2021年11月16日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#10 アイドル
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
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②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。
文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。
言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。
サイト投稿回数 第11回目の今回は………
2021年11月16日放送。
妄想【愛の劇場】#10 アイドル
奏と八巻シリーズの第十回目
きれいな青空に、ちぎれ雲がふわりと浮かぶ。まるで、八巻の心の中のようだ。
今日は、奏の通う大学の文化祭がある。
「八巻くん、ぜひ来てね。絶対よ!」
そう言って嬉しそうに、文化祭のチケットを奏は八巻に手渡した。
大学の文化祭なんて、何年振りだろうか。
八巻自身、学生時代の文化祭にさして楽しかった記憶が無い。しかし、奏からのたってのお誘いとなれば、断る理由はない。
学生生活を送る奏の様子を見る事もできる、嬉しい機会だ。
大学構内は、お祭りの賑わいで活気づいていた。
八巻は奏からのチケットを2枚貰っていた。1枚は文化祭の入場チケット。もう1枚は、大学アイドルライブのチケットだ。
「私、アイドルライブのお手伝いをしているの。応援に来てね」
奏は嬉しそうに笑っていた。
お手伝いという事は、奏が出演しているわけではないという事に、少しがっかりしながらも、胸を撫で下ろす。
「野外ステージでのアイドルライブには、もう少し時間があるな」
八巻が構内をブラブラとしながら時間を潰していると、日常の大学構内では似つかわしくないであろう、美味しそうなにおいがしてきた。
「今の内に、何か入れておこうか」
学生達が運営する露店が並ぶ飲食街に、歩みを進めて行く。
学生が出している露店で焼きそばを購入し、近くにあったベンチに腰をおろす。
麺と野菜とソースの割合が反比例している焼きそばに、箸をつけた。
想像した通りの味がする。
八巻の周りを流れるのは、最近の流行りのロックミュージックだろうか。なんの気なしに、自然と耳に入ってくる。
野外に設営された無機質な舞台で、大学生バンドが流行の音楽を演奏し、会場のお客さんを盛り上げている。
八巻には、一体何の曲を披露しているのかよく分からなかったが、ノリの良い音楽に、右に左にと無意識に体を揺らしていた。
その時、八巻の前を“アイドルライブ・プロジェクト”という文字と、可愛いアニメのイラストをあしらったTシャツを着た若者達が、五人、十人と通り過ぎて行く。
「そろそろ時間かな?」
八巻はベンチから立ち上がり、“アイドルライブ・プロジェクト”の可愛いTシャツを着る彼らの後に付いて、野外ステージの方向へと歩き始めた。
「“アイドルライブ・プロジェクト”をご観覧のお客様は、こちらに三列になって、チケットをご用意してお並び下さいっ!」
女子大学生のアイドルライブ運営委員が、小気味良く張り上げた声で、イベント参加者に指示を出している。八巻もその声に倣って列に並んでいた。
「八巻さん!」
突然、若い男性に声をかけられた。
声の方へ顔を向けて、声の主を確認する。
「奏の応援ですね。奏から聞いていますよ」
顔を確認しながら、八巻は彼が奏と同じサークルの男子学生である事を思い出した。
名前は……何といっただろうか?忘れてしまった。
ところで、奏の応援って何だ?確かに、応援に来てねとは言われたが、お手伝いの奏の応援という事か?
色々な事を瞬時に考えながら、男子学生の話をうわの空に聞いていた。
「じゃあ、八巻さん。これで応援して下さい」
男子学生は、“アイドルライブ・プロジェクト”のTシャツとピンク色のサイリウムを二本、八巻に手渡した。
「奏が着て欲しいって言ってたンで」
呆気にとられている八巻にそう言い残し、男子学生は観覧参加者を整理しに消えて行った。
八巻は、可愛いアニメのイラストの入ったTシャツと、使い方のよく分からないサイリウムを両手に抱える。
奏が着ろというなら仕方がない。八巻は、Tシャツを広げ頭から着始めた。
開場時間になると、“アイドルライブ・プロジェクト”のTシャツを身に纏った人々が、会場内に吸い込まれていく。八巻もその波に続いた。
ところで、奏は一体どこに居るのだろうか?
奏の姿を探す八巻だが、見付からない。
イベントが始まる前に、前説と名乗る男女の学生が、イベントの注意事項やサイリウムの使い方をレクチャーする。
八巻は、説明を聞きながらも奏を探す。
しかし、見付からない。
イベントが始まった。
一番手は、女子学生三人組が流行りのK-POPを披露する。
アップテンポの音楽と可愛いダンスに、観客は両手に収まらんばかりのサイリウムを、器用に持ちながら、上から下に引き下ろしたり、右を向いたり、左を向いたり、彼女達のダンスに合わせて、一緒に踊る。
最初から、ボルテージがあがる若者達と会場。
取り残される感覚を覚える八巻。
次いで、五人組の男子学生が登場すると、会場内から黄色い声が響き渡った。
手を振りながら歓声を上げるのは、女性が多いようだ。
彼らは、ダンスミュージックに合わせて、ダンスをしながら器用に歌う。
サイリウムと一緒にうちわを振りながら、黄色い声もさらに響き渡る。
先ほどまで踊って応援していた男性陣は、少し体を縮こませ、応援を楽しむ女性陣の邪魔にならないように小さくなっている。
学生アイドルオタクの紳士な振る舞いに、八巻も彼らに倣い、体を縮こませる。
続いて、七人組の女子学生が登場した。
八巻の見慣れた女の子が居る。
奏だ。
お手伝いって言ったじゃないか。
お手伝いって、裏方じゃなくて表の方なのか?
八巻が頭の中を整理しきれないこの現状を分かっているのか、分かっていないのか、奏は八巻の姿を見付け、嬉しそうに手を振り出す。
奏のその姿に、会場内の男性陣は「俺に手を振った!」「いや、俺だ!」と言わんばかりに奏へと手を振り返した。
八巻へ向けられた奏の笑顔は、会場全体を虜にした。
さすがは八巻の通う喫茶店のアイドルだ。
あの笑顔で、喫茶店の常連客はどれくらい増えただろうか。
奏達七人組は、坂道シリーズの楽曲を歌いながら可愛く踊っていた。
彼女達のパフォーマンスの虜になった観客達は、会場内が一体となったかのように、ボルテージが最高潮に達する。
八巻も気付かぬ内に、舞台の奏に今まで以上に心を奪われた。
彼女達の歌とアイドル音楽に体が動く。
八巻は、周りの学生アイドルオタク達の動きを見様見真似で倣う。
両手にサイリウムを持ち、左側から上から下に。
右を向いて上から下に。
左に戻って、上から下に。
右を向きながら上から下に、サイリウムを動かす。
舞台に顔を向けて、体の全面を左に向ける。
ランニングする様なポーズをしたら、右手を上から下に。
リズムに合わせながら、八巻は周りと同じ様に動かし、彼女達の歌に合わせて踊る。
ソロパートでは、ひとりひとりにコールを投げて、彼女達から笑顔と手を振られるお礼を受け取る。
特に、自分の推しの笑顔は、明日からの活力になるだろう。
彼らは彼女達の笑顔を受け取る事で、とても幸せそうな笑顔をしている。
八巻もその気持ちは分かる。
仕事の合間に、奏が働く喫茶店でその姿と笑顔を見る事が、どれだけ八巻の活力になることか。
奏の番になる。
「天然奏でる、笑顔のタクト。み・ん・な・の・か・な・でーーっ!」
奏は口元をふっくらとさせて、怒った様子を見せながら、最後には笑顔でコールに応える。
八巻は、その姿に胸が痛んだ。
奏が、遠い存在に感じた。
会場内が一体感を持つ中で、八巻は寂しく思った。
自分が知っている奏ではないように思えた。
空色が、きれいな青から茜色に変わり始めていた。浮かぶ雲も少し鈍い紫色がかかっている。
八巻の心も少し鈍く重い。
祭りが終わり、学生達が後片付けを少しづつ始めている飲食の屋台を、八巻はボーっとしながら眺めていた。
なんともいえない気持ちのまま、ベンチに腰を下ろしていた。
ここから動きたくないが、いつまでもここには居たくない。
消化不良な感情を、どう処理して良いのか分からなかった。
「八巻くん!」
鈴の音の様な弾んだ声が、八巻を呼んだ。
声の方へと顔を向ける。
奏が“アイドルライブ・プロジェクト”のTシャツを着て、八巻の方へと小走りにやって来た。
「見て!お揃い!」
奏は、八巻と同じTシャツを着ている事を嬉しそうに、何故か自慢げに八巻に見せつける。
八巻に向けられる笑顔が、いつもの奏の笑顔で安心する。
安心したからか、八巻は目頭が少しだけ熱くなるのを感じた。
「八巻くん?」
様子のおかしい八巻の顔を覗き込もうとした奏を、八巻は思い切り抱きしめた。
奏の笑顔を、いつまでも独り占めできる様に願いながら。
ありがとうございました。
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妄想【愛の劇場】#11「雨降り」




