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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
霧の国・マジェスティア編
30/106

国外追放と魔導士

「はぁぁぁぁ…無事に入国できたぁ…」

 入国審査には魔力測定という項目があったが,リリスは使用する魔力量を抑えてなんとか審査を通ったのだ。

「お疲れ様ー。僕とジェイクは普通に入国できたけどリリスだけ長引いていたよね。何かあったの?」

「えぇっとね…なんか『本気を出していないだろう』って言われて…この国の宮廷魔導士長まで出てきちゃった」

 カーティスはそれを聞いて苦笑していた

「それは…災難だったね」

⦅あとで宮廷に来いって言われたんだよなぁ…何があるんだろう?適当なところで二人から離れないとなぁ⦆

 リリスはこの後のことを考え,少しため息をついた。

「リリス,何かあった?」


 ため息をついたのに気づき,カーティスが心配をしてくれた。しかし,リリスはカーティスを心配させまいと笑顔で「大丈夫だよ」と返した。

「ふっふふー…このマジェスティアで私,したいことがあるの!!」

「リリスが魔術以外でそんなに目をキラキラさせるなんて…」

 カーティスは少し落ち込んでいた。しかし,リリスはその理由が嫉妬だということに気づいていない。

「カーティスー。落ち込んでる?」

「落ち込んでないけど?全然」


 ジェイクは少しニヤけていたが,リリスには理由が分からなかった。

「で?リリスさんがしたいことはなんなのかな?」

 それをジェイクに聞かれたリリスは,目を輝かせながら言った。

「もちろん!『魔術師の生まれ変わり』の聖地巡礼だよ!作者さんはマジェスティア出身だから多分ここだと思うんだよねー」

 カーティスは目を丸くした。

「あっ僕も大好きなんだ!その本。王立図書館にあって見てみたら,めっちゃハマってさー…『魔術師の生まれ変わり』の作者ってここ出身だったんだ」

 リリスとカーティスがうきうきで話していると,ジェイクが独り言を呟いていた。


「あれ……俺だけ話についていけてない…?」


 少し時間が経ってリリスは宮廷に呼び出されていたことを思い出した。

⦅あっ,そろそろ抜け出さないとっ!⦆


「そうだ!ちょっと用事があるのを思い出したー!カーティス,『あの場所』に集合だよっ!」

「おっけー」


 リリスの言った『あの場所』とは,小説『魔術師の生まれ変わり』に出てくる伝説の場所だ。恐らく人気なシーン第一位にこの場所が出てくるだろう。

「はぁ…はぁ…宮廷ってここかな?」


 リリスは得意の方向音痴で宮廷内を迷ってしまった。初めて来た国の宮廷をリリスが知っているはずもなく,あっという間に三十分が経過してしまった。

「どーしよう…少なくともここではないことは明らかなんだけど」


 そう言ってリリスが前を見ると,監獄があった。宮廷魔導師がこんなところにいないというのは火を見るよりも明らかだった。

 リリスがどうしようかと悩んでいると,後ろから声が聞こえた。

「お姉さん,ここで何をしているの?」

 そう言われて後ろを見ると,十歳くらいの少女が立っていた。

「あの…宮廷魔導師の方がいる場所を教えて欲しいんですけど…」

 リリスがそう言うと,目の前にいる少女は怪訝そうな顔をした。

「こんなところにはいないけど…何をしにきたの?」

「あははー。まあこんなところにはいないですよねー」

 そう言うと,少女はさらに警戒を強めた。

「こんなところで何をしているのかと言っているのよ。もしかして死刑囚の脱獄幇助(ほうじょ)?」

「し,死刑囚!? …いやそんなつもりはないんですけど,宮廷魔導士長の方に呼び出されたんですけど…道に迷ってしまって」


 リリスがそう言うと,少女は少し警戒を解いた。

「まあ,真相は魔導士長に聞けばいいものね」

 そう言ってその少女は案内をしてくれた。

「ありがとうございます。えーっと…」

「クレアでいいわ。次に来る時は迷わないように」

「はーい……」

 クレアという少女と別れて宮廷魔導士長の部屋に入る前に疑問に思ったことがあった。

⦅あれ…なんでクレアさんは宮廷をぶらぶら出来ていたんだろう?⦆


 そもそも,宮廷に十歳ほどの少女が入れるわけがない。そして死刑囚などの危険な人達が集まっている監獄や国内で一番強いと言われている宮廷魔導士の部屋を知っているのも少し不自然だ。

⦅こんなことを考えていても今の状況が変わるわけじゃないからとりあえず『今』を乗り越えよう⦆

 リリスは,覚悟を決めて部屋に入った。

「失礼しまーす…」

 そう言ったリリスの目に映ったのは,大量の魔術書だった。次に,今までにほとんど見たことがないような魔道具の数々だ。

⦅わぁ!高性能な魔道具ばっかり!?……って,我慢我慢…⦆

 思わず口角が上がりそうになってしまったが,口の中を全力で噛み,にやけを抑えることに成功した。

「こんにちは。よくここに辿り着きましたね」

「あー…女の子に教えてもらったんです。十歳くらいの」

 リリスがそう言うと,魔導士長は目を丸くした。

「少女…ですか」

「その女の子を知っているんですか?」

 リリスがそう言うと,魔導士長はすぐに元の表情に戻り,「多分知らない人です」とだけ答えた。


「自己紹介が遅れました。僕の名前はギルバートと言います」

 ギルバートは会釈をし,話し始めた。

「早速ですが…リリスさんですよね?」

「はい…」

「えーっと,魔力測定の時に手を抜いていましたよね?」

「いやっ,抜いていないですけど…」

 リリスは斜め下を見ながらそう言った。それを聞いたギルバートは笑みを浮かべながら言った。

「僕の魔道具の中には本当の魔力を確認するものがあるのですが…本当にその数値ならば使ってもいいですね?」

⦅あっ,これ絶対にバレてるやつだなぁ…どこでボロ出しちゃったんだろう⦆

 諦めの笑いをしながら,明日の方向を向いていたリリスはギルバートの魔道具ので確認するのを許可した。


「それじゃあ,この石に手を置いてリラックスして下さい。…それでは」


 ギルバートは笑みを浮かべながら言った。

「【魔力鑑定】」

 ギルバートがそう言うと,石は発光して割れてしまった。それを見て彼は深刻な表情をしていた。

「ど,どうでしたか…?」

「……そんなまさか」

「あのー!」


 リリスが十回くらい呼びかけたことでようやく反応した。リリスと話す時には深刻な表情から元のにっこりした表情に戻っていた。

「リリスさんは魔女ですね」

 急にそう言われて飲んでいた水を(こぼ)してしまいそうになった。


「急に……!?」

「リリスさんの魔力を測って見たんですが…石にも測れないような膨大な魔力を持っているんですね。これは全力の女王でも壊せない程なのに」

⦅まずい……!?⦆


 ギルバートの目が殺気を帯びたかと思うと,一瞬で消えてしまった。

「大丈夫ですよ。僕もですから」

「……へっ?」


 リリスと同じと言われて何が何だかよくわからなくなってしまった。すると,ギルバートが概要を話してくれた。どうやら,ギルバートもこの石を壊してしまったようだ。そして謀反の恐れがあると監獄に入れられてしまったが,女王の勅命で最近に宮廷魔導士長になったという。


「リリスさんは何故この土地に来たんですか?」

「私は旅をしていて偶然ここに来たんですよ」


 少し談話をしていたが,処遇を気にしていたリリスはギルバートに尋ねることにした。

「あの……それで私ってこの後どうなるんですか…?」

 尋ねられたギルバートは笑顔で答えた。

「役職的に捕まえてないといけないんだと思うんですけど…魔力は平常ってことにしておきますよ」

 それを聞くとリリスは喜んだ。

「本当ですか!?ありがとうございます!」


 そう言って軽快な歩きで部屋を出ようとした時,ギルバートが話しかけてきた。

「僕が城の外まで案内しますよ」

「いいんですか?」

「はい。リリスさん,多分城の中を迷ったんでしょう」

 図星を突かれ,リリスは視線を泳がせていた。

「なんでわかったんですか?」

「約束の時間より一時間も遅かったですからね」


 ギルバートに城の外まで案内してもらいリリスはギルバートに感謝の言葉を伝えた。そして彼はリリスと離れた後に独り言で呟いた。

「あの子,可愛かったな…もっと話しておくべきだった…」


 門の前でしゃがみ込んでしまったギルバートだった。

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