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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
電脳の国編
104/106

国外追放とマリア

「カーティス,そろそろ行ってくるね。早めに帰ってくるから」

「うん」


 リリスはカーティスを見てそう言った。マリアに乙女ゲームの中でアシュリーが死ぬルートがあるのかを聞いてみよう。そう思ってホテルを出た。

 待ち合わせ場所であるスイーツ屋はホテルから近かったため,迷うことはない。リリスは早めに出たつもりだったが,すでにマリアはいる。

 リリスがマリアの方へ駆け寄る。彼女は微笑んでいた。


「マリア,ゲームの中で陛下が死んでしまうルートとかない!?」

「ないけどどうしたの?」


 マリアにアシュリーが死んだことを話した。すると,彼女は目を細めて考え始めた。

 なんとなく,答えが出たらしい。


「この世界はさ,もしかしたら誰かのゲームデータがバグってできた世界なんじゃないかな?」

「どういうこと……?」


 マリアは説明する。まずゲームの世界に最低二人が転生していることだって何らかのバグで発生していることかもしれないのだ。だとしたらゲームの筋書き通りではない展開になってもおかしくはない。

 そしてリリスに質問する。旅をしている途中で何か異変があったか,と。

 あまり違和感を感じていなかったリリスだが,これを乙女ゲームの世界だと考えると異変はいくらでもあった。


「攻略対象達が全然貴女を好きにならないとか?」

「そうなんだよ。まず異変一つ目」


 さらにリリスは考えた。乙女ゲームの世界なのに出てこない国の情報があまりにもありすぎると考えたが,それらの国は続編で出てくるそうだ。

 ならば死者の国や魔法使いの国やゼルセピナ達が住んでいた森や海底都市,幻想世界のような場所もあったのかと軽く引いていたが,全部クリアしたマリアは首を傾げている。

 これらの土地も異変と考えてもいいのだろう。


「あとは?」

「マリアが天然じゃないことくらいじゃなーい?」

「いや,そこ誰」


 マリアは平然とツッコミを入れた。彼女にも碧帝が見えているらしく,しかし面識はないようだ。

 華國という国はないのかとマリアに聞いたが,ゲームの時にはちゃんとあったらしい。


「だから,それは何なの……」

「知らない?華國神話の主神格なんだけど」


 碧帝は頬を膨らませる。どうやら,ゲームのときは男性だったそうだ。


「そうだ,忘れてたけどなんで洗脳かけたの?」

「本当にごめん。けど,この世界をゲームのままに進めないといけないなって気がして……」


 リリスが昔その理由を聞けば怒っていたかもしれない。人生を狂わせておいて何を言っているんだとか。だが,そんなことをマリアには言えなかった。マリアは彼女なりにこの世界のことを考えていた。

 考えていないのはリリスの方だ。それに気がついて徐々に世界を変えてしまったかもしれないことに対しての罪悪感に苛まれていく。


「大丈夫だよ。リリスはいろんな人を助けているんだから」

「え?」

「知らなかった?多分リリスの行ったところはほとんどゲームの中に出てきていると思うんだけど,始まりの国では女の子を助けて,それだけじゃない。魔物を倒したり,他の国ではいろんな人を笑顔にさせてきたんだよ」


 知らなかった。マリアはニコッと笑っている。嘘は言っていないようだった。さらにリリスを抱擁する。マリアはただ,不安になっているリリスを安心させたかっただけだ。

 学園で見ていたリリスの姿。それは確かに人気が出ないとおかしいような雰囲気を醸し出していた。実際,彼女の姿を見て,マリアも幸せになっていたのだ。

 しかし天啓が聞こえてきた。


『必ずゲームの通りに進めなさい。さもないとこの世界は壊れるでしょう』と。それは創世神の声だった。これを言った彼はどう思っていたのだろう。ゲーム通りに進めるということはリリスが死ぬか国を離れるか,どちらにしろ娘を悲しませることになる。

 マリアは比較的ましな国外追放を選択した。

 なのに攻略対象であるカーティスと付き合ってしまった。その時もマリアには天啓が聞こえてきた。


『残念ですが……もうじき終わりますよ』

「待ってください!そんな急に世界が終わるとか言われても」

『壊れると言っただけです。終わるわけではありません』


 神は言う。世界が壊れるとは,死ぬはずのない人間に死ぬ可能性が出てくることだと。

 ゲームの中では国外追放ルートを辿ったリリスは二作目には出てこない。どこかで平穏に暮らしていたのだろう。

 しかしそんな彼女も死んでしまう恐れがあるのだ。


 全力で守らないと__


「マリア,泣いてる?」

「ばっちり泣いてるねーどうかしたの?」


 リリスと碧帝はマリアを心配する。マリアは涙を拭ってリリスの顔を見た。


「それじゃあ気をつけて」


 そう言って二人は別れた。


 * * * 


 ホテルに到着し,鍵を開けるとカーティスがリリスの手を握り,気がつけばホテルの外へ出ていた。


「すごい元気そうだけど……」

「父上が死んだくらいで落ち込まないようにしなきゃって思って」


 父親が死ぬのは『くらい』ではないと思うが。カーティスが明るくなっているのを見てリリスは微笑む。

 カーティスの笑顔は無理に作っている笑みではない。好奇心からくる笑みだった。

 確かに,この国は日本よりも進化していた。リリスも驚いているくらいだから何も見たことのないカーティスにとっては新鮮そのものだろう。


「リリス行こうっ!!」

「どこに行くの?」


 沈黙の後,二人は自然と歩き始める。リリス達の旅では無計画が基本だ。それは二人も理解しているので,息が合ってほぼ同じ速度で歩き始めた。

 しばらく街を回っていると,特に気になる場所を見つけた。『新作VRMMO是非無料で遊んでみませんか?』というものだ。VRはリリスも前世で遊んだことがある。視界がリアルで,戦闘ゲームをした時にとても興奮した記憶がある。

 カーティスもそれに興味を示し,二人で遊んでみることにした。

 店にはVRMMO以外のゲームもあるらしく,まずはおすすめのVRゲームを遊ばせてもらうことになった。


「これを装着すればいいんだよね?」

「そうだね。これで画面酔いをしなければ他のやつも出来るかな」


 リリスはカーティスの顔を見る。ゴーグルを装着されてあたふたしている彼の様子はとても絵になっていた。

 リリスもハッとしてすぐにゴーグルを付けた。その瞬間,画面が黒から切り替わって灰色と赤の画面になった。 二人は目を点にする。そこには『幽霊屋敷』と書かれていたからだ。カーティスは顔を青くする。リリスはカーティスの方を見て,焦って話しかけた。リリス自身は特に怖くもないが,彼はびっくりするほどに幽霊関係が苦手なのだ。


「どうする?やめておく?」

「……いや。克服するためにも頑張るよ」


 ゲームのホラーは現実の怪奇現象よりも怖い。こんなので克服どころかトラウマになる人は少なくないとリリスは知っていたが,せっかくホラーゲームに挑戦しようと言っているのだ。止める必要はない。

 早速はじめるというボタンを押す。すると,二人は暗い空間に放り込まれた。どうやら,ゲームが始まったようだ。二人はボタンを操作して歩き始める。カツンカツンと鳴り響く音。ヒールのようだが,リリスもカーティスもヒールなど履いていない。

 カーティスは恐る恐る後ろを見ようとする。リリスはそれを止めた。二人は画面の右上を見た。絶叫度と書かれている。恐らく,一定の数値を超えたらゲームオーバーなのだろう。しかし,カーティスの好奇心は止められなかった。


「うわぁぁぁぁぁっ!?」

「カーティス大丈夫?……あ」


【GAME OVER】という文字が二人の画面に現れた。カーティスはしゃがんで怖がる。

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