決別とワニ吉の過去話⑤
修正点8/2(2024)
カインが断罪神(時空神)と初めてあったシーンに、断罪神の容姿を追加しました。容姿は、今回の話でも語られており、それと同じです
辺りを照らしていた灰色の閃光が収まると、爆心地に全身ボロボロになりながらも杖を地面について何とか立っている規矩神がいた。
「あら?ここら辺以外は街も無事みたいね。」
規矩神の周りの道や建物は吹き飛び、地面が露わとなっていた。
「対象を規矩神と結界のみにしておいた。さすがに、ここら一帯は奥義の余波で滅んでしまったがな。」
「【虚無】の壁がなかったら余たちも危なかったはずだ。」
アペタイトはそう言いつつ、眼下に広がる霧の壁を解除した。
「………〈の「させん。〈虚無の浸蝕〉!」
規矩神が奥義を発動しようとした瞬間、漆黒の霧が規矩神を覆い尽くした。
「ッ……〈則〉、〈則〉、〈則〉!嘘っ、効かない!?」
「余の虚無は魔力を吸うのでな。貴様が霧の中にいる限り、外界を対象にした魔法や奥義は一切使えんぞ。」
「なら…「【僭踰】。残念だったな。我のスキルは相手の技も対象にできる。今、お前の強化魔法の対象はお前を超越し、我になっているぞ。」
……この二人怖いんですけど。
魔王様はまだあり得るレベルだけど、ロンギヌスさんはチーター過ぎるわよ。
「……。」
規矩神は黙りこくっている。
「さて、規矩神を完全に無力化したわけだが、こいつの処遇はどうするんだ?アペタイトよ。」
「そうだな…いつも通りミミックの糧にすればいいだろう。」
「だな。……っと、何してるんだ、規矩神?」
「!?」
ロンギヌスが規矩神の方に振り返ると、目を物理的に光らせていた。
「その神眼で何をしようとしていた?」
「ふむ……余の【虚無】が書き換えられているな。」
「我の超越も書き換えられている。」
「【影響無視】。規矩神の書き換えを無視したわ。これで、魔王様とロンギヌスさんの技が元通りになってるはずよ。」
「ほう、なかなかやるじゃないか。アペタイトにはもったいない部下だ。」
「あぁ、本当にな。出来過ぎた友達だよ。」
「んじゃ、また同じようなことになったら困るし、規矩神をさっさと拘束しちゃいましょう。」
「アペタイト。」
「【虚無】。」
漆黒の霧が上空に現れた。
「【僭踰】、〈形状変化〉。」
虚無の持つ干渉されないという性質を超越し、魔法が霧の形を鎖へと変えた。
「おまけしてもいい?」
「もちろん。」
アペタイトがそう言う。
「【影響無視】、【影響無視】。」
スキルを直接付与できないという世界の法則を無視し、スキルの効果が鎖に付与された。
これにより、物理も魔法も法則も効かない不壊の鎖が誕生した。
「行け。」
アペタイトがそう言うと、鎖は規矩神の下まで飛び、拘束した。
「ッ……。」
規矩神から自由が奪われると同時に、アペタイトは規矩神を覆っていた霧を解除した。
「それで、アペタイトよ。今日はなぜミミックを誘わなかったのだ?」
「いや、誘おうと思ったのだが、どこかに旅に出ていたみたいでな。見つけられなかった。」
「ふむ……。【僭踰】、〈探査〉。……距離を超越させて探査魔法使ったが、見つからなかった。どこかのダンジョンにでも潜っているのだろう。」
「だな。帰ってきたら向こうから余たちのところに来るだ「【既往】、【時界乖離】。」
そう声が響いた瞬間、不壊のはずの鎖が割れていた。
「…助かったわ、時空神。」
そして、空間が歪み、魔法使いの風貌をし、大鎌を持った初老の男が現れた。
「ほら、そうやって二人が舐めプしてるから、上位神がもう一人来ちゃったじゃない。」
「アペタイトと君で規矩神を頼む。我が時空神の相手をしよう。」
「了解した。」
「了解よ。」
「……だそうだぞ、規矩神。ロンギヌスは私に任せてもらおう。」
「はーい。それじゃあ、いつものあれ、よろしく。」
「あぁ。神に歯向かった大罪人どもよ、よく聞け。ここは今から、お前たちの処刑場だ。【処刑場】。」
辺りの街並みから一変し、断罪神の神域である拷問部屋となった。
「んじゃ、私も。【史記書庫】。」
拷問部屋の半分が、幻想的な図書館に変わった。
本が浮遊し飛び交い、梯子が動き、紅茶のカップとポットも宙を飛んでいる。
「我は相手の強化を待つほどお人好しではないのでな。【僭踰】、〈踰越燼滅溘焉芒〉。」
ロンギヌスは詠唱の過程を超越し、いきなり終焉の奥義をぶちかました。
「【時界乖離】。」
時空神は大鎌を振るい、時空を歪める。
それにより、灰色の閃光の軌道は逸らされ、時空神に当たることはなかった。
◇
その頃、アペタイトたちは…
「〈則〉。」
「【虚無】。」
蒼白の電撃がアペタイトと女性に向けて放たれるやいなや、漆黒の霧がそれを呑み込んだ。
「〈重石生成〉、【影響無視】、〈崩分壊〉、〈電磁加速砲〉!」
奥義をものに直接付与できないという世界の法則を無視し、強制的に銀灰色の弾丸に煙が付与される。
そして、女性の周りに電気が漂い、一気に加速した弾丸が煙で軌跡を描きながら規矩神の魂を貫いた。
「カハッ……!」
「魔王様!」
「任せろ。〈虚無の剣〉、【虚無】。」
アペタイトの体は霧となり、霧散した。
それと同時に、規矩神の背後に霧が収縮し、人の形を取った。
「死ね。」
アペタイトは霧の剣を規矩神の胸部めがけて振り下ろした。
「ぐぁっ……お、〈お「先程もさせないと言ったはずだが?〈虚無の浸蝕〉。」
霧の剣がその形をなくし、規矩神の全身を覆うように広がった。
「ッ……!」
「さぁ、今度こそ終わりだ。【無】。」
アペタイトの手から一際濃い黒の霧が生み出され、一瞬にして規矩神を丸呑みにした。
そこにはもう、死体も量子も霊子も、何もかも全く残っていない。
「くっ、久しぶりに使ったが、やはり制御が難しいな……。」
「でも、やったわね、魔王様!これでさすがのやつも再生できないはずね。」
「あぁ、だな。余たちの勝利だ。」
アペタイトはふらつきながら女性の下まで向かった。
◇
一方、ロンギヌスは…
「〈踰越燼滅溘焉芒〉、〈踰越燼滅溘焉芒〉、〈踰越燼滅溘焉芒〉、〈多重化〉。…ふははははは!逃げろ逃げろ!あたったら滅んでしまうぞ!」
無数の閃光が時空神めがけて襲いかかる。
「くそっ……【時界「【僭踰】。使わせると思ったか?」
ロンギヌスによる圧倒的なまでの蹂躙が行われていた。
「【時歪】!」
閃光が時空神に当たる直前、その軌道が歪み、時空神を襲うことはなかった。
「ほう…。時間軸を弄り、【時界乖離】が超越されなかったことにしたのか。」
「…正直、天罪者がここまで強いとは思っていなかった。素直に賞賛しよう。」
「その心は?」
「だからこそ、今から本気で貴様を殺す。」
「やってみるがいい。返り討ちにしてやる。」
「【天魂浄】、【時界乖離】!」
時空神はその大鎌に時空を裂く効果を纏わせ、ロンギヌスに向けて振り下ろした。
「ッ……【僭踰】!」
「【時空間支配】。」
ロンギヌスは慌てて自分の体を別次元まで超越させた……が、次元への干渉は時空神の十八番。
超越の力は無効化されてしまった。
ロンギヌスは終焉と超越の力を槍に纏わせ、時空神の鎌を受けた……はずだった。
「ぐあっ!?」
鎌は時空を超越し、槍など初めからなかったかのようにすり抜け、そのままロンギヌスの体を大きく切り裂いた。
「【断獄】、〈乱転〉。」
時空神は続けて鎌に聖属性を纏わせ、その鎌を回転させた。
そして、それをアペタイトたちに向けて投擲した。
「【影響無視】!」
「【虚無】!」
女性は鎌の時空を断つ、罪人に特攻を持つという二つの性質を無視させた。
そして、霧が鎌を呑み込んだ。
「甘い、【時歪】。」
影響を無視し、霧が鎌を呑んだという事象が無かったことにされた。
「ッ……〈虚無の剣〉。」
「魔王様、待って。私があれを受け止めるから、その隙に時空神を!」
「……わかった。君の力を信じよう。」
「【影響無視】、〈事象解析〉、〈崩分壊〉、〈刺突崩〉、【剛力】、【金剛】、【甲羅超硬質化】、【鰐鱗】、【硬固】、【毒纏】、〈不動〉、〈防御体制〉!!」
さて、これで受け切れなかったら私の負けね。
女性は無詠唱で〈空間収納〉を使い、中から緑の鱗のような盾を取り出した。
そして、その盾で鎌を受け止めた。
ーギゥィーンー
金属が金属を引っ掻く鈍い音が鳴り響く。
女性は盾を両手で構えるも、鎌の勢いに押され、少しずつ後ろに押されていっている。
「【虚無】、〈虚空裂き〉、〈虚無の浸蝕〉!」
アペタイトの姿が消え、時空神の背後に現れた。
「がっ……!」
霧の剣で時空神を斬り裂いた。
そして、その傷口から霧が時空神の体を浸蝕していく。
「くっ……【時わ「【無】。」
一際濃い霧が現れ、時空神を丸呑みにした。
それと同時に、時空神の鎌も粒子になって霧散した。
「アペ…タ……イ…と……、や、つには…蘇せ…いの……スキル……あ…る……」
「わかった。」
「魔王様、任せて。私なら復活先も視れるわ。」
「頼んだ。余はロンギヌスの回復に努める。」
「【追蹤の析眼】………魔王様の後ろに魔力が集まってる!!」
「なにっ!?」
「……せ、【僭踰】!」
「【時界乖離】!」
鎌がアペタイトのいた場所を的確に斬り裂いた。
しかし、ロンギヌスのスキルでアペタイトの位置が超越され、彼が怪我を負うことはなかった。
「チェックメイトだ。【既往】、【時界乖離】!」
もう一度、時空神はその場所に鎌を振り下ろした。
「ぐあっ…!?」
それと同時に、アペタイトの胸が斬り裂かれた。
「〈刺突崩〉ッ!」
いつの間にか時空神に接近していた女性の手が、時空神の魂を貫いた。
「私は不滅だ。」
「はぁはぁ……〈完全状態復元〉、〈多重化〉!」
金色の魔法陣がロンギヌスとアペタイトを包み込むも、その傷は僅かにしか癒えなかった。
「くる…ぞ…!」
ロンギヌスが声を振り絞る。
「【既往】、【時界乖離】!」
「〈倍増反射〉!」
ーザシュッー
煙の壁を貫通して、上の斬撃が初めからあったかのように女性を斬り裂いた。
「……ざまぁみろ。〈倍増衝撃〉…〈崩滅壊〉ッ!!!」
膨大な魔力で生み出された煙が時空神を呑み込まんと膨張した。
しかし、時空神は【時空間跳躍】でそれを躱してしまった。
煙はそのまま〈倍増反射〉の壁に当たって消えてしまった。
「はっ、馬鹿なのは今の方だったな!【時界乖離】!!」
「ふっ……〈反射〉!!!」
鎌が女性を斬り裂くと同時に、壁から一斉に溢れ出した煙が時空神を呑み込んだ。
次回は早ければ8月中盤、遅ければ9月中盤です。(テストの関係です。すみません)