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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
電脳の国編
106/106

国外追放と別れ

すごい長いです

「それじゃあ,またねー」


 リーシャに手を振られて,二人も手を振り返していた。今まで行った行動をセーブしてからゲームを切る。このゲームショップではセーブしたデータを店のVR機材で再現することが出来るらしい。そんなことを無料で行っていいのかとか思ったリリスは店員に聞いてみたが,二回目以降はきっちりと金を払わせるようだ。

 二人はさらに別のゲームで遊ぶことにした。ホラーゲームはリリスが選んでしまったようなところがあるので,今度はカーティスがゲームを選ぶことになる。


「これとかどう?剣と魔法の世界だって」

「なになにー……【愛の剣と魔法】……?安直すぎないかな」


 リリスはその時思っていたのだ。これ,乙女ゲームなんじゃないかと。もうタイトルに愛とか入れている時点で確定である。リリスは拒否しようとしたが,カーティスの目が完全に好奇心で支配されていた。恋愛ゲームではないことに賭けて,リリスはゲームを起動させた。


 視界に映ったのは薔薇の花びらだった。もう終わりだ。この雰囲気で恋愛ゲーム以外が来るはずがない。

 案の定,攻略する男達が出てきている。これ,VRでやる必要あったか?

 などとリリスは思っていたが,隣のカーティスを見てみる。完全に全員を攻略してやろうと意気込んでいた。操作は全部カーティスに任せようとしていたリリスが馬鹿だった。


「これ,どういう風に役分けするんだろうね」

「どういうこと?」

「つまり,乙女ゲームの性質上一人を大勢が愛する感じだからさ。二人いるとどうなるんだろうかなーって」


 前世でやったことがあるとカーティスに伝えると,彼は半眼でリリスを見てきた。どうしたのと尋ねると,


「リリスはその男達好きになってないよね?」

「もちろんだよ。というか私が人を好きにさせることが出来ると思ってるの?」


 カーティスは頭を抱えていた。そりゃあそうだ。彼はリリスが好きになったからプロポーズしたっていうのに好きにさせることができないとか言っているのだ。

 PVが終わり,操作画面に移動する。四月と画面には表示されていた。リリスはカーティスに操作を任せる。


『きゃっ!すみません……』

『ぶつかりましたねお嬢様。大丈夫ですか?』


 この会話の後,選択肢が出てきた。

①すみませんでした……

②無視してどこかへ行く

③もしかして,王子様ですか?

 王子という選択肢を見てカーティスはとても嫌そうな目で見ている。こういったものの小説も読んでいるらしく,無視してどこかへ行くを選択していた。

 リリスは驚愕する。普通,謝らないのかと。しかしカーティス曰く,ああいうキャラは自分を身分的に特別として見ない方が恋愛フラグが建つそうだ。前世でプレイしていたリリスよりも知識がある。


『始業式!?急がないとっ!』

『僕が王子だということを知らない……?不思議な人だ』


 カーティスは舌打ちをする。調子乗るなよとゲームの中の王子へ本当の王子が注意をしている,世にも奇妙な光景だ。

 始業式の時,魔力測定というものがあった。それはリリスが行うことになった。魔力測定の機械へ手をかざす。そういえば最近魔力測定していなかったなーなどと呑気に考えていると,徐々に会場が騒ぎ始めた。不正だとかなんとか。リリスは目を開けて魔力測定器の画面を見る。それには測定不能と書かれていた。


「あー……」

『おいお前!俺と戦え!』


 赤髪の男がそういった瞬間,バトル画面へ移った。カーティスはどこへ行ったのだろうか?辺りを見回しても見当たらない。

 どうやらリリスがいつも使っている魔術がゲームに引き継がれているようなので,文字通り秒で終わらせる。


『俺が負けるだと……』

「いや負けるのも当然だと思うけど」

『おもしれー女』


 来た。おもしれー女発言。少女向けの媒体でよく出てくるあるあるというやつだ。普通に会場へ戻ってきたので,リリスは辺りを見回す。カーティスがなんともいえない表情でこちらを見ていた。

 となると,プレイヤー1が選択肢を選び,プレイヤー2がヒロイン役となるのだろう。負けるのも当然など考えてもいなかった。カーティスがその選択肢を選んだとリリスは考える。


「なんだろう。恋人が他の男と一緒にいるのって不快だね」


 カーティスがデータをセーブし,ゲームを切り,VRゴーグルを外した。


 * * * 


 ノアはどこでリリスを殺すかを考えていた。本当は殺したくなどない。

 うろうろとしていると,実験中のため立ち入り禁止と書かれた看板があった。話を聞くと,異世界から人を転移させる方法を実験していたたらしい。なるほど,魔術を使用せずに転移をさせるのか,とノアは感心する。しかし,実験は難航しており,何より魂の別世界への移動が困難だと研究者は語ってくれた。

 魔術の出番だ。別世界の人の肉体をこの世界に留めさせる方法は研究者達が考えてくれている。ならばノアは魂を現世に堕す方法だけを考えればいい。


 これに関しては簡単だった。神を現世に呼ぶようにすればいいのだから。

 そして,一旦剥がした魂と肉体を再び一つにしてしまえばいいのだ。


 実際,これは成功した。少女を呼び出すことができた。研究者達に頼み込み,彼女を召喚したり元の世界に戻すためのボタンを作ってもらえることになった。その間,彼女とノアは話す。


「お名前は?」

「えーっと,ゲームでの名前だから……一葉です!ノアさんですよね?一回話してみたかったんです!マリアちゃんとはどうなっているんですか!?」


 ノアは苦笑する。マリアとどうなったかと聞かれてもほとんど接点を持たないのでどうしようもない。しかし,一葉はマリアのことを知っているようだ。その事実をノアは利用させてもらう。


「それが……リリスってご存知ですか?」


 ノアがリリスと言った瞬間に一葉の表情が分かるくらいに曇った。そして恨み辛みを愚痴る。


「リリス……本当に調子乗ってますよね。うちの友達は興味ないって言ってたけど,普通だったら嫌いになってしょうがないですよ」


 ノアの考えているリリスの評価とは違う評価をしているようだ。これならば,リリス殺害の件も了承してもらえるかもしれない。そう考えたノアは一葉の正面に立ち,頭を下げた。


「えっちょっ……」

「お願いします。殺害を依頼してもいいでしょうか?もし,人を殺すのが怖いなら大丈夫です。最後の一撃は僕がやりますから」


 そう言ってノアは高い塔を指差した。一葉が拳銃でリリスを数発撃ち,ノアがその塔からリリスを突き落とすことになった。別世界の人間が来たならば,相当油断するだろう。そこを突く。


 一葉こと,唯葉は懐から拳銃を取り出した。青白い光が漏れ出ている。有識者が見たならばそれが【神殺しの光】によって造られたものだということは明白だろう。マリーが作ったオリジナルが改造されて,今では高次元生命体全般を殺せるようになっていた。

 つまり,神の子であるリリスや幻想世界の住人,仙人の碧帝も殺害可能だ。


 もっとも,そんなことを唯葉が知っているはずもないのだが。


 * * * 


「こら,二人とも!!ゲームの人に迷惑がかかったって言っているでしょ!?」

「「ごめんなさい……」」


 リリスとカーティスはジェイクに謝っていた。なぜ運営側に謝らないでジェイクに謝っていたのかはわからない。しかし,殺気があったのだ。主に二人が行ったことはダンジョンボス狩り。それだけ見たら大したことではないが,MMOなのだ。

 しかも,そのゲームは最近発売されたので,ボスモンスターは死ぬと一日出現しないのである。そんなモンスターをリリスとカーティスはやったの数十分でほとんど仮尽くしてしまった。


「カーティスも。王位継承権やらのゴタゴタで今日には帰らないといけないんでしょ?」

「もう権利放棄しようかな……」

「カーティス,ローゼンタールをあのカリヤルが治めることになったらどうするのよ」

「やっぱり前言撤回」


 カリヤルは高等な教育を幼い頃から受けているというのに全然頭が良くないのだ。ゲーム内にもマリアが勉強を教えるシーンもあったか。

 人に勉強や魔術を教えられるくらいの技術はあるリリスやカーティスでさえも手を焼くほどだった。


 特に,魔術に関しては一級魔術師であるリリスですらも諦めたほどだ。総合魔術しか使えないとはいえ,魔術式の方はスラスラと解ける。前世の記憶を取り戻してからリリスはカリヤルに教えてみたが,全く手応えがなかった。


「じゃあ,僕も国に帰ったら表明しないとだよね」

「そうだね。大丈夫,私も支えるから!」


 ジェイクは馬車を用意する。し終わるまでは自由に街を回ってて,と言われたので土産物などを探し始めた。


「そういえば,ここってずっと雪降ってるよね。その割には積もっていないけど」

「あぁ,科学技術で溶けやすい人工雪を造って降らせているらしいよ。雰囲気いいじゃん?」


 カーティスはリリスの話を聞いてドン引きする。魔術でも氷を作ることは可能だし,なんならそっちの方が難しいのではないかとかリリスが思っていることは彼には秘密だ。

 街を歩いていると,あるポスターを見つけた。


『異世界の人と会話したくありませんか?』と,リリスは惹かれた。カーティスに相談すると,行ってらっしゃいと優しい表情で送ってくれる。

 リリスは膏薬を塗り,空を飛ぶ。碧帝は目を細めながらリリスに尋ねてきた。


「ねえ,罠なんじゃないの?普通,神様とかじゃないと転移できないと思うんだけど」

「碧帝が言っているならそうなんだろうけどさ,もし唯葉とかだったら嬉しいじゃん?」


 リリスはさらに上へあがって行った。

 そしてボタンが置いてあるのを見つける。好奇心で押してみた。すると,光が現れ,人が形作られる。その姿を見たリリスはとても驚いた。


「…………唯?」

「………………」

「唯だよね。わかるよ,久しぶり……っ!?」


 パァン!!という音がした。リリスは自分の腹部を見る。青白い光が出ていた。それが【神殺しの光】だということに碧帝しか気が付かない。それもそうだ。五十年に一回,国を移動するということを知っている。そしてリリスが華國に来た時に神殺しの光が同時に運び込まれてきたことも。最後の力を振り絞って,碧帝が神殺しの光だということを伝えてくれた。しかし,知ったところで何にもならない。

  何しろ,リリスは触れただけで死んでしまうからだ。

 再びパンという音がする。避けようとしたが,集中せずに当たってしまった。


「唯……なんで?覚えてないの?」


 そこまで言って,リリスはやっと気がつく。今は茉麻の体ではないのだ。乙女ゲームの悪役令嬢・リリスの体なのだ。それはゲームの主人公マリア推しである唯葉からしたら大層気に入らない存在だろう。

 拳銃をリリスへ向ける。そして最後の弾丸を込めた時,ボタンが押されて,彼女の姿が消えた。

 何が何だかもうわからない。なんで,今までいなかったはずのノアが目の前にいるのだろうか?


「リリスごめん……」

「ノア……?信じていたのに」


 ノアはとても傷ついているような,とても複雑な表情をしていた。リリスは動揺しながら,ただその場に立ち尽くしていた。ノアがリリスに近寄ってくる。そしてハグをした。


「ごめんなさい」

「まあ,何回か死んでるから慣れているけど……理由は話して欲しいかな」


 そこでノアは話した。家が没落して,カリヤル達の命令に従うことしか出来ないことを。


「そうだったんだ。じゃあ,私を殺してよ」


 ノアは本当に殺したくなかった。だから,端に立っていたリリスを少し押しただけだった。

 リリスは転落する直前で命を落とした。【神殺しの光】の痛みに耐えられなかったのだ。死者の国で買ったイヤリングはボロボロと崩れ始め,彼女が地面に打ち付けられた時には原型も留めていない。

 カーティスはその光景を見ていた。見てしまっていた。ぐしゃぐしゃになって下に降りてきたリリス。どうしてこんなことになってしまったのだろう?


「あぁ……」

「リリス!?」


 リリスが転落する音は大きかった。だから,追跡していたマリアにもそれが伝わった。マリアが警察署や消防署まで行って救急車を手配してもらう。その間,カーティスは一人だった。

 それは一瞬のことだった。グサリという感覚がし,カーティスが後ろを向くと,カリヤルが右手から黄金のナイフを出してカーティスに刺す。


 * * * 


 唯葉が目を覚ますと,ベッドの上だった。リリスの言っていた『唯』がどうしても気になっている。リリスも唯葉のことを知っていたようだ。そして,唯葉のプレイヤー名は一葉だ。唯なんてどこにも入っていない。


 気がついた。


「もしかして,茉麻だったの……?」


 それはあまりにも遅すぎた。


 * * * 


 二人が死んでから数年後。アリスとドミニクは死体安置所へ来ていた。ローゼンタールのだ。結局,カリヤルが国王となることが決まった。今はまだ安泰だが,あと十数年もすれば国の終わりも見えてくるだろう。


「結局,この薔薇の書に書かれている方法は二人じゃないと無理だったみたいよ。そういえば一級魔術師会議を盗聴していたのだけれど,エレーナって子,すごい泣いていたじゃない」

「そうだね。友達になったと思ったら死んじゃったもんね」


 二人のイレギュラーはリリスとカーティスの死体に触れ,


「「神のご加護が在らんことを」」


 とそう言った。

どうでしたでしょうか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字がありましたらご報告下さい。

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