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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
電脳の国編
103/106

国外追放で女子会をする

 四人はさらに歩いていくと,行列になっている店を見つけた。どうやら,若者に人気のスイーツ屋だという。

 リリスも甘いものは大好きだし久しぶりという感情もあったから行列に並ぼうと提案する。他三人も異論はないようで列に並んでいる間,楽しく会話した。


「そういえばアリサ,洗脳が解けたってことはまたイワンさんと付き合い始めたの?」

「なんで合っているんですかっ」


 イリーナとマリアはニヤニヤとしている。アリサは隠していたようだが,普通にバレているようだ。リリスが尋ねてみると,仲良くはしているらしいい。学園時代のあのイワンの惚れっぷりからすると何と無く想像ができる。

 焦った様子をするアリサが今度はリリスに話題を振ってきた。リリス様こそどうなんですか,と。


 動揺する。今振り返ってみれば結構いちゃついていた気がしなくもない。結婚することは言っても良いのかなどと考えていると,マリアが呆れた様子でリリスの左手を指差した。その薬指には指輪がはめられてあった。イリーナとアリサは知っている。あれは王族がプロポーズするときの指輪に近い。三人は知る余地もないが,大和国で買ったものである。

 イリーナが机を叩いて席を立つ。アリサは目を丸くしてリリスを見た。


「もしかして結婚したんですか……?」

「まだしていないけど,国に帰ったらするつもりよ」

「うわぁぁぁ!?おめでとう!」

「イリーナちゃんうるさいよ」


 マリアは冷静に注意しているが,完全に口角は上がっており,上機嫌だ。

 リリスが照れながらプロポーズの時のことを話すと,三人は幸せそうな目でリリスを見てくる。


 ここまで話してやっと頼んだスイーツが出てきた。リリスはいちごタルトを頼んでいる。一番好きなスイーツだが,他の国では見たこともなかったので食べることができて嬉しい。


 アリサはマカロン,イリーナはティラミス,マリアが和菓子を取り入れたアフタヌーンティーを頼んだ。三人は出てきた商品や店員を見て唖然とする。まず,注文や席までスイーツを届ける,会計担当が店員がロボットだというのも驚きだったが,それよりも驚いたのがスイーツそのものだ。

 マカロンは普通のものよりも二回りくらい大きく,ティラミスは普通だったがアフタヌーンティーはとても斬新で,転生前に和菓子を食べたことのあるリリスとマリアはあまり驚かなかったが,アリサとイリーナは怒ってさえいた。


「これはなんですか,侮辱ですか?」

『大和国というところかラ伝来したものをアフタヌーンティーというものに変えてみたんデス。毒はナイのでお食べくだサイ』


 リリスは大和国と聞いて少しだけ悲しくなる。そんなことは知らずに三人は食べる。最初に感想を言ったのはイリーナだ。


「なにこれ!?美味しいんだけど!」

「苦味もうまく使っていますね……今度料理長と一緒に研究してみましょうか」

「ちょっと二人ともそれ私が頼んだんだよ」


 本気で二人を止めているマリアを見て,リリスは苦笑する。いちごタルト食べ終えるとリリスがマリアの最後のわらび餅を取った。マリアは目を細めて頬を膨らませるが気にすることではない。


 * * * 


 店を出ると,目の前に人混みができていた。聞き覚えしかない声が聞こえてきてまさかと思い,リリスはその人混みの中へ入る。案の定,カーティスとカリヤルが口論をしていた。

 なにしてるの……と声をかけようとしたが,あれだけ怒っているカーティスも珍しいので観衆に隠れてじっと見つめる。


「だから,訂正しなさい」

「しないですよ。だって,事実ですから。どちらが後を継ぐのか楽しみですね?」


 カーティスの視線がさらに冷たくなる。気がつけば攻略対象全員で二人の喧嘩を止めようとしていた。決闘になりかけていたからだ。リリスは文化祭の決闘大会で経験済みだが,王子のカリヤルを怪我させると罪になりかねない。今の場合だと相手であるカーティスも王子なのでなんの問題もないのだが。

 しかし,攻略対象達はその事実を知らない。知らなかった。


()()!いつからあんな女に騙されているんですか!」


 あ,と本人であるカーティスが言う。事情を知っているリリスとマリアとジェイクもだ。そして,それ以外のその場にいた人々は驚愕した。カリヤルが大国であるローゼンタールの第三王子だということはほとんどの人に知られている。

 第一王子も違うので第二王子しか候補がなくなる。

 カーティスが王子だと判断した瞬間,全員が跪いた。彼は混乱している。まさかカリヤルが口を滑らすとは思ってもいなかったのだろう。それからカリヤルを睨んだ。殺気に満ちた視線。普段カーティスはそんな目をしたことがなかったのだろう。カリヤルはとても罪悪感に満ちた顔をした。


 カーティスに笑顔などなかった。あったのはリリスの見たことのない,冷酷な顔だけだった。カーティスはジェイクの手を引き,行こうとだけ言ってどこかへ消えてしまった。


「リリスはあの人が王子って知っていたの?」

「うん……」


 イリーナも,以前の雰囲気とはまるで違うことに気がついたらしく,怯えていた。本当に殺気を纏っていた。


⦅夜,何があったのか聞いてみよう⦆


 その夜にカーティスから重い話をされるのをリリスは知らない。


 街を回るなどという雰囲気ではなかったので,リリスは他の三人と別れた。マリアには明日,スイーツ屋の前で待っていてとだけ伝えてカーティスがチェックインしてくれたホテルに向かう。

 鍵をもらい,扉を開けるとカーティスが寝ていた。突然正体を明かされて疲れてしまったのだろう。

 リリスは彼の頬に触れる。とても滑らかだった。話を聞くのは明日の朝にしよう,そう思っていた時,カーティスが目覚めた。


 彼は微笑む。


「おかえり。今日はどこに行ったの?」

「えーっとそうだ。明日はマリアと一緒に探索してもいいかな?」


 カーティスは目を細める。リリスは慌てて詳細を付け足した。マリアも同じ転生者であること,なぜ国に洗脳なんてかけたのかということを明日話すと言っていたと。

 すると,カーティスがリリスを抱き寄せた。


「いいけど,危ないと思ったら逃げてね?」

「私が危ないと思うことって世界が滅びることくらいだと思うんだけど……」


 リリスが言うと,カーティスは笑った。やっと本題へ入る。


「あの……なんであの時,カーティスは不機嫌だったの」

「?」


 カリヤルと口論していたところを見ていたと伝えると,目を丸くした。そして顔を赤くする。どうやら,リリスと父親,兄以外の人と話すときはいつもああいう雰囲気らしく,あまり見ないでほしいとのことだった。

 しかし,今回はそれ以外にもあった。


 アシュリー・ローゼンタールが死んだ。


 リリスは目つきを変える。カーティス曰く,玉座の間で刺殺体として見つかったらしい。カリヤルの婚約者として小さい頃にあったことがあるが,あの時から見た目が一切変わっていなかった。しかもリリスの処遇を国外追放で抑えてくれた恩人なのだ。

 胸が痛くなる。目の前をみると,カーティスがポロポロと涙を落としていた。

 リリスは彼を抱擁した。すると今度は声を上げて泣いた。


 リリスにはどうすることもできなかった。本当は明日もずっとこうして付き添っていたかったが,マリアとの約束があるために一緒にいることができない。


「カーティス,私はずっと味方だよ」


 リリスにはこうやって言うことしか出来なかったのだ。カーティスには申し訳ないが,彼の言い方からすると犯人は見つかっていない。少し考えるとしよう。


 * * * 


 アシュリーはちょうど薔薇の国から帰ってきたところだ。久しぶりに子供と会えて嬉しかった。

 疲れて眠ろうとする。エルモス砂漠は世界で一番広い砂漠だ。越えるのに何週間もかかる。電脳の国へ辿り着いた時に謎の島々が現れたそうだが,考えるのは明日にしようと思い,玉座に座った。

 今日は第三王子であるカリヤルに呼ばれている。正直,アシュリーにとってカリヤルはとても苦手だった。上の二人とは違い,傲岸不遜のような性格だ。おまけに要領も悪い。


「父上,疲れているでしょうにすみません」

「いいよ。それで用件は何?」


 カリヤルの右手から黄金のナイフが現れた。そうとも知らずにアシュリーはカリヤルに背中を向けている。


 グサリという感触があった。アシュリーは自分の胸部を見る。そして血を吐いた。


「マリアに愛されるためにはこれくらいしなくてはならないので」


 アシュリーは苦しそうな目でカリヤルを見た。

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