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15の春 未来を奪われた俺達が絶望の中見つけた希望は○年後に花開く  作者: 汐野悠翔


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32/47

記念撮影

それから幾分もせずに卒業式の全日程が終了する。


「以上をもちまして平成23年度卒業式を終了します。卒業生退場。皆様拍手にて卒業生をお送り下さい」



式を終え、見守ってくれた在校生や親達に見送られながら俺達は退場して行く。

体育館を出るなり手渡された卒業アルバム。

卒業アルバムを見つめながらやっと卒業を実感する。

この時を最後に、俺達は皆それぞれ別の道を歩き出す。

こいつらと当たり前に顔を合わせる事も、もう叶わない。


やっぱり……全く寂しくないと言ったら嘘になるか。

不意に込み上げてきた寂しさに俺は慌てて上を向いた。



「…………あっ」



と同時に、一つの妙案が閃いた。



「? どうした、浩太?」



突然立ち止まった俺に、後ろを歩いていた祐樹から声が掛かった。



「閃いた!」

「おまっ、また?!」



祐樹の戸惑いに気付かないふりをして、祐樹に向かってニッと悪戯に笑ってみせる。



「ちょ~~っと待った~~~~!!」



そして腹の底から大声を張り上げて、退場して行く卒業生達の歩みを今一度止めさせた。



「どうした、どうした?」



進まなくなった列に、何事かとざわめき出すクラスメイト達。

その列を体育館の中へと押し戻そうと、俺はくるりと回れ右をして、列を逆走しながら体育館に向かって走り出した。



「お前等~~~これが本当に最後の最後! 皆で特大の思い出作りしようぜ!!」



そう触れ込みながら卒業生全員を体育館へと再び押し戻して行く。

退場したはずの俺達がまた体育館へと舞い戻ってきたのだから、体育館の中で見送っていた側の在校生や先生、親達からは驚きと戸惑いの視線を向けられた。



「お前達っ! 何戻って来てるんだ!?」



俺達の奇天烈な行動に、数人の先生達が慌てた様子で掛け寄ってくる。

俺はそんな先生達から目をつけられないように、目立たないようにと腰を屈め、こっそり列を抜け出し、こっそりと壇上へ上る。

そして、先程答辞の時に使用したマイクを手に取り、一度大きく深呼吸すると



「先生~~~~~!本当にお別れする最後の最後に、ここにいる全員で記念写真撮りたいんだけど~~~~~~~ダ~~~メ~~~~~??!」



マイク越しに大きな声で叫んだ。

俺の絶叫に、その場にいた全員が驚いた様子で耳を塞いでいた。



「……………浩太っ、お前は! 最後の最後まで卒業式を目茶苦茶にしやがって~!!」



見たことない程の鬼の形相で杉崎先生が壇上へと上ってくる。



「記念写真とろうよ!先生!」



それでもなお、俺は懲りる事なくマイク越しに大声でお願いする俺。

俺と先生の壇上での追いかけっこに、多くの人から笑いが起こっていた。



周囲に笑われながら、俺と杉崎先生が追い掛けっこをしている間に、気が付けば生徒達を筆頭に、卒業式が行われていた時と同様の綺麗な列が体育館の中には形成されていた。



「ほら、言い出しっぺの浩太も遊んでないで早くこっち来いよ。撮るんだろ? 最後に皆で記念写真」



祐樹が俺を呼ぶ。



「杉崎先生、あなたも早くこちらへ来なさい」

「校長先生……」



突然の校長の呼び掛けに驚いた様子の杉崎先生。



「ねぇ先生、これって校長先生からお許しが出たって事だよな?」

「そう……みたいだな。ほら浩太、俺達も行くぞ」

「何だよ先生、さっきまであんなに怒ってたのに、案外のりのりじゃん」

「実を言うと、俺も本音では浩太の提案に乗って、今まで散々苦労かけられたお前達との最後の思い出を、何か形に残したかったんだよ。教師としては一応、形だけ怒るふりをしてみた」

「何だそれ」


杉崎先生と俺は互いに顔を見合わせてニッと悪戯に笑いあった。

俺達も皆の中に加わって、いざ記念撮影!



「よし!じゃあ撮るぞ~……って、あれ? そう言えば誰が撮るんだ、これ?」



準備を整え、いざ記念撮影!と思ったが、ふとわいた疑問を口にする。



「……お前なぁ~」



呆れた声で祐樹が怒った。

と、その時



「僕が撮りますよ」



大きなカメラをぶら下げた一人のおじさんが名乗りを上げた。



「菊池のおじさん! おじさんが撮ってくれるの? 本当に?」

「えぇ、僕でよければ是非撮らせて下さい」



そう言って優しい微笑みを浮かべるおじさん。



「君達のおかげで……僕はまたお店を再開したいと思う事が出来ました。津波で妻を失い……この先の未来に絶望を感じていた僕に……君達が写真屋と言う仕事の誇りを思い出させてくれました。やっぱり僕は、一瞬一瞬の思い出を刻みつける事が出来る写真が大好きなんだと。同じく写真が好きで共に店を守ってきてくれた妻の分も、この仕事を続けて行きたい、行かなければならないと。僕はまた夢をもつ事が出来ました。ありがとう」

「……おじさん」

「だから写真屋として……また一からやり直す最初の仕事として、君たちの大切な思い出を、僕の手で撮らせて欲しいんだ」



そう言って、首から下げていた大きなカメラを構えるふりをして、また菊池のおじさんはニッコリと優しい微笑みを浮かべた。



夢に向かってキラキラ眩しい笑顔を浮かべるおじさんの姿に嬉しくなって、俺もおじさんにつられて笑顔が零れた。



「おじさん、また頑張ってお店再開させてね。じゃあ、記念すべき復帰後初の仕事、お願いします!俺達の旅立ちの記念に、素敵な写真を撮って下さい!!」



深々と頭を下げて、おじさんにカメラマンをお願いした。

笑顔で承諾してくれたおじさんの後ろ姿を見送りながら、俺は嬉しくて仕方なかった。


俺達の行動が、一人の人間の原動力へと繋がった。

その事実が。




「は~い、それじゃあ行きますよ~~。皆さんカメラに向かって最高の笑顔を向ねて下さい。撮りますよ~、せ~の! はいチ~~~~ズ!」



体育館の隅にかけられていた梯を登って、体育館の東西南をぐるりと囲うように作られた2階部分の通路から、俺達に向かって大声で合図を送る菊地のおじさん。


壇上の壁に飾られたフォトモザイクアートを背に、カメラに向かって俺達はおもいおもいのポーズを決めた。


今この瞬間を、一生忘れられない大切な思い出として写真におさめたくて、満面の笑顔を浮かべながら。



「もう一枚行きま~す! ほらほら笑顔が強張ってきました。もっと笑って笑って。はいチ~ズ!」



“カシャー”



カメラの機械音が体育館に響く。

その音を合図に、俺は再び大きな声を上げた。



「今までお世話になった皆さん! 本当に本当に……ありがとうございました!!」



すると――



「「「ありがとうございました!!!」」」




何の打ち合わせをしたわけでもないのに、俺の言葉を待っていたかのように、体育館中から卒業生達の息のあったありがとうの言葉がこだまする。



――こうして俺達の、ハチャメチャながらも心に残る卒業式は、無事幕を卸した。



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