国外追放と砂漠Ⅱ
「完成したーっ!!」
「おぉー」
リルの家を訪れてから二時間,意外と早くに完成したそうだ。リリスもその結界へ魔術を試し撃ちしたが,びくともしない。リルはリリスを見る。そして,
「一緒にいた彼はどうしたのかな?」
「獣人居住区に行くときに怪我をしてしまいまして……」
リルは驚いている。そして椅子から立ち上がり,迎えに行こうと言った。
曰く,結界を張ったときに住民以外がいるとその人は地上へ転落してしまうそうだ。リリスとしてもそれは困る。頷こうとしたときだった。
扉が壊れた。その先にはアリアンがいる。そういえば付き合っているんだっけと納得しているリリスとは裏腹に,当事者であるリルは理解出来ないでいた。
「なんでいるの?」
「連れ戻しにきたよ。どうせみんな歓迎しないだろうけどね」
嫌だーとリルは駄々を捏ねている。リリスが半眼で見ていると彼はハッとして今は行けない理由をアリアンに伝えた。
すると,アリアンは素直に頷いてついていくと言った。
「ついてくるの……?」
「まあ,リルだけじゃあ普通に追い返されるだけだろうし」
リリスはリルがどんなことをしたのだろうかとすごい考えていた。
南の方へ行くと,やはり上昇気流が発生している。しかし,フリューゲル二人はなんの躊躇いもなく飛んでいく。リリスも事前に調合した膏薬を塗り,飛んで行った。
リリスは少し遅れてしまい,着いた頃にはリルとアリアンvs獣人みたいな状況になっていた。
「だからー。人間は実験に使わないって!」
「どうせ実験じゃないとしても生物観察でもしたいんだろ?」
リルは否めないでいる。ということは少しは観察したいのだろうか。
地面に降りて事情を聞こうとすると,猫耳男が駆け寄ってきた。
「あの男,カーティスさんを連れ去ろうとしてましたよ!そうだ,連れてきますね」
「まあ,リルは獣人たちに色々としちゃったもんね」
アリアンが呆れながら言う。何をしたかとリリスが尋ねると,獣人なら誰でも持っている治癒能力がどれくらいなのかを確かめるために島を焼き尽くしたり,結界を作るために獣人の種族長を誘拐して殴らせたりなどだ。
恨みを買っても仕方がないだろうとはリリスも思った。
少し時間が経つと,カーティスが見えてきた。そして彼はリリスの方へと全力で走る。
「カーティス,大丈夫!?どこ怪我したの」
「地面に頭打ったらしいんだけど……」
「種族長の治癒は他人にも使えるからね」
「えっ,そうなの!?見せて見せてー」
興味津々なリルは無視する。リリスの影からディアナが現れた。そして,時空を歪めてエルフも。
その様子を見たリルが詠唱した。広大な大地が光に包まれていく。フリューゲルも,エルフも,獣人も,妖精も。リリスとカーティスだけはなかった。
「それではお元気で。もし,困ったことがあったら言ってくださいね」
その場にいた全員が二人に手を振った。
* * *
「わぁっ,急に空!?」
幻想世界が消えたと思ったら目に映ったのは砂である。二人は急いで飛行術式を展開する。
無事に地面に降りることができた。そして,再び歩き始めた。
この砂漠を越えたら電脳の国に辿り着くとグレムリンは言っていた。そして,ジェイクによると電脳の国はローゼンタールの隣にあるそうだ。
だとすれば,そこが最後の目的地になるだろう。国へ帰れば忙しくなりそうだ。
「カッパドキア奇石だ……」
フリューゲル居住区近くにあったのは地上のものだったと初めて知った。気球が浮いているが,暑さでやられそうだったので先に進む。
魔女術はとても便利だった。冷やしたい部分に膏薬を塗って詠唱したら冷えていく。そして専用の薬を指に塗って指先に魔力を集中させると高威力の術式が放てた。
魔力の放出を補助してくれる薬なので,半分の魔力でも十分だ。
「リリスそんなの使えたんだねー」
「ふふっ,妖精のところで教えてもらったんだよ」
カーティスも模倣魔術で再現しようとしたが,途中で諦めてしまう。
そんなこんなでラクダを見つけ,歩きに比べると大分楽になった。余裕が生まれたからか,二人は次に行く電脳の国についてある程度予想を始める。
「カーティスはどう思うの?私は予想できているけど」
「僕は……ロボットがたくさん住んでいたあの国に近いんじゃないかなって思うよ」
「私的にはあれよりも何十年か進化した感じかなって思うよ」
二人はさらに進む。夜が来れば進むのをやめて火を起こして二人で過ごし,朝が来れば再び進み始める。
そんな風にしていたら幻想世界を出てから二週間ほどが経過した。ついに,大きな門を発見した二人はそこへ駆け寄る。
二人でタックルしてもびくともしなかったので,今度は魔力を放出する。本当に極暑極寒の砂漠から出たかったのだ。
放出しようとすると,扉が勢いよく開き,人が雪崩れ込んできた。リリスが顔をよく見る。見知った顔しかいない。
「ジェイクさんにアリサにイリーナ!久しぶりー」
「聞いてよリリスさん,この第三王子が本当うざくてさー」
「しょうがないよジェイク。だって,あの愚弟だもん」
そう,雪崩れ込んできたのは聖女組とジェイクだった。リリスからしてみれば,なぜジェイクとマリア達が一緒にいるのかが分からない。理由を尋ねると,ジェイクにも分からないとのことだ。
そして,カーティスは上を見上げる。晴れているのに雪が降っている。ジェイクがそれが人工雪だということを教えてくれた。その上をさらに見てみると,緑色の電気で結界のようなものが張られている。
リリスは街を見た。前世のアニメやゲームでしか見たことのない世界観。全てが科学技術で作られており,魔術の介入する余地など微塵もなかった。
電脳の国,その名に相応しいような国である。
「お嬢様,一緒に回りましょう。私たちも今日ここにきたばかりなので」
「アリサだけじゃなくて私も入れてよねー」
「駄目ですよ。今日,リリスは僕と回る予定なので」
アリサ,イリーナvsカーティスが始まろうとしていた。リリスは久しぶりだからとアリサ達と一緒に回ることをカーティスに提案する。ひどく落ち込んでいたが,許可してくれた。
「ねえリリス,どこ行く?」
「……待って」
後ろから声がした。マリアだ。どうしたの,とリリスが尋ねる。
「私も……私も一緒に行く」
マリアがリリスの袖を引っ張って言ったものだからカリヤルとセシルは動揺していた。
こんな悪女と一緒に回りたいのかなど云々。それらをマリアは一喝してリリスの背中を押した。
* * *
「まずは国中をリリスが悪女って認識にさせてごめんなさい。理由は後で話したいんだけど……」
謝罪したマリアがチラチラとアリサ,イリーナの方を見ている。おそらく,リリスの元の世界関連のことだろう。聞いておく必要があると感じたリリスは明日をマリアと二人きりで回ろうと考えた。カーティスには申し訳ないが,明日も回れそうにない。
「リリスはさっきの人と付き合ってるの?」
「ま,まあ……?」
歩きながらイリーナが興味津々な様子で聞いてきたので,リリスが少し照れながら答えると,四人の間には衝撃が走った。
「(あの鈍感でしかないリリスを惚れさせるとかやばくない?)」
「(えぇ。しかし,お嬢様も楽しそうなのでいいのではないでしょうか)」
アリサとイリーナが話していたところを見て,マリアはリリスに耳打ちをする。
良かったね,と。そう言ったマリアの表情はどこか寂しそうなものだった。
どうでしたでしょうか?
百話を超えることが出来て嬉しいです。
やっと電脳の国ですね。
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