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15の春 未来を奪われた俺達が絶望の中見つけた希望は○年後に花開く  作者: 汐野悠翔


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12年越しの再会

俺は慌てて廊下に出ると、廊下を走って行く女性に向かって大声で叫んだ。


「櫻井真奈っ!」


すると、女性はピタリと足を止めてこちらを振り返る。

その視線が絡まった瞬間、俺は核心した。

今目の前にいるこの人は、ずっと待ち続けて来たその人だと。

昔の面影を残しつつも、綺麗な大人の女性に成長した真奈との再会に、胸の鼓動が高鳴るのを感じた。



「やっと……やっと会えた………」



俺の口から洩れた素直な言葉。

俺は一歩、真奈に向かって歩みを進める。

と、真奈は怯える子犬のようにビクンと小さく肩を震わせた。

そしてまた一歩、俺が歩みを進めた次の瞬間、真奈は再び俺に背を向け、逃げるように走り出してしまった。



「あっ……真奈……どうして逃げるんだ? 俺だ、佐々木浩太だ。俺の事忘れたのか?」



俺も慌てて、離れ行く真奈の背中を追いかけ走り出した。


夢の中、何度も見ていた光景と重なる。

12年前の地震の日、昇降口で最後に見た真奈の背中に「行くな」と必死に叫びながら追いかけ続けたあの夢の光景と――


そして夢の中では一度も掴まえられないままいつも目を覚ましていた。


でも今日は、今日こそは捕まえてみせる。12年間ずっとずっと待ち焦がれて、やっと巡り会えたんだ。絶対逃がしたりなんかしてやるもんか!

俺は全速力で真奈の背中を追いかけた。


真っ直ぐ続いた廊下の突き当たり、真奈が大きくカーブを描いて左に曲がる。

その先にあった階段を下りて1、2段目の所でやっと俺は真奈に追い付き、彼女の腕を捕まえた。


そして乱暴にその腕を引っ張って、彼女の体を階段から引き上げ、自分の方へと引き寄せる。

勢いのまま、真奈の体が俺の方を向いた。



「やっと……やっと捕まえた」

「………っ」



目の前に迫った真奈の顔を俺は真っ直ぐに見つめると、やはり真奈は怯えた様子で肩を震わせながら

視線を俺から斜め下へと逸らした。



「何で……逃げるんだよ。俺の事……忘れちまったのか?」


全力疾走の後、整わない呼吸で何とか吐き出した俺の質問に、真奈は暫く黙りこんだ後、小さく首を横に振った。



「じゃあ、どうして? 俺の事が嫌いになったのか?」



真奈はまた小さく首を横に振る。

沈黙の後、俯きながら声を絞り出すように真奈は口を開いた。



「浩太の事、忘れた事なんて一度もなかった。嫌いになんか……なれるわけない……」



その声は今にも泣きそうな声で、震えていた。



「……じゃあどうして、逃げたんだ?」


「……かったから……」


「え?」


「怖……かったから……」


「…………怖い?」



思いもよらない答えが返ってくる。

俺は慌てて真奈の腕を握りしめていたその力を緩めた。



「わ、わるい………」


「あ……違うの、そういう意味の怖いじゃなくて……」



真奈が何かを言いかけた時、階段の下の方から数人の賑やかな話声が聞こえてきる。

その声は徐々に大きくなっていき、どうやら階段を上ってこちらに近付いてきているようだ。



「あ、どうしよう、私……部外者がこんな所まで入ってきちゃって……なんて説明すれば……」



人と鉢合わせるかもしれない状況に、一人慌てる真奈。そんな彼女を落ち着かせようと、俺は掴んでいた真奈の腕を引いて、もと来た道を戻って行く。



「真奈、こっち」


「え? 浩太? どこ行くの?」



戸惑いを示す真奈に、構わず俺はギュッと彼女の腕を握りしめながら、生徒会室を目指して走った。



生徒会室に入るなり、入口の扉を締めて、互いに締めたばかりの扉にもたれかかる。

荒い呼吸を繰り返しながら、どちらからともなくそのままずるずると滑り下りて行く。


「はぁ、はぁ、はぁ、ああー疲れたー。この歳で久しぶりの全力疾走はきっつーー」


「わ……私も……」


未だ整わない呼吸と、床にへたり込む互いの姿に、どちからともなく笑い溢れる。


ほんの一瞬、12年前の俺たちに戻れた気がしたが、そんな和やかな空気も、先ほど階段下から聞こえていた話声によってすぐさま打ち砕かれた。


遠かったはずの声と足音が、どうやら生徒会室のある四階の廊下まで迫って来ていたのだ。


先程の笑顔が嘘だったように、緊張で顔を強ばらせる真奈。

その姿を隣で見ながら、俺は大丈夫だと伝えたくてそっと彼女の手を握った。



「大丈夫、大丈夫だ真奈。俺がついてるから」



真奈は一瞬驚いた顔でこちらを見ると、コクンと小さく頷いて、俺の手を握り返してきた。


それ以上言葉を交わす事はなく、俺達はいつの間にか薄暗くなってきた生徒会室の中、じっと息を潜め、外から聞こえる足音と話声に耳をすませた。

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