表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/76

盗賊退治①

「こんなに簡単に見つかる場所をアジトにするなんて、あなたたち、馬鹿なのかしら!」


ミイアが火魔法でアジトに火をつけてすぐ、怒号を上げながら迫りくる盗賊たちに向かって、ミイアが煽った。

それに対して、盗賊の頭目、毛皮鎧がうんざりしたような態度を返す。


「あぁ? ガキ3匹だとぉ? バカはてめぇらだろうが! めんどくせぇ。

俺達の後ろに誰がいると思ってやがるんだぁ?

場所が割れたところで、ここには誰も来やしねえんだよ!

いたぶられるのが趣味な馬鹿以外はなぁ!」


「…何ですって? どういうことかしら?」


毛皮鎧のセリフに含まれる不穏な情報に、ミイアが眉をしかめる。


「おっと難しかったかぁ? ま、小便くせぇメスガキより俺の方が賢いってことよぉ!」


「お頭ぁ! その通りだけんども、臭いって意味じゃあ俺達もいい勝負でさぁ!」


「そりゃあちげぇねぇ! がはははは!」 


ミイア質問を利用して煽り返してくる盗賊たち。

あからさまな安い挑発ではあったが……ちょっと沸点が低めのミイアがまんまと引っかかる。


「ほ、ほほぉ? いったいどういう意味かしら?

あなたたち訂正なさい‼ さもないと燃やしますわよぉ!」


ミイアは、こめかみに青筋を浮かべながら、巨大な炎の玉を魔法で生成し、盗賊に向かって吠えた。

揺動のために自分から煽ろうとしていたことと、毛皮鎧から情報を引き出そうとしたことは、すっかり頭の中から消えている。


「「「いや、馬鹿かお前! もう燃やしただろ!」」」


「「いや、もう燃やしてるっす!/燃やしてます!」」


ミイアの言葉に、背後で燃えている小屋を指さして、盗賊達が一斉に突っ込む。


…リアムとアレンも、なぜか一緒につっこんでいる。


「……オ、オホン」


敵味方に関わらず総ツッコミを受けてしまったミイアは、数秒黙りこくったあと、咳払いをして。


「じゃあ…」


といってアレンを見る。


「え…? まさかっすけど、ミイア様それを俺に投げるつもりっす…?」


……ミイアはアレンを見つめたまま動かない。

アレンはミイアに見つめられることに喜びを感じつつも、無言でほほ笑むミイアの様子に、だんだん焦りを感じてきた。


助けを求めてリアムを見るが、すーっと視線をそらされてしまう。

アレンの顔が青ざめる。そしてその縋るような目線は盗賊に向けられる。


「「「いや、こっちに振んなし!」」」


アレンの視線に誘導されて、ミイアが再び盗賊達をロックオンする。


「わたくしは、小便臭くなんて、ありませんのよぉおおおお!」


そして、杖の先に生成した巨大な炎の玉を、さらに大きくしながら、怒りに任せて思いっきり盗賊の方にぶん投げた。


≪ドゴォォォォォン‼≫


「「「ぎゃああぁああああ!」」」


そんなこんなで戦いの幕は開けたのだった。



    ◇



(レニ⁉ なぜここにレニが⁉)


ナナによって提供された「喰人草の疑似餌」のおかげで大幅に体力を回復させていたグランは、ナナ言いつけを破り、こっそりナナの後ろから追ってきていた。

もちろん病み上がりのグランではナナの速度に追いつくことはできなかったが、距離が短いこともあってなんとか追跡することができていたのだ。

普段ならナナかアイマーが気づきそうなものだったが、2人とも前方を意識していたため、グランの尾行には気付かなかった。


そしてグランが森を抜け、アジトとその横に潜むナナが視界に入った時、聞き慣れた幼女の悲痛な声が聞こえた。


一瞬でグランの心が恐怖に凍り付く。

大切な妹が、なぜこんな危険な場所にいるのか。


(くそ! どうにかレニを守らないと!)


そうグランが思った刹那、なぜか前方の黒髪の少女が急に膝を突き、少し痙攣したように苦しんだあと、その場に倒れた。


(お、おい! 急にどうしたんだ⁉)


グランは慌てて少女に近づいて呼吸と脈を確かめる。

とりあえず生きていることを確認してほっとした後、肩を揺すったりしてみたが目を覚ます気配はなかった。

レニが心配な状況であまり時間をかけるわけにもいかない。


(だが、この子は俺たちの命の恩人だ。このまま捨て置くことはしたくない……)


そう考えたグランは、アジトから少し離れた、廃材が積み重ねてある場所に少女を運び、もたれかけるように座らせる。


(ここなら火も届かないし、そうすぐに見つかることもないだろう)


そしてすぐに踵を返し、レニの声が聞こえた方向を物陰からそっと伺う。

そこでは3人の少年少女がレニともう1人の男性――リッドを守って戦っていた。


(リッドまで⁉ いったいどんな状況なんだ? だがあのままじゃレニが危ない……)


だが多勢に無勢。

今はなんとか対等……と言うより少々優勢に戦っているようだが、盗賊達の様子にも余裕が見て取れる。

とても勝てるようには見えなかった。


(こうなったら……やるしかない!)


グランは石をいくつか拾いつつ、アジト側面の森の中を通って少しアジト前方側に移動し、ちょうど戦闘中の盗賊達の側面辺りにたどり着く。

そしてあたかもたった今、森の中から出てきたように装って、わざと声を張り上げながら盗賊に投石する。


「おらよっと! これでも喰らいやがれ!

やっと全員出られたぜ! ざまあみやがれってんだぁ!

ってなんだぁ⁉ お前らこんなにいたのかよ!

や、やばい、お、おい待ってくれみんな! 俺もやっぱり逃げるー!」


と叫び、村人が隠れているアジト後方ではなく、今出て来たばかりの、アジト側面の森に向けて走り出した。


グランのセリフを聞いた盗賊達が驚き、慌てて燃えるアジトのまだ辛うじて無事な入口を開け、内部を確認して大声で報告を上げる。


「カシラぁ! 奥の壁が破られてらぁ!」


「ンだとぉ⁉ おいてめえら、さっきの馬鹿を追え! 殺すんじゃねぇぞぉ‼」


その報告に怒った毛皮鎧が怒号を発した。

これに5名ほどが反応してグランを追いかけていく。



    ◇




ponの小説を読んでくださってありがとうございます!

読んでいただけるだけでも嬉しくて、とっても励みになっています!


もし少しでも「続きが気になる」とか「面白い」とか思っていただけたら、

この下にある★★★★★を押して、応援してくれると本当に嬉しいです!

ブックマークやいいね、ご感想もお待ちしております。


また、SNSでのご紹介も大歓迎です!

よろしくお願いしまーす!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ