二国間大戦④
修正点
冒険者ギルドの本部はカインのいつも利用するザーベストのやつという設定でしたが、支部という設定に変更しました。8/14
カイン視点
なぁ、嘘だよな?
「死ね!」
巨大なスライムが手を振るとそこから漆黒の液体が降り注ぐ。
『マスターですら一撃死の猛毒です。魂すら蝕むため〈慈愛ノ聖域〉の魂の保護も無効化され死人はそのまま魂も潰えることとなるでしょう。』
……。
「〈絶界〉、〈結界増加〉、〈結界強化〉、〈絶無〉!」
巨大な結界が戦場をドーム状に覆う。
その結界を黒の液体のようなものが覆う。
スライムの黒の溶解液のようなものが〈絶無〉に当たると煙を出して消化液が溶ける。
……が、回数を重ねるたびに溶解液が優勢になり結界を侵食していきミシミシと音を立て始める。
クソ…。
俺はムラマサを液状化させ溶解液を呑み込むようにムラマサを振るう。
「ぐおぉぉぉー!」
すると、今度はスライムが結界に体当たりしてきた。
「はぁっ!?」
俺はムラマサを地面に突き刺す。
〈災禍の妖刀〉で液状のムラマサが4つ…いや、4本地面から突き出て結界を支える柱にする。
俺はその隙に〈土魔法〉で神黄金〉の柱を10作り結界を支える。
ムラマサをもとに戻し鞘にしまう。
カオスをフラガラッハにし自分に〈支援魔法〉をかける。
そのまま〈神駆〉でスライムの本体まで高く跳躍する。
俺は【応答者】を発動させるため〈憤然〉をほんの少し解放して感情を昂らせる。
俺はフラガラッハを縦に一閃させる。
斬ることに特化したゴットスキルを二つも持つフラガラッハは俺の作り出した結界ごとスライムの体を一刀両断した。
そのまま〈飛行〉で空中に停滞する。
俺はすかさず〈詛焔呪焱讐黝熾〉をスライムの体内に発動させる。
この魔法、本当に便利。
相手の体内に発動させるだけで復讐の力が作用してこんなボスキャラだろうが焼き尽くせる。
「ぐあぁぁぁ!」
〈詛焔呪焱讐黝熾〉をスライムの周りに放つ。
スライムの体は溶解液のため一歩動いて〈詛焔呪焱讐黝熾〉に当たればたちまち焼き尽くされるだろう。
「くっ…なかなかやるね。だけど僕の本領はここからだよ。」
「うっ…。」
突如、立ち眩み、目眩のようなふらっとする現象に襲われ〈飛行〉を維持出来ず地面に落下する。
ードオーンー
「ぐっ…。」
俺は傷を〈回復〉で癒す。
な、何が起きた?
『さーた?』
『ザ…ザザザー。』
ノイズしか聞こえない。
俺の意識もぼーっとしてきた。
〈睡眠覚醒〉を使うも意識は鮮明に戻らない。
睡眠系…じゃない……か…。
や…い。
も…考え…れない。
俺は気力を振り絞り〈精神回復〉を使う。
も、効果が現れない。
『教えてあげるよ。僕は喰菌集体…極小の存在の集合体さ。そして相手に寄生することが出来る。王様と同じように君にも寄生たのさ。』
脳に声が直接送り込まれるかのようにスライムの声が聞こえる。
俺は朦朧とした意識の中で死を覚悟した。
「我の死を齎す復讐の……根源、邪悪の化身に…滅びの…呪いを与………え、憎悪の恨みを晴らした…まえ。呪いの鎖…よ。我が仇を……取り敵…を滅ぼ…せ。〈呪厭怨恨悔憾忌詛讐鎖〉……。」
死力を振り絞ったが声が霞れ呟くようにそう唱えた。
『無駄な抵抗だね。いくら復讐に特化した魔法とはいえ魔法に強い耐性を持ちつ僕には効かないよ。』
スライムの体が縮んでいき黒の液体となる。
それは倒れ伏し横たわる俺に入っていき俺の魂に纏わりつく。
『王様の体は返してあげるね。代わりに君の体を借りるけど。』
朦朧としていた俺の意識はそこで完全に闇に落ちた。
◇◇◇
三人称視点
(あれは神に匹敵する魔物…。)
ミナは戦場の一角からカインと戦っていたスライムこと喰菌集体を見つめていた。
(私とは相性がいいから私なら勝てる。でもカインは良くも悪くもない。…寄生の力を持つあいつには勝てなさそう。)
「僕が行かせると思うかい?」
ミナがカインの下に行こうとした時、背後から話しかけられた。
「あれの分身体?」
「そ。まぁ力は半分くらいだけど君の足止めくらいは出来るよ。」
「……。」
ミナは奥義、〈万象凍結〉、〈絶対零度〉、〈永遠なる氷〉を発動させミニスライムを氷漬けにする。
無論、これは〈氷魔法〉ではなく〈凍結魔法〉に近い奥義のため熱での溶解は出来ない。
「〈悪食〉。」
今は人の形を取っているミニスライムだがそう唱え右手をかざすと右手がスライスになりミナの放った奥義を吸収した。
「〈超氷結嵐〉。」
ミニスライムを包み込むように極寒の嵐が吹き荒れる。
「〈悪食〉。」
スライスの右手が嵐を喰らう。
「僕は魔法系の攻撃なら無効化出来るよ。まぁ、欠点としては大魔法は口に出さないと吸収出来ないんだけどね。」
(〈悪食〉が魔法を喰らうトリガー。ならそれを言い終わるより早く魔法を放てば…。)
ミナは無詠唱で〈超聖氷擲槍〉を放った。
「ッ…。」
ミニスライムは〈悪食〉を発動出来ずに体でそれを受けてしまう。
…が、無傷だ。
「これくらいの低位魔法なら〈悪食〉なんて必要ないよ。」
その声はミナの前ではなく背後からした。
ミナはしゃがむや否や後ろに振り返りレイピアをミニスライムの腹部に突き刺す。
「はは、感がいいね。」
ミニスライムは刺されたにもかかわらず笑っている。
「でも、油断したね。」
〈創世級〉であるはずのミナのレイピアがミニスライムの黒の溶解液に侵食されていく。
ミナは咄嗟に手を離し後ろに跳ぶ。
ミナは【能力数値化】でステータスを〈魔力〉に振り直す。
ミナは〈凍結魔法〉、〈氷魔法〉をミニスライムに無限に放ち続ける。
ミニスライムもそれを喰らい続ける。
そうして勝敗の付かない争いが始まった。
◇◇◇
一方、クロム達は…。
「な、な、な、何あれ!?」
リーシヤが絶叫する。
「に、逃げよう!カインですら手に負えないんじゃ僕たちじゃ無理だよ!」
クロムも怖気付く。
「スースー。」
「わ、わ、わ、わ…どどど、どうしよう!?」
「うーん、喰菌集体に似てるのです。でもなんか変な感じなのです。あれは…罪系のスキルと融合したのですかね?うーむ…。」
「多分罪系スキルと喰菌集体が融合して特殊な進化をした新種族であり法則外の存在。カインの職業に近い存在。」
「そういえばマスターの第2職業も〈法則外の存在〉でしたね。…あ、マスターの〈森羅〉と〈深淵の神眼〉ならあれの正体を看破出来るのではないですか?サータ様も解析出来そうですし…。」
「さっきから念話を飛ばしてる。だけど返事がこない。」
「となると喰菌集体に寄生された可能性があるのです。もしそうだとしたら本格的にやばいのです。多分、【魔法管理】も【能力管理】も使えなくなるのです。」
「…試した。使えないらしい。」
「うーん、困ったのです。…っと、危ないのです。」
カインが防いでいるがスライムの溶解液がワニ吉達に降りかかる。
それを毒を纏った右手で打ち払う。
「ワニ吉ならこの程度の攻撃、無傷で余裕なのです。巨大化するので影に隠れて下さい。」
「ありがとう。」
「なのでーす!」
ワニ吉がそう叫びながら巨大化しスライムの半分程の大きさになる。
「みんな、このワニの影に。」
「そっか!ワニ吉ちゃんならこれくらい耐えられるんだ!」
「ね、ねぇ。これって上位の魔物だよね?僕たちを襲わない?」
「大丈夫です。カイン様の従魔ですので。」
「そうなの?じゃあ私は遠慮なく!」
「ちょ、ちょっとリーシヤ!…もぅ。」
クロムもメラスを背負いながら続く。
「ミーア、とりあえずは様子を見るの?」
クロムが問う。
「ん。ロイナもクロムも罪系スキル持ちに特効があるけどあれ程強大な魔物にどれくらい効くか分からない。カインが倒せるならその方がいい。」
「分かった。えっと、ワニ吉だっけ。僕たちの代わりに耐えてくれてありがとね。」
「グォォォ!」
「ワニ吉ちゃんはこの形態だと人の言葉を話せません。多分、『ありがとなのです。』と言ってます。」
「ロイナ、僕たちに敬語はいいよ。奴隷とか気にしなくていいよ。」
「そうよ。私たちにそんなこと気にする人はいないわよ。」
「スースー。」
「ありがとうござ…ありがとっ!」
次は明々後日(3日後)です。




