国外追放で転移する
リリスとギルバートはとりあえず,ホテルを決めた。
「部屋の数は幾つにしますか?」
「……」
リリスは「一」と言おうとしたが,カーティスの言っていたことを思い出した。
「えっと,二部屋…」
「一部屋で!!」
ギルバートがそう言って鍵を一つ貰った。そしてリリスの手を引いてエレベーターに乗った。
「ギルバートさん……?」
リリスがそう言うとギルバートは彼女を抱きしめて,話しかけた。
「僕は貴女のことが大好きです。だから…少しの時間でもいいから僕と一緒にいてください」
「いいですけど…私,そんな好かれるようなことしましたっけ?」
それを聞かれたギルバートは目を丸くした。そして笑顔で語り始めた。
「僕は出会って間もないですが。まずですね。優しく接してくれますし,尽くしたいって思えるような方なんです。貴女は」
「はあ…」
そんな会話をしていると,最上階の部屋の前に着いた。そして,リリスはホテルマンの人から貰った鍵で扉を開けた。
「わぁー!窓が大きい!」
「絶景ですね…」
二人が泊まる部屋は,星が最も綺麗に見える部屋だった。そしてある程度星を見たら早速,計画に移った。
「クレアさんが使った魔力量を考えるとあまり遠くまでは行っていないと思うんですけど…多分別の国ですよね。ここ。ギルバートさん,何か予想とかあります?」
「はい。なんとなくですけど…スターレンだと思います。付近の国でここまで星が綺麗に見える国はそこしか思いつきません」
「スターレン?」
「はい。マジェスティアや周辺の国は産業発展などの煙で空が見えなくなっているんですが,スターレンという国はなんらかの術式で十年前くらいから工場から煙が排出されなくなっているんです。お陰で『神の島』とかなんとかで観光スポットまでつくっているんですよ。うちの国の女王も全力でその術式を解析しているんですけどねー」
「へぇー…ん?」
⦅待って。十年前くらいだって…?それって確か…⦆
リリスには心当たりしかなかった。恐らく彼女の放った術式がスターレンにぶつかったのだ。
「リリスさんには術式の心当たりとかありますか?」
「……心当たりしかないですね」
そう言ってリリスは話を続けた。
「えっと,私が小さいときに『今の自分だったらどれくらいの距離まで飛ばせるかなぁ』って考えて適当に術式を放ってみたんです…星がよく見えるようになる術式を…」
「そんな魔術がなんであるんですか…というかどこで使うんですかそれ…」
「いやっ,私の使う魔術の中には惑星と接続して使用する魔術があるんですが,星が見えないと使えないので…」
リリス言うと,宮廷魔術師長であるギルバートは興味を示してきた。
「ほう…?僕は惑星と接続できるほどの魔力がないので詳しくは知らないのですが……具体的にはどのような術式なんですか?」
「確かに。私はそこのところ,あまり気にする必要はないんですが……惑星と接続すると周辺の国…二つくらい?は余裕で消失してしまうので。私の張った【結界】の中でしか使用できないんです」
ギルバートと魔術の話をしているとあっという間に時間が過ぎていってしまった。
「じゃあ,明日からこの国を探索していきましょう。それではおやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
* * *
「……リリスさん。リリスさん!」
ギルバートにそう言われて目が覚めたリリスはとりあえずカーテンを開けることにした。しかし,窓から見えたのは,まだ星の見えていた灯台だった。
「ギルバートさん。まだ夜だと思うんですけど……マジェスティアではこれが朝なんですか?」
そう言うと,ギルバートは驚いたような表情をしていた。そして,凄まじい社畜発言をした。
「えっ,睡眠時間って長くても三時間じゃないんですか!?」
⦅ギルバートさんの上司さんは鬼畜なんだなぁ……⦆
リリスは星の見える夜空の方を遠い目で見た。
「どうかしたんですか…?」
「なんでもないです。なんか…大変そうだなって。ただ…どうしてそんなに睡眠時間が少ないんですか?」
ギルバートは困惑しながら言う。
「女王様から報告書を押し付けられるんですよ。後は魔術の研究に,魔物の討伐ですね」
「なんか分かります。研究とか新しい術式の開発とか何日も費やせますよね…あと私の婚約者と国王陛下に責任を押し付けられて十枚くらい報告書は書かされましたね…」
そうして,街を歩きながら上司の愚痴を言い合いが始まった。
「リリスさんの上司も王族なんですか?」
「はい。私は元々,公爵令嬢だったので…」
そう言ってリリスはギルバートの袖を引っ張って耳を彼女の口に近づけた。
「(実は…私,一級魔術師なんですけど。国王に認定されているので学園に通いながら魔物の討伐とかやっていたんです)」
ギルバートは,大声で言った。
「えっ!?そんなにすごいんですか!リリスさんって」
「しーっ!一級魔術師ってあまり知られたくないんですよ」
少し立ち止まっていたが,二人は再び歩き出した。そして,付近の本屋でこの国が『星の国・スターレン』だということが判明した。その本屋で地図を買い,スターレンからマジェスティアへの行き方を考えた。
「ギルバートさんは一級魔術師じゃないんですか?」
「そんな簡単になれるものじゃないんですよ!僕だってまだ四級魔術師だし,三千年も生きている女王様だって二級魔術師なのに…」
つい国家機密を言ってしまったギルバートを三度見してしまった。
「マジェスティアの女王様って三千年も生きているんですか…?不老不死か何かで…?」
⦅三千年も生きているなら魔力量は相当すごいことになっているはず…それでも二級魔術師なんだ⦆
国家機密を話してしまったことに気づくと,ギルバートは焦って言葉を発した。
「わっ,リリスさん。今の言葉は忘れてください」
しばらく歩いていると,起きた頃にあった星は消えず,しかし日が昇り始めた。ちなみに二人はいつマジェスティアに到着してもいいように,ホテルはチェックアウトしている。一日ごとにホテルを変えるようにしている。
「あなた方は観光客なんですね!ここは星が消えない国なんです!他の国とは違って神に認められているんですよ」
⦅まさか神でも何でもない私がやったなんてねー…言えないよなぁ⦆
スターレン観光産業課の職員を名乗った男性から目を逸らし,足早にその場から立ち去った。ギルバートは早歩きでリリスを追いかけた。そして,スターレンの愚痴を言い始めた。
「所詮は僕たちの国の恩恵でしか経済が発展させられないような国なのに…」
「わー,わー。そんなこと現地で言っちゃだめですよー」
リリスがギルバートの前に立ち口をふさぐ。
⦅何事も起こらないといいんだけどなぁー⦆
少しフラグを建ててしまったリリスだった。
* * *
リリスがギルバートとスターレンに転移した頃,カーティスとクレアはスターレンとは違う国であるソルセリアまで転移してきた。
「クレアさん!?一体何をやっているの!」
「てへぺろっ☆いやぁ~いたずらって楽しいねぇ!正確に言うと,恋人同士を引き裂くこととか」
「可愛い子ぶったって僕は許さないからね」
そうしてカーティスは立ち上がり,近くにあった看板を見た。
「『魔術の国・ソルセリア』?そんな国,聞いたこともないんだけど」
首を傾げるカーティスとは裏腹に,クレアは喜びだした。
「うおっ!ついにソルセリアに転移できたのか。ラッキー!三千年生きた甲斐があったわぁー」
「三千年!?小母さん通り越してお婆さんじゃん!」
「うるっさいわねぇ…そういえば言い忘れていたけど,ここには魔術組織が沢山あるからー。気を付けてねっ☆」
そんなことを言った矢先,魔術が飛んできた。即座にクレアはカーティスも保護できる結界を張った。
「まぁ…こんな感じに魔術が飛んでくるらしいから気を付けてねー」
「は,はぁ…」
そしてクレアは言った。
「ようこそ!魔術の国へ!!」




