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魔王との邂逅③

『ふむ。だが姿を見せたくても我、先ほどガス爆発に巻き込まれて死んだのだ。

ここにいる我は亡霊のような状態らしい。

この状態になって動けずに少しの間呆然としていたら、少女が光とともに現れたのだ。

その直後に気を失い、気づいたら今の状態だ。あれはお主であろう?

あと心など読んでおらん。

これはおそらくスキル【伝心】による脳内同士の会話だろう。

通常は契約が必要だが、なぜか我とお主はすでに【伝心】で接続されているようだ。

やっかいなものだな。

だが伝えようとしなければ【伝心】が有効になることは無いはずだ。

試しに自分だけで考えるように思考してみるといいだろう。

そうすれば我には届かんはずだ』


『スキル? 【伝心】? 自分だけで考えるって――』


(こう? これなら伝わらないってこと?

じゃあ試しに……このおじさんの声、すっごい素敵。

たぶんいい人なんだろうなあ)


ナナは【伝心】と自分だけの思考の使い分けをあっさり習得した。

アイマーのアドバイスのおかげだが、試しに考えてみたことがなんともセキュリティ意識に欠けている。

ついでにアイマーの発言に含まれていた、ナナ自身がこの場所に来た経緯に繋がる重要な情報もスルーしてしまっている。


『……なにやら無性に照れる気がするのだが、お主、何か考えたか?』


『な、なんでもないよ! それにしても、ふ、ふーん、ガス爆発?

たしかにこの部屋、爆発が起きたみたいに見えるけどね。

真実を少し混ぜると嘘が本当に聞こえるっていうけど――おじいちゃんとお兄ちゃんに散々騙されて笑われた私を舐めないでほしいわ!

そんなことで騙されない!』


『お主の家族はどんな教育方針なのだ……』


早速スキル【伝心】を使いこなしつつも、ガス爆発は疑うナナ。

ナナは一応、自分が騙されやすいことを自覚しているのだ。

祖父と兄に鍛えられた警戒能力をアピールする。

相手の言うことを全部鵜吞みにしてはいけないと散々言い聞かされたのだ。

かと言って一部ならいいというわけでもないのだが。


『あれ? でも魔王が爆発で死んだというのなら……大丈夫? 痛くない?

あ、死んだのなら大丈夫じゃないよね、痛かったよね、ごめん。

――はっ!

ってか魔王がいるってことは、ここは地球ですらない!?』


ナナは舌の根も乾かぬうちに(脳内会話で)アイマーを魔王と呼んでしまい、そしてその瞬間から彼を魔王だと信じ、彼の発言まで無条件に信じ始めている。


……ナナはその………そう、けっこう真っ直ぐな性格なのだ。


祖父や兄の苦労がしのばれる。

だがその苦労は決して無駄ではなかった。

寸前のところでナナを思いとどまらせることに成功するのだ。


『いや、まてまて。

まてまてまてまて、まてぇえええい!』


『……今度はなんなのだ』


突然、歌舞伎俳優のような調子でまったをかけるナナ。

歌舞伎を見たことは無いが、ナナはけっこうノリがいいのである。

そして呆れるアイマーを無視し、ナナは衝撃的な推理結果を突き付ける。


『こ、これはたぶん、魔王魔王詐欺だ!』


『⁉ 阿呆かぁ‼ そのような一名限定の詐欺、魔族領でも成り立たんわぁ‼』


ナナは祖父と兄に仕込まれた、対オレオレ詐欺警戒能力の、誤った用法を爆誕させた。


『声がいつもと違うと言っても、風邪ひいてるとか言って強引にだましてくるやつだよ、これ。

でも知り合いに魔王いませんって言うと、すぐ電話切るんだよ、この人たち』


アイマーの渾身のツッコミはスルーされ、ナナによる独自の名推理?が展開中である。


『……デンワ? 【伝心】のようなものか?

やはり、言葉は通じるが、微妙に知識範囲がずれておるな。

しかし我の知り合いか。

話すと言っても部下ぐらいだが……あいつら、詐欺師に騙されんだろうな……』


あまりに明後日の方角からの指摘に、さすがのアイマーも調子を乱される。

自分は死んでしまったし、部下たちも意外にぽっくり騙されてしまうのではないか。

アイマーはツッコミを忘れて、ちょっと心配になってきた。


『あれ? でも、知り合いに魔王がいまーすっていう人、どれだけいるんだろう。

この詐欺成り立つの?』


素朴な疑問を呈するナナだが、実はけっこういる。

魔王城勤務の魔族だけでも数万人はいる。

ナナの言葉に踊らされて、アイマーは一気に不安になってきた。


『いや、いやいや、大丈夫である…はずだ。

幸か不幸か今は魔王城に誰もいない。

詐欺師もびっくりな程に大丈夫だろう。

なにせ我の食事も1か月出てこなかったぐらいだ。

詐欺師対策ばっちりではないか!』


アイマーは残念なことを誇らしげに語った。

次の瞬間に悲しくなったが。


実は故あって、しばらく魔王城に勤務する魔王軍は出払っていたのだ。

そしてあろうことか、魔王の食事のことを考える者が誰もいなかったのである――非常に残念なことに、アイマー自身を含めて。

つまり爆死直前、アイマーは飢餓で瀕死の状態だった。


『あ、でも地球じゃなくて……小説みたいに、異世界なら成り立っちゃうのかな?』


(異世界だと? もしやこやつ、異なる次元宇宙から転移してきたと申すのか?

しかし一体どうやって! できるわけがない。

……いや、極大魔力を用いて転移すれば……無いな。

魂だけでもあれだけの出力が必要なのだ。

肉体ごと次元を超越するような大出力など想像もつかん。

それも、肉体を傷つけないように保護しながら制御するだと?

そのようなこと、世界最高の魔導士である我が、たとえ100人おっても、1000年かけたとしても、不可能であるわ!)


アイマーはナナが異世界から転移してきたという真実にたどり着き驚愕したが、それが実行不可能なことであるという否定の結論しか導き出せなかった。


『そうだね、うん。

すっごい魔王城っぽいところにいるから、魔王魔王詐欺も成功しやすいのかもしれない。

……駄目よナナ! だまされちゃダメ。

うん、ダメ? あれ?』


アイマーが鋭く真実をかすめている一方、ナナは自らの名推理(笑)の波に巻き込まれて絶賛混乱中であった。


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