスタの国王であるダンテ・アルティスタは微笑みかけてきた。


「リリスさん?カーティスさんはどちらにいるんですか?」


 クレアによって転移されたことを話すと,ダンテは笑いながら言った。

「なるほど……?そのクレアさんという方が別の男性と結ばれるために転移させたと」

 ダンテはリリスの後ろにいたギルバートに冷たい視線を向けた。それに気づいたギルバートは怯えているが,それに気づくことのできるほど敏感なリリスではなかった。


「ところでダンテさんってなんでここにいるんですか?あと後ろにいる人達は誰なんですか?」

 それを聞くと,ダンテは驚いていた。

「そういえばリリスさんって一級魔術師になってから一回も『会議』に参加していないんでしたっけ」


 『一級魔術師』という単語が出てきた瞬間に反応したのは,ダンテに睨みつけられていたギルバートだった。そして再度彼に睨まれて怯えていた。


「会議ってあったんだ……ギルバートさんに聞いたばっかりだけど」

「はい。もしよければ明日,ここで会議をしますのでぜひ来て頂けると」

 そう言って,ギルバートに見えないように住所の書かれた紙をリリスに手渡した。


 * * * 


「行っちゃいましたねー」

「まあ,一級魔術師って天才の集まりらしいですから……それより,あのアルティスタの国王に似た人,怖かったですねー」

 国王に似た人というか本人なのだが。


 二人は,一級魔術師の集団がいた教会に足を踏み入れた。教会自体の規模は小さかったが,神様に一番近いとされる教会なだけあって,とても美しかった。


「あっ,ギルバートさん,あそこに魔術書がありますよ!」

 二人が警戒しながら近づいて,その魔術書を覗いてみた。すると,表紙に『神の書』と書かれた本が勝手に開かれた。


「なになにー?『神よ,我々にお導きを』」

 リリスがそう言うと,教会が光りだした。目が光に慣れてきたから正面を見ると,男とも女とも言えないような人が立っていた。そして,その人からの第一声が発された。


『うん……ここは?えーっと。あっ僕の愛する娘よ!』

 そう言ってリリスに抱きついてきた。突然抱きしめられたので,リリスは困惑し,ギルバートは盛大にツッコミを入れた。

「えっ,不審者!?」

『違うわ。彼女(リリス)の父親だわ』

「いや,もう縁は切れていますが……別に父親はいますよ」

 そう言うと,『父親』はくすくすと笑った。

『はは,遺伝子検査とか魔力検査をしてみてごらん。()()()親子判定されないから』


 そう言いながら,『父親』は教会の椅子に座り,優しい声で言ってきた。

『さあ,僕の愛するリリス。なんでも質問してご覧』

「えっと,じゃあ……貴方は何者なんですか?」

 リリスは何となく目の前にいる『父親』の正体については分かっていた。ただ,信じたくなかったのだ。なんとなく少し,怖くなったのだ。

『僕の正体を聞くのは不安かい?けど大丈夫。誰にも言わせたりしないから』

 そして,『父親』は笑顔で言った。


()()()()

「何となく……分かっていました。他の人と違って魔力が大きくて,魔女と見做されて,いじめられて…」

『ごめんね……ずっと,一緒にいられなかった』

 リリスは『父親』に抱きつきながら言った。

「でも大丈夫なんです。私を心配してくれる人たちがいるので。その人達の笑顔で過去のことなんてどうでもよくなるんです」

『カーティス君たちのことかい?』

 そう言われ,リリスは笑顔で言った。

「はい。彼といると,幸せで」


 それを少し離れたところから見ていた人がいた。ギルバートだ。

「僕が入る余地はなさそうですね……」

 彼は少し悲しげな表情で二人を見つめていた。


 そして,リリスとギルバートは『父親』に別れを告げた。教会を出て,空を見て見ると,とっくに日は沈んでいた。

「どうしよう!?この近くに教会はないだろうし……」

「そうだ!ライオネル岬です!写真で見た通りならすごく綺麗に星が見えるはずです!」


 ディーニアもスターレンの一部なのだ。もちろん岬からでも綺麗に見えると記事に書いていた。しかし。

「ライオネル岬まではとても時間がかかるよ!?ライオネル岬についた頃には日は昇っているかも……」


 教会から岬までは四時間かかるらしい。距離にしてみれば遠くはないが,最短ルートで行こうとすると,魔物と遭遇することや,道に迷うこともあるらしい。そして険しい山道を歩いて行くというものだった。


 しかし,そんなことで迷う様な一級魔術師のリリスではなかった。


「まだ時間はありますっ!【魔力分散】」

 そう言いながら,魔力を分散させて近くにいた魔物を倒す。そして,その余波で木々をなぎ倒したのだった。

「ごめんねっ!後で直すから!」

 二人は全力で走った。全力で走ったので,早くライオネル岬に到着した。しかし,リリスにはまだすることがあった。


「【復元】,【復元】,【復元】!!!!」

 リリスが木々を復元させたのと同時に,星が空を覆いつくした。


「「わぁっ!!」」


 スターレンでは,満月というのは神が地上に降りてくるという伝承があった。そして,この日は満月だった。

「間に合ってよかったぁ……!綺麗ですね!」

「ええ。とても」


 何時間も,二人は空を見上げていた。


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