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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
死者の国 ヘルヘイム編
15/106

国外追放で合流をする

4600字あります。

 リリスは起きて早々,困惑していた。


「おはよ…え?は?」


 リリスが指を指した先にはカーティスがいた。


「ふふふ…君の寝顔見れただけで満足だよ…」

「カーティスって顔いいし性格もいいのに変態だよね」


 二人が睨み合っていると,ヘルが起きた。


「うぅ…ふぁぁぁ…あれ,カーティス君?」


 カーティスは二人が着替えが終わるのを確認すると部屋に入って来た。


「突然だけどさ,リリス達は違和感を感じない?」


「いきなり何よ。けど,二日で四組の賊に襲撃されたわ。流石におかしいと思うのだけれど」


「襲撃……!?けど可哀想だよね賊の方も」

「一応被害者は私たちなんですけどね…肉塊に変えちゃいました」


 えぐいことするねえ,と苦笑いするカーティスの顔はリリスとヘルには見えていなかった。


「けど襲撃は意図があるだろうね…。ヘル,この死者の国にルールはある?」


 カーティスがそう尋ねるとヘルは回答を拒むような表情をした。


「多分だけど,この世界で一回でも死ねば君が本気を出さない限り生き返れないんじゃないかな?」


「……はい。ここは一度死んだら私でも蘇生(そせい)できなくなります」


 ヘルは悲しげな表情で窓を見ると覚悟を決めたのか,話し始めた。


「ここに入って来た時点で死んでいるというのは理解しているよね?」

「えっそうなの?」

「多分ゲーヘナさんが他の話と同じトーンで話していたから,自分の中でなかったことになったんだと思う」


⦅なるほど…だから会った人はあんなに哀れんでくれたのか⦆


 謎に理解するリリスだった。


「で,ここに来た生命は魔力がとても少なくなるのよ。カーティス君とリリスはなぜか減らないんだけどね」

「えっじゃあ,魔物と闘う時はどうするの?」

「リリスも闘ったでしょ?あそこの魔物と。魔物の魔力を吸収されるから互角なのよ」

 リリスの疑問に答えるとヘルは再び説明に戻った。


「で,【死】という過程(プロセス)を経ることで神の子,悪魔の子以外は魔力が減っていくのだけれど…二回目の死で人も魔物も魔力が無くなるの。そして魔力が消えた生命は復活させることが出来ない」

「なるほど。つまり話をまとめると,私達はもう一回死んだら終わり,となると私達がここの世界にいないと困る人が賊を雇った犯人……?」


 リリスは推測を立てて発言した。すると,カーティスもヘルも賛同した。


「そうだね。あと,僕も少し考えたことがあるんだけど聞いてくれるかい?」


 ヘルとリリスが許可を出すと,カーティスは話し出した。


「まず襲撃の黒幕なんだけど…僕たちが強い魔力を持っていて,ヘルの正体を知っている人間…つまりゲーヘナさんが怪しいと思う」

「優しい人なのに?」

 疑問を言うリリス違い,ヘルは何かに気づいたような表情をしていた。

「リリス,まずこの国は何で創られているか言ってみて」

「氷と霜と死者の魂じゃないの?…あっ」


「そう。魔力と違って魂は減らない。僕たちはなんでか他の人達よりも魂の色が強かったんだと思う。魂がなかったらこの国は成り立たないんだからヘルを屋敷に閉じ込めていたんだと思うよ。ゲーヘナさんがここにこだわる理由は分からないんだけど…」


「なんで!?あの屋敷は軍神の術式で出れなかったんじゃないの?ゲーヘナが言っていたわ」

「たぶんそれは嘘だよ。ゲーヘナさんも結構頭いいと思うし」

 リリスはそう言うとカーティスを向いて話した。

「仮にそうだとして証拠はあるの?それじゃないと訴えることが出来ないけど」

「あるよ。あと一つ必要なんだけど…とりあえず裁判記録がある。この中には裁判員のゲーヘナさん達五人の記録はないんだ」

「確かに私が任せている人間の名前が見えないわ」

「なるほど…?あと一つの証拠は何なのかな?」

「ああ。不正の証拠だよ。これさえあれば…」

「不正の証拠?魔物との戦闘でそれらしきものは見つけたよ?」


 リリスとカーティスとヘルは本の中身を見た。


《現世での懺悔》

 僕は罪を犯してしまいました。

各地で人間を誘拐して売り捌いていました。

この死者の国は氷と霜,そして死者の魂で出来ているそうです。

しかし,死者の魂……これだけは再現が不可能だったようでいろいろな死人が来ないとこの世界は滅びてしまう。

この世界はどうでもいい。あの少女……ヘルと言っただろうか?あの子は可哀そうだ。僕が寄り添っていかないと。寄り添っていかないと…



「……今見ればこの文字,ゲーヘナに似ているわ」

「私,ちょっと考えてみたんだけど…屋敷に閉じ込めていた理由って他の死者と会わせないようにっていう意図だったんじゃないかな?もし外に出て,誰かを復活させたいという気持ちが出てきてしまったらこの世界は破滅に近づく。それを許せなかったんだと思う」

「まあ,この通りなんだけど…実はゲーヘナさんに面会の許可を取っているんだ。今から行ってみよう?」


 * * *


 ゲーヘナの家は,質素で他の人の家と比べるととても小さいのだった。

リリスがドアを叩くとゲーヘナが出て来た。彼はいつもと変わらない表情をしていたが,カーティスを見て覚悟を決めたような顔に変えた。


「それで,何から話せばいいでしょうかね…?」

「リリス達を襲った理由を教えてください。なんで襲ったんですか」

 カーティスがそう言うと,ゲーヘナは笑顔で良いですよ,と言った。


「貴女様達を襲撃したのは,一回死んで欲しかったからです。それじゃないと魔力が消えませんから」

「なんでそんなに死者の(ヘルへイム)にこだわるのですか?あと,洞窟に隠されていた文書は貴方のものですか?」

「……はい。中を見たんですね。理由は簡単です」

 ゲーヘナは少し溜めると,また話し始めた。

「ここがないと,死んだ皆さんが可哀想です。ここがないと,霜の(ニヴルヘイム)か現世を永遠に彷徨(さまよ)うことになるんですよ。これは僕の……贖罪です」

「ゲーヘナ…」

「ヘル様。僕は現世でもこの世界でも罪を犯してしまいました。【地獄(ヘル)】に送ってください」


 ヘルは十分くらい考えていた。そして,結論を出した。


「あの四人も連れて来てくれないかしら?」

「あの四人…?」

 リリスは疑問に思っているとカーティスが裁判官のことだよ,と言ってくれた。


「貴女がヘル様なんですか…?」


 集まった四人のうちの一人が言った。アンナと言っただろうか。


「ええ。ヘルで良いわ」

ヘルはそれだけ言うと,椅子から降りて再び話始めた。


「貴方達は現世罪を犯していたんだね……けど地獄には行かせないよ」


 ヘルがそう言うと,この場にいた全員が驚いた。


「なんで!?この文書によるとこの人たち賄賂とかすごい受け取っていると思うんだけど?」

「まあ…次にそんなことをやったら地獄に行かせるけど…」


 ヘルはリリスの方を向いて言った。


「このまま地獄に行かせちゃったら裁判官にいい人材を見つけるのが大変になるんだよー」


 再び四人の方を向いて言った。

「流石に罰は受けてもらわないといけないけどこの世界にはいて欲しいんだっ!あ,もう帰っていいよー」


 四人は泣いて感謝していた。


「僕はどうなるんですか…?」

「ゲーヘナは……ゲーヘナもここにい続けなさい」

 ヘルがそれを言うとゲーヘナは怒った表情で言った。

「何故ですか!?僕はあの四人よりも罪深いです!地獄に行けと言うだけで良いんです。さあ!!」

「嫌だ!!ゲーヘナは行っちゃ駄目!!」


 ヘルが子供のように言うと,リリスとカーティスが付け足した。


「多分外に出ることが出来なかったヘルが飽きないで過ごすことが出来たのは貴方のお陰です」

「……」

「ヘルのためです。貴方はその罪をここにいるという罰で償ってください」


5分の沈黙を得てゲーヘナは話し始めた。

「……わかりました。ヘル様,永遠にお仕えさせていただきます」

「分かったわ。今度一緒に街を回りましょう!おすすめの場所に連れてってちょうだい?」


 そう言ったヘルの目は,好奇心で溢れたような色をしていた。


「……あ,こんな感動シーン中に悪いとは思っているんだけど…私達って帰れるの?」

「「「あっ」」」


 思い出したかのようにリリスを除いた三人がそう言うとまずヘルが慌て始めた。

「忘れてた!!あの蘇生術式2日かけないと組み上げれないんだった!」

「それは僕が手伝います。えぇっと,リリスさんとカーティスさんはここら辺でぶらぶらしていて下さい」


「結局こうなるんだね。後の二日もヘルと回りたかったのに…」

「ふふふ…まあ良いじゃん!これってデートだ……」

「殺されたいの?へぇそうなんだー【魔力分散】」

「あぁぁぁぁぁ!?ストップ,ストップだって!」


 殺されかけたカーティスと距離をとるリリスは死者の国の地図を見ていた。

「おー。こんなところにお土産屋さんあるよ!……なんで?」

「なんでだろうね。けど死者の国のお土産なんて地上で持っているのは僕たちだけになるだろうし,買おうよー」


 なぜお土産屋があるのか分からなかったが,とりあえず寄ってみることにした。心なしか,カーティスは疲れているように見えた。


「うわっ…ちゃんとお土産屋さんだ」

「いらっしゃいませー!色々売っていますよ。お菓子とか」

「おすすめはありますか?」

「はい!おすすめはこの氷菓子と,このネックレスですね…あっ!お揃いのキーホルダーもありますよ!」


「それは大丈夫です」

「ぜひ欲しいです」


 声が二つ聞こえた。

「これ要らないよね?もしかしてジェイクさんと?なら良いと思うけど」

「あっはは。リリスも分かってるくせにー。こういうの,つけてて損はないでしょ?」


 二十分ほどの口論の結果,霜と雪の結晶で出来たお揃いのキーホルダーを買うことにした。

「うぅ…これじゃあ恋人に見えるじゃん」

「それが良いんだよねぇ。ところでこれを地上に出しても溶けたりしないかな?」

「それは大丈夫ですよ!ヘル様の魔術で作った氷は溶けないで有名ですから」

 そう言った店員は再び明るい声で言った。

「けどこのキーホルダーと契約…つまり買った人間が死ぬと粉々になるらしいんですよー」

 すごい物騒な内容だった。リリスはカーティスと顔を合わせるとつい,苦笑いをしてしまった。

 カーティスは他に,クッキーとネックレスを買った。

 リリスは氷に苺や色々なフルーツを入れた甘味(スイーツ)を3つ買い,店を出た。


「クッキー美味しそー!ねぇカーティス,ネックレスは何に使うの?」

「実は…リリスにプレゼント♡」

「え,あ,ちょっと人違いかもしれません。ちょっと探しに行ってきます」

「僕がカーティスだよ?」

「……【黄泉への音】ちょっと頭冷やした方がいいかも」


 本気で引かれたカーティスは酷く落ち込んだ。それを見た国民は励ましてくれたが,それが更にカーティスの心を抉ってくるのだった。


 街を一通り回り終わった二人はヘルの屋敷に戻って来た。

「ただいまー。蘇生術式の調子はどう?」

「ゲーヘナが手伝ってくれたお陰で明日の朝には地上へ行けそうよ』


 ヘルの声にはノイズが聞こえた。


終わりが近づいていた。

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