招待
改稿済みです。
メリーさんの件が終わったその日の午後。
「むしゃむしゃ、んぐっ、ごくごく、ぷはー!」
俺はミレアに料理を自宅で振る舞っていた。
「いやー、よく食うなー。」
「うちのお父さんは平民にしては稼いでる方だけど冒険者だから日によってピンキリなんだよね。最近はいい獲物が取れてなかったから空腹で。」
「へー、あ、白米のおかわりいる?」
「お願い。」
俺が作ったのは完全な和食だ。
日本のお米に似た植物や、魚の種類、味噌や醤油の作り方はヘルプに訊いたら簡単に分かった。
なんでも、俺が前世で見たのにも答えられるらしい。
味噌や醤油の作り方はテレビやネットで見たことくらいはあったのだろう。
俺は覚えてないけど。
あ、主食は鮭の塩焼き。
副菜はひじきの煮物です。
味噌汁と白米はおかわり自由!
鮭の塩焼き定食750円!
…はい、冗談です。
「あ、カイン。味噌汁が少し酸っぱい?上手く言えないんだけど…。」
「すまん。味噌は自家製でまだあんまり上手くできてなくて。体に害はないから。」
「りょーかい。人間誰しも失敗はあるからね。こうしてごちになれるだけありがたいよ。」
そしてミレアが食べ終わり…。
「ご馳走様でした。」
「評価は?」
「100点満点中74点。」
「合格は?」
「80点。」
「厳しくない?」
「正直お米もおかずも普通で…。けど、不味くはないけど特別おいしくもなくそこそこ普通に美味しいって感じ。」
「あー。お米も品種改良とか全然してないからまぁまぁだし、味噌も同じ。魚も100%同じとまではいかないから若干品質が劣って。」
「あーね。カインは自己採点したら何点くらい?」
「70。」
「私より厳しいじゃん。」
「こういうのって相手がつけたのより低くしたくない?」
「分かる。」
「そういえばさ。ミレアって学園に通う?」
「うーん、通おうかな。」
「その心は?」
「日本人の感覚として学校には通っておきたい。」
「なるほど。それでさ、その時宿代とか高くつくだろ?この家は部屋も余ってるし泊まれるなら泊まるかなって。」
「助かる。ちなみに宿泊代は?」
「一日5000ビーケ。」
「……やっぱなしで。」
「冗談冗談。家事とか手伝ってくれたら無料。」
「おー!学園に通い始めたらぜひ泊まらせてもらうよ。」
「わかった。そのときは用意しとく。」
今は5歳なので、学園に通い始めるのは二年後の7歳だ。
「じゃあもう帰るか?」
「いやいや、せっかくここまで来たんだから街の一つでも案内してもらうよ。それかパワーレベリングの手伝いでもしてもらうよ。」
「昼食振舞ったんだけど?」
「それはそれこれはこれ。」
「わかったわかった。じゃあ早速どこか行きますか。」
「よし!なら食後のデザートを食べにカフェにでも行こう!」
「お金持ってるの?」
「持ってないけど?」
「……。」
「俺に奢れと?」
「うん。」
「はいはいわかったよ。」
「じゃあ早速レッツゴー!」
「【転移】。」
俺たちはギルドの前に転移してきた。
「ほへ?なんでギルド?」
「金が無いです。」
「……。」
昼時のため他の冒険者はいない。
「あら?カイン君、どうしたの?」
「お金貸してください。」
「………え、えーっと?」
「今度素材売った時の分から天引きという形でお願いします。」
「月末で私も苦しいんだけど…。」
「明日魔物をたくさん狩ってくるのでお願いします。」
「うーん…わかった。いいんだけどなんでこんなことになったの?」
「人には言えない事情です。」
「聞かない方がよさそうね。それで、いくらぐらい?」
「2万お願いしたいです。」
「はい、ちゃんと返してね?」
「大丈夫です。返します。返さなかったらギードさんの給料からもらってください。」
「そうするわ。返さなくてもいいよ?」
「二人とも、ギードさんが可哀想。」
「いやー、なんかあの人は揶揄いたくなるというかなんというか。」
「すごい分かる。カイン君とは気が合いそう。」
「では、僕たちは行くので。」
「メリーさん、ありがとうございました。」
「あ、そういうことね。」
メリーさんがニヤニヤと俺たちを見てくる。
「「デートじゃないですからね?」」
俺とミレアがハモって言う。
「そう言うことにしておくわ。カイン君、もう少し甲斐性を見せた方がいいわよ。」
「この前家買って金欠なんですよ。」
「龍王の素材を売ったお金があるでしょ?」
「それも含めて全財産払って家を買いました。」
「どんな豪邸を買ったのよ…。ともかく、貯金はしておいた方がいいよ。」
「わかってはいるんですけど限定キャラがいたら課金してガチャ回したいじゃないですか。」
「何を言ってるかわからないけどダメな人間に進もうとしてるのは分かったわ。」
「私はすごい分かったけど無課金勢としてガチャは確率超アップや限定キャラ確定一体とかの時に回した方がいいと思う。」
「まぁそんなわけです。今度こそ行くので。」
「メリーさん、また今度。」
「ばいばいミレアちゃん。カイン君も素材の納品待ってるからねー。」
「【転移】。」
今度は街にあるカフェのようなお店に来た。
「うわっ、高い。」
「えーっとね、私はオリジナルコーヒーと4種のベリーチョコムースってやつ。」
「300ビーケと1400ビーケ…。なぁ、他のに「店員さん、オーダーお願いします。」
「はーい、今行きます。」
「……。」
「お品物をお願いします。」
「オリジナルブレンドコーヒーと4種のベリーチョコムースを一つずつ。」
「畏まりました。そちらのお客様はいかがなさいますか?」
「あ、え、えーっと…。カフェオレとモンブランお願いします。」
「ご注文確認させていただきます。オリジナルブレンドコーヒーがおひとつ、4種のベリーチョコムースがおひとつ、カフェオレがおひとつ、モンブランがおひとつ。以上でお間違えないでしょうか?」
「大丈夫です。」
「ご注文承りました。少々お待ちください。」
「ふっふーん。」
「もう頼んじゃったからいいよ。ミレアがブラックコーヒーを飲めるのが意外なんだが。」
「そうかな?中学生の頃から眠気覚ましによく飲んでたよ。」
「すご。」
「コーヒーはブラックが一番美味しい。カインはカフェオレ!頼んだってことはブラック飲めないの?」
「ガムシロか砂糖をたくさん入れれば飲めるぞ。」
「それはブラックって言わないよ。」
それから少しして…。
「こちらがオリジナルブレンドコーヒーと4種のベリーチョコムースになります。」
「私です。」
「前、失礼します。」
「わー、おいしそ。」
「こちらがカフェオレとモンブランになります。」
メリーさんのお金で食べてると思うと罪悪感が芽生えてきた。
「以上でご注文の品はお揃いでしょうか?」
「大丈夫です。」
「ごゆっくりどうぞ。失礼致します。」
「ばくぱく。」
「もっと味わって食べろ!」
数十分後。
「ふー、食べた食べた。」
「メリーさんにお金を借りたから罪悪感しかない。」
ーキーンコーンカーンコーンー
「あ、私そろそろ帰んなきゃ。」
「他の店はいいのか?」
「また今度遊びに来るよ。」
「わかった。じゃあもう出発しちゃっていいか?」
「うん、ご馳走様でした。」
「こちらこそ今日はありがとうな。【転移】!」




