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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
幻想世界編
100/106

国外追放と獣人

「おかえりなさぁい……ってフェイ様!?」

「やっほー若いの。厄災を使いこなせないでいるんでしょ?」


 フェイはブリギットを見て,少し嬉しそうだった。逆に,ブリギットは彼女の首にフェイの腕が回されているので痛くて嫌がっている。だが初代種族長だったからなのか拒否するようなことは言っていない。

 その二人の様子を見たリリスは話しかけて良いのかとても迷っていた。

 するとフェイから話しかけてきた。


「リリスちゃん,私を解放してくれてありがとうねー。ブリギットちゃんと特訓するから聖水もらって次の種族に行ったら良いよー」

「待ってください!私するつもりないぃ……」


 ブリギットはリリスに聖水の入った瓶を投げつけた。それを見事受け取ることができたリリスはメモとカーティスの手を握ってにっこりと笑う。

 二人は千年樹の方へ戻りそこからリルのいる中央都市へ戻った。


 家をコンコンとノックすると召使が扉を開けてリリスが手に持っていた聖水と上位精霊を受け取って次の指示を二人に出した。


《欲しいもの》

一,獣人の種族長の皮膚

一,心眼

一,狼男の首

一,教会で採掘できる魔石


 なんか多くない?と思ったのはリリスだけではなかったらしい。カーティスもそのメモを冷たい目で見ていた。しかも他の種族とは違っている部分があった。それは奪ったら体に支障を及ぼす可能性のあるものが含まれていることである。

 皮膚は置いておいて,心眼なんて重要そうでしかない。


 獣人居住区は南の方にあると地図に書かれていた。しかしそこには足場がないように見える。飛行術式で行けてしまうだろうなどと考えていた二人は絶望を見ることになるのだった。


「ここかぁ……やっぱり島なんだね」

「飛行術式使うか……使えない?」


 本土と獣人の住んでいる島の間には強い上昇気流が発生していることに気がついた。これでは飛行術式で飛んだとしても上に吹っ飛ぶ未来しか見えない。

 魔力を踏み台にしようと考えたリリスは何もないところに一歩足を踏み入れた。

 その瞬間に自分の周りに浮いている魔力を固めてそれを繰り返すことで島を渡り切ることができた。

 そこでリリスはふと後ろを見てみる。カーティスがいなかったのだ。目を細めて本土の方を見ると,ポツンと立っているではないか。

 リリスは慌てて引き返し,カーティスのいるところへと戻ってきた。よく考えてみれば魔力を操るというのはとても高難易度だしリリスみたいに総合魔術専門じゃないとできないようなものだ。


「カーティスごめんっ!」

「どうしようね……あっちまで渡れないし」

「なんか前,周辺の水蒸気を一気に固めて氷にしてそれで足場をつくるみたいな裏技を見たことあるんだけど」


 もうやったよとカーティス。水蒸気にまとまりがなくて一つ足場をつくるだけでもとても時間がかかるらしい。本格的に方法がなくなってきた。

 リリスは一つだけ思いついたが,それを許可してくれるかどうかは分からない。


「リリス,なんか思いついた?」

「まあ……」


 そう言ってリリスはカーティスにそのアイディアを伝える。とても不服そうだったが獣人の島に行くためには仕方がないと悟ったのか,頷いた。

 リリスはカーティスを抱えた。リリスが抱えたまま島に行こう大作戦(?)だ。半分まで来たところでカーティスの顔を見た。見てしまった。それで集中できなくなり計算してつくった魔力の足場が消えてしまった。


「わっ!?」


 急なことだったのでリリスは目をつぶる。しかし,一向に地面に転落したような感覚が来ない。恐る恐る目を開けると,既に島を渡り切っていた。

 どういうことかと上を見上げると,ケモ耳の男が心配そうにリリスを見ていた。


「大丈夫ですかっ?」

「はい……貴方は……?」


 男はケルンと名乗った。獣人の種族長を務めているそうだ。素材集めの依頼をしようとしたリリスはその前にもう一度辺りを見回す。


 カーティスがいない。


「カーティスはどこですか!?」

「彼なら俺の家で寝てますよ。貴女は怪我なく助けれましたけど……」


 ケルンの話から察するに,結構な怪我があったらしい。落ち込んでいるリリスだが,早く幻想世界を守っている結界の補強をしないといけないのも事実だ。


「あの,お願いなんですけど。皮膚と心眼を頂けますか?」


 ケルンは快く引き受けてくれる。その場で懐からナイフを取り出して肌を引き裂いた。

 リリスが心配そうな目をしていると,ケルンが厄災の一つで一瞬で治せると言う。

 そうこうしている内に心眼ももらい,リリスは教会へと向かった。ケルンがカーティスの看病をしてくれるらしい。


 * * * 


「人狼がこの中にいる!」


 教会に入った途端にその惨状だった。金切り声を出している兎耳の女に,人肉(?)を食べている犬耳の二人組。挙げ句の果てには全員で死んじゃいましょうよ,なんて言っている狐耳の狂人さえいた。

 まだましそうな人にリリスが聞いたところ,やっと追い詰めた狼男が教会へ入っていき中を見ると既にこの状況になっていたそうだ。

 つまりは人狼ゲームである。


 こっそりと魔石を採掘した後,狼男の首も手に入れるためにリリスは推理を始めた。


 まず容疑者としては兎耳の女,犬耳の男二人組,狐耳の女,猫耳の男,そしてリリスである。この現場にいる以上,リリスも容疑者になってしまう。


「じゃあここに一番最初に来た人は手を挙げてください」


 兎耳の女が手を挙げる。しかし,彼女が教会に来たときには既に被害者は倒れていたらしい。兎耳が嘘をついているか,狼男が襲撃を終えて教会のどこかに潜伏していたかのどちらかである。

 全員に教会に来てから部屋を出たかをリリスは尋ねた。

 まともな猫耳男だけが外に出ていないらしい。ならば彼は人狼候補から外して良いだろう。


 人狼ゲームが得意だったはずのリリスは迷っていた。元の世界でやっていたあれはあくまでもゲームだったし皆まともで進めようという意思があったのだ。しかし,現実に人が死んでその殺人鬼が潜んでいるとなったらまともに行動できるはずがない。

 ふと考えてしまった。


 確かに人狼はここにいるかもしれない。リリスもそう思う。しかし人狼は容疑者の中に入っていないのではないかと考えた。

 リリスは死体の方を見る。確かに酷く損傷していたが,メモを見たケルンからは狼男は再生能力が高いから首を即座に斬れと言われた気もする。


「あの……二人組さんがその死体を食べ始めたのっていつですか?」

「三日くらい前よ。それより皆で死んだ方がいいでしょう?」


 狐耳の女を無視する。三日前ならば結構減っていても良いはずだ。

 リリスは死体の方へと近づく。【仮想兵器】で日本刀を造り,それにレーザー光線と月の術式を組み込む。

 レーザー光線に関しては完全にリリスの趣味だが,狼男は月が出たときに本当の姿を現すという逸話があったはずだ。フリューゲルの術式でもあるので効果は倍増すると考えた。


 事実,狼男の首が焼き切れた。猫耳の男がリリスに駆け寄ってきて苦笑した。


「ケルン種族長に護衛を頼まれてたけど,いらないかなぁ……」

「?」

「もう集めるものは何もないんですよね?だったらリルさんに渡してきてください。僕たちが彼を看病しますので」


 リリスはそう言われたので,狼男の首を持ち,魔力を固めて本土へ渡った。

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