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2021年11月16日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#10 アイドル

掲載日:2023/09/12


 サクソフォン奏者八巻和行(やまきかずゆき)さんのラジオ番組

 こうのすFM フラワーラジオ

 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)

   八巻和行の七転び八巻

 

 というラジオ番組の投稿コーナー

  妄想【愛の劇場】

 毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。


 小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。

 そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。


 妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!! 

 こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです! 

 《番組への参加方法》

 ①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadio(リスラジ)のアプリをダウンロード

 フラワーラジオを選局して、お気に入り登録

 ②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー

 ③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表

 ④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿

 ※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。

 ※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。


 小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。

 文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。

 言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。


 サイト投稿回数 第11回目の今回は………

 2021年11月16日放送。

 妄想【愛の劇場】#10 アイドル

 奏(かなで)と八巻シリーズの第十回目


 きれいな青空に、ちぎれ雲がふわりと浮かぶ。まるで、八巻(やまき)の心の中のようだ。

 今日は、奏(かなで)の通う大学の文化祭がある。

「八巻くん、ぜひ来てね。絶対よ!」

 そう言って嬉しそうに、文化祭のチケットを奏は八巻に手渡した。

 大学の文化祭なんて、何年振りだろうか。

 八巻自身、学生時代の文化祭にさして楽しかった記憶が無い。しかし、奏からのたってのお誘いとなれば、断る理由はない。

 学生生活を送る奏の様子を見る事もできる、嬉しい機会だ。


 大学構内は、お祭りの賑わいで活気づいていた。

 八巻は奏からのチケットを2枚貰っていた。1枚は文化祭の入場チケット。もう1枚は、大学アイドルライブのチケットだ。

「私、アイドルライブのお手伝いをしているの。応援に来てね」

 奏は嬉しそうに笑っていた。

 お手伝いという事は、奏が出演しているわけではないという事に、少しがっかりしながらも、胸を撫(な)で下ろす。

「野外ステージでのアイドルライブには、もう少し時間があるな」

 八巻が構内をブラブラとしながら時間を潰していると、日常の大学構内では似つかわしくないであろう、美味しそうなにおいがしてきた。

「今の内に、何か入れておこうか」

 学生達が運営する露店が並ぶ飲食街に、歩みを進めて行く。

 学生が出している露店で焼きそばを購入し、近くにあったベンチに腰をおろす。

 麺と野菜とソースの割合が反比例している焼きそばに、箸をつけた。

 想像した通りの味がする。

 八巻の周りを流れるのは、最近の流行りのロックミュージックだろうか。なんの気なしに、自然と耳に入ってくる。

 野外に設営された無機質な舞台で、大学生バンドが流行の音楽を演奏し、会場のお客さんを盛り上げている。

 八巻には、一体何の曲を披露しているのかよく分からなかったが、ノリの良い音楽に、右に左にと無意識に体を揺らしていた。

 その時、八巻の前を“アイドルライブ・プロジェクト”という文字と、可愛いアニメのイラストをあしらったTシャツを着た若者達が、五人、十人と通り過ぎて行く。

「そろそろ時間かな?」

 八巻はベンチから立ち上がり、“アイドルライブ・プロジェクト”の可愛いTシャツを着る彼らの後に付いて、野外ステージの方向へと歩き始めた。


「“アイドルライブ・プロジェクト”をご観覧のお客様は、こちらに三列になって、チケットをご用意してお並び下さいっ!」

 女子大学生のアイドルライブ運営委員が、小気味良(こきみよ)く張り上げた声で、イベント参加者に指示を出している。八巻もその声に倣(なら)って列に並んでいた。

「八巻さん!」

 突然、若い男性に声をかけられた。

 声の方へ顔を向けて、声の主を確認する。

「奏の応援ですね。奏から聞いていますよ」

 顔を確認しながら、八巻は彼が奏と同じサークルの男子学生である事を思い出した。

 名前は……何といっただろうか?忘れてしまった。

 ところで、奏の応援って何だ?確かに、応援に来てねとは言われたが、お手伝いの奏の応援という事か?

 色々な事を瞬時に考えながら、男子学生の話をうわの空に聞いていた。

「じゃあ、八巻さん。これで応援して下さい」

 男子学生は、“アイドルライブ・プロジェクト”のTシャツとピンク色のサイリウムを二本、八巻に手渡した。

「奏が着て欲しいって言ってたンで」

 呆気にとられている八巻にそう言い残し、男子学生は観覧参加者を整理しに消えて行った。

 八巻は、可愛いアニメのイラストの入ったTシャツと、使い方のよく分からないサイリウムを両手に抱える。

 奏が着ろというなら仕方がない。八巻は、Tシャツを広げ頭から着始めた。


 開場時間になると、“アイドルライブ・プロジェクト”のTシャツを身に纏(まと)った人々が、会場内に吸い込まれていく。八巻もその波に続いた。

 ところで、奏は一体どこに居るのだろうか?

 奏の姿を探す八巻だが、見付からない。

 イベントが始まる前に、前説と名乗る男女の学生が、イベントの注意事項やサイリウムの使い方をレクチャーする。

 八巻は、説明を聞きながらも奏を探す。

 しかし、見付からない。

 イベントが始まった。


 一番手は、女子学生三人組が流行りのK-POPを披露する。

 アップテンポの音楽と可愛いダンスに、観客は両手に収まらんばかりのサイリウムを、器用に持ちながら、上から下に引き下ろしたり、右を向いたり、左を向いたり、彼女達のダンスに合わせて、一緒に踊る。

 最初から、ボルテージがあがる若者達と会場。

 取り残される感覚を覚える八巻。


 次いで、五人組の男子学生が登場すると、会場内から黄色い声が響き渡った。

 手を振りながら歓声を上げるのは、女性が多いようだ。

 彼らは、ダンスミュージックに合わせて、ダンスをしながら器用に歌う。

 サイリウムと一緒にうちわを振りながら、黄色い声もさらに響き渡る。

 先ほどまで踊って応援していた男性陣は、少し体を縮こませ、応援を楽しむ女性陣の邪魔にならないように小さくなっている。

 学生アイドルオタクの紳士な振る舞いに、八巻も彼らに倣い、体を縮こませる。


 続いて、七人組の女子学生が登場した。

 八巻の見慣れた女の子が居る。

 奏だ。

 お手伝いって言ったじゃないか。

 お手伝いって、裏方じゃなくて表の方なのか?

 八巻が頭の中を整理しきれないこの現状を分かっているのか、分かっていないのか、奏は八巻の姿を見付け、嬉しそうに手を振り出す。

 奏のその姿に、会場内の男性陣は「俺に手を振った!」「いや、俺だ!」と言わんばかりに奏へと手を振り返した。

 八巻へ向けられた奏の笑顔は、会場全体を虜(とりこ)にした。

 さすがは八巻の通う喫茶店のアイドルだ。

 あの笑顔で、喫茶店の常連客はどれくらい増えただろうか。

 奏達七人組は、坂道シリーズの楽曲を歌いながら可愛く踊っていた。

 彼女達のパフォーマンスの虜になった観客達は、会場内が一体となったかのように、ボルテージが最高潮に達する。

 八巻も気付かぬ内に、舞台の奏に今まで以上に心を奪われた。

 彼女達の歌とアイドル音楽に体が動く。

 八巻は、周りの学生アイドルオタク達の動きを見様見真似(みようみまね)で倣う。

 両手にサイリウムを持ち、左側から上から下に。

 右を向いて上から下に。

 左に戻って、上から下に。

 右を向きながら上から下に、サイリウムを動かす。

 舞台に顔を向けて、体の全面を左に向ける。

 ランニングする様なポーズをしたら、右手を上から下に。

 リズムに合わせながら、八巻は周りと同じ様に動かし、彼女達の歌に合わせて踊る。

 ソロパートでは、ひとりひとりにコールを投げて、彼女達から笑顔と手を振られるお礼を受け取る。

 特に、自分の推しの笑顔は、明日(あした)からの活力になるだろう。

 彼らは彼女達の笑顔を受け取る事で、とても幸せそうな笑顔をしている。

 八巻もその気持ちは分かる。

 仕事の合間に、奏が働く喫茶店でその姿と笑顔を見る事が、どれだけ八巻の活力になることか。

 奏の番になる。

「天然奏でる、笑顔のタクト。み・ん・な・の・か・な・でーーっ!」

 奏は口元をふっくらとさせて、怒った様子を見せながら、最後には笑顔でコールに応える。

 八巻は、その姿に胸が痛んだ。

 奏が、遠い存在に感じた。

 会場内が一体感を持つ中で、八巻は寂しく思った。

 自分が知っている奏ではないように思えた。


 空色が、きれいな青から茜色に変わり始めていた。浮かぶ雲も少し鈍い紫色がかかっている。

 八巻の心も少し鈍く重い。

 祭りが終わり、学生達が後片付けを少しづつ始めている飲食の屋台を、八巻はボーっとしながら眺めていた。

 なんともいえない気持ちのまま、ベンチに腰を下ろしていた。

 ここから動きたくないが、いつまでもここには居たくない。

 消化不良な感情を、どう処理して良いのか分からなかった。

「八巻くん!」

 鈴の音の様な弾んだ声が、八巻を呼んだ。

 声の方へと顔を向ける。

 奏が“アイドルライブ・プロジェクト”のTシャツを着て、八巻の方へと小走りにやって来た。

「見て!お揃い!」

 奏は、八巻と同じTシャツを着ている事を嬉しそうに、何故か自慢げに八巻に見せつける。

 八巻に向けられる笑顔が、いつもの奏の笑顔で安心する。

 安心したからか、八巻は目頭が少しだけ熱くなるのを感じた。

「八巻くん?」

 様子のおかしい八巻の顔を覗き込もうとした奏を、八巻は思い切り抱きしめた。

 奏の笑顔を、いつまでも独り占めできる様に願いながら。


 ありがとうございました。

 次回もラジオ番組の投稿コーナー

 妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。


 妄想【愛の劇場】#11「雨降り」

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