国外追放で旅が始まる
「スチュアート公爵家令嬢リリス!お前は我が愛しの聖女マリアをいじめた!この罪はとても重い。よってお前の爵位の剥奪,国外追放の刑に処し,俺との婚約を破棄する!!」
そういった男は隣の女の頭を撫でながら別の女にそう言った。
わかっていた…この世界には,この私にはこの選択しかないのだ。けど…
(ふぅ…今まで婚約破棄フラグ建てて来た甲斐があったわぁ…けど死ぬ可能性は潰しておいてよかったぁ…)
彼女は前世の記憶を持ち始めて早十一年,昔やっていたゲームの知識を使い処刑フラグを必死に回避していたのだ。
(そろそろ聖女さまと陛下の恩赦で国外追放も軽くなるはずだしそもそも私あんまりあの子いじめてないしね)
「何をぼーっとしている。反応しろスチュアート!!」
「カリヤル様,リリス様が可哀そうです…国外追放はやめてあげましょうよ!」
「聖女マリア,その気遣いはいらないわ。こんな男のいる国なんてまっぴらごめんだわ。」
「ですが…」
そう,公爵令嬢はこの国が大嫌いだったのだ。大嫌いで早くこの国から逃げ出したかったのだ。
だから。
彼女は国外追放という道を選んだのだ。
「わかりましたわ。明日にでもこの国を出て行きます。」
次の日の朝。
私は王城にある謁見の間に来させられた。
「陛下,この私めに何か御用でしょうか。」
「ついさっき君の国外追放が決まったよ。あと爵位剥奪と僕の息子の婚約破棄もね☆」
「はぁ…でしょうね。」
「しかし僕はキミのことを意外と気に入っているんだ。だから…」
なんだろう。とてもいい予感しかしない。
「国外追放(笑)の旅をさせてあげよう☆きみィあんまりあの聖女の子のこといじめてないでしょ~」
「国外追放(笑)ってことは一応,国外追放だという意思はあるんですよね?」
「ああ。一応見張り役」はつけてある。僕の恩赦ってことで反逆とか見張り役から逃亡を図ったりしたら即拘束からのこっちへ送り戻しだから~」
「はい。絶対にそんなことはしません。国王陛下」
そう言って追放の支度を始めるために馬車で送ってもらおうとした。
こうして転生少女の旅が始まる。
いろいろな出会いがあり,別れがあるだろう。
いろいろな喜びがあり,悲しみがあるだろう。
それでも,彼女は旅をやめない。
さあ,始めよう。彼女と従者による大いなる旅を。
「で,陛下どのような女性が旅のお供をしてくれるのですかぁ…?」
その王は面白そうに笑い,そして彼女を絶望させることとなった。
「見張りが女性だといつ言ったかね? というか,見張り役も兼任するんだったら男の方がいいだろう?」
「リリス様,本日から見張り役を務めさせていただきますカーティスと申します。」
「嘘でしょぉ…嫌だ…私は可愛い女の子と一緒の旅をして美味しいものを食べてハッピースローライフを過ごすつもりだったのにぃ!?」
「それは自分にでもできますリリス様。今日にでも国を出れるのですよね?」
「思ってた選択肢とちがぁぁぁぁぁぁう!?」
こうして本当に旅が始まった。