一話
ここは捜査本部、もちろん日本人大量殺人のためのものだ。捜査本部は約30人、この人数の少なさは警察が予告状を半信半疑なことが伺える。
それに加えて今日は本部の中心人物だけの会議となっていて、4人だけの会議だった。
ここでは予告状の差出人の特定と、明日の対策をしていた。しかし、世界各国での殺人予告となると各々に注意を呼びかけるぐらいしか方法が無い。つまりすべきことは差出人の特定なのだ。
「以上は分かったな。」
捜査本部長の唐田巧は若干声を荒げていた。
「現在での手がかりは消印がアメリカ、それなのに日本語で書かれていたこと。それと、明後日という予告の仕方だ。」
「差出人は日本人で間違いないでしょう。部長!」
「文字を見たところかなり達筆ですしね。」
荒俣恭二の意見に川原三雄が付け加えた。
「しかしそれだけでは、判断できないだろう。」
「部長!それよりも“明後日”のほうが問題では!」
部長の補佐を務めている桑端雅之も怒鳴るように言った。
「そう。アメリカと日本では時差がある。どちらの時刻か、というところだがマスコミは完全に日本での“明後日”と決めつけている。何故差出人はハッキリした予告をしなかったのだろうか……。」
やはりイタズラだったのか?そんな考えがふと浮かんだ。
そのとき、
「イタズラなら良いんですけどね。」
と川原が言った、と同時に桑端が睨みつけた。
部屋の中は静まりかえった。
「すいません。」
荒俣が深いため息をついた。
「今日はもういい!これで解散だ!各自で対策をしろ!」
唐田が3人を怒鳴りつけ、部屋から出ようとした。それを追いながら桑端がきいた。
「部長、対策といっても何も出来ないんでは……。」
「うるさい!よく考えてそれをすぐに実行したらいい!形の上で対策が出来ているということになったらいいんだ!」
「しかしそれでは効果が……。」
「そんなことはどうでもいい!」
「部長!」
「桑端さん。もういいんじゃないですか?」
「そうです。海外にいる者には出来るだけ帰国を呼びかけて、明日は出歩くのをひかえるようにしたら……。」
桑端は深いため息の後口を開いた。
「分かったよ。それでいこう。」