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15の春 未来を奪われた俺達が絶望の中見つけた希望は○年後に花開く  作者: 汐野悠翔


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みんなの力で

「あ、杉崎先生いたいた。ねぇ先生~ちょっと良い? 俺達先生にお願いがあるんだけど」



集会が終わったその足で、俺と祐樹は担任であり生徒会顧問である杉崎先生を探しに職員室へとやって来ていた。



「げっ……浩太と祐樹が揃ってお願いに来るなんて、嫌な予感しかしないんだけど。悪い、先生用事思い出したからまた後で――」



何かを察したのか、俺達から逃げるように席を立つ先生の両脇に回り込み、俺と祐樹は先生の肩に腕を回した。



「ちょっと逃げないでよ先生。可愛い生徒が先生を頼って会いに来てるんだからさぁ」

「浩太の“お願い”はろくな事じゃないだろ?」

「そんな事ないよ。ただ俺達に体育館を頂戴ってだけ」

「………は? 体育館を頂戴? 何言ってるんだお前??」

「バカ浩太。その言い方だと語弊があるだろ」

「いてっ」



俺の頭を先生の肩越しに叩いた裕樹が俺の言葉を訂正する。



「卒業までの数日間、体育館の使用許可を俺達に下さい、先生」



訂正した裕樹の言葉にやっと納得した様子を見せた杉崎先生。

だが、その顔は酷く渋い顔をしていた。



「使用許可って………この災害時にか?」

「はい。卒業式までにどうしてもやりたい事があるんです。だから、体育館で避難生活を送ってる人達を他の場所に移してもらって、卒業式までの数日間、俺達東一中生徒に体育館を使わせて欲しいんです」

「やっぱり体育館頂戴であってるじゃないか、祐樹」

「バカは黙ってろ、浩太」

「いてっ」



祐樹から二度に渡って頭を叩かれた俺は、ぷうと頬を膨らませた。

そんな俺の不機嫌さなど気にも止めずに、裕樹は必死に先生の説得を続けた。



「お願いします先生、俺達に体育館を使わせて下さい!」

「そう言われてもな、体育館には100人以上もの人達が肩を寄せあって避難生活を送っているんだ。その人達を生徒の我が儘で追い出すなんて事、出来るわけがないだろ。また一体何をしでかすつもりなんだ、お前達は?」

「浩太なりに色々考えたらしいんです。こんな時だからこそ、この町の人達を励ますような活動がしたいって。その為にどうしても体育館を使いたいんです。確かにこれは俺達子供の我が儘かもしれない。けど、子供は子供なりに精一杯この状況を打開したくて頑張ってるんです。それだけは分かって欲しいです」

「…………そうか、分かった。お前達がお前達なりに何かを頑張ろうとしている事はよくわかった。けどな、現実問題……なぁ……」



理解は示してくれつつも、やはりなかなか首を縦に振ろうとはしない杉崎先生に、裕樹は強気の作戦に出た。



「じゃあ逆に聞いても良いですか、先生」

「な、何だ?」

「浩太からは近々延期していた卒業式をやるつもりだって聞きましたけど、その“卒業式”は体育館でやるつもりじゃないんですか? 先生達は卒業式とその準備の間、あの人達をどうするつもりだっんですか?」

「それは……」

「何か考えがあったんじゃないんですか?」

「それは………確かに無いこともないが………移動してもらうのには何かと準備が必要なんだよ」

「じゃあ、今すぐ準備して下さい」

「祐樹、お前ねぇ、簡単に言ってくれるけど俺達教師も、他にやらなきゃいけない事がいっぱいあって、今はそっちに手が回せないんだよ」

「じゃあ先生達がやろうとしてた準備を俺達が手伝います。先生達が考えていた方法を教えて下さい! 本当に、数日だけで良いんです。数日だけ体育館をどうか俺達に使わせて下さい!」

「…………」

「お願いします! 舞台がある前の半分だけでも良い。いや1/3でも……なんだったら舞台上だけだって構いません。お願いします先生」

「お、お願いします!」



先生に向けて頭を下げて何度も何度もお願いする裕樹の姿に 、俺も慌てて頭を下げた。



「ん~~~~…………」



それでも杉崎は難しい顔で唸っているだけで、なかなか良い答えをくれなかった。

その間も俺達はずっとずっと頭を下げ続けた。




「……………分かった。学校側やこの避難所の管理を任されてる町場職員の方には俺から掛け合っておくよ」

「ホントに?!」

「本当ですか?!」



ずっと難色を示していた杉崎からの、やっと貰えた前向きな返答に、俺と祐樹は嬉しさのあまり勢いよく顔を上げた。



「但し!」

「「……但し?」」

「舞台上だけだ。体育館で避難生活を送っている人達にはお前達の口から説明すること。それから夜7時以降は作業をしない事。昼間以上に夜の作業は迷惑になるからな。それから一時的に移動してもらう人達の仮の避難場所の準備もお前達が責任を持ってやるんだぞ。東校舎に今物置になってる空き教室があるから、そこの荷物を移して、掃除までちゃんとやってから移案内するんだ。その3つの約束を守れるなら――」

「ありがとう先生! 恩に着る!!」

「ありがとうございます! 杉崎先生!」



先生からの許可を得るや否や、俺と祐樹はバタバタと慌ただしく職員室から走り去って行く。



「あ、こらお前等、人の話は最後まで聞け!」



先生の怒鳴り声を背中に訊きながら――



職員室を後にした俺達は、その足で体育館へと向かった。他の三年の力も借りて、体育館で避難生活を送る人々に体育館の使用を認めてもらう為、手分けして一人一人丁寧に説明して回った。


俺達の話に理解を示してくれる人がいる中で、迷惑そうに嫌味を口にする人もいたけれど、何度も何度も頭を下げて粘り強く説得を続けた結果、丸1日かかってやっと体育館の舞台上の使用許可を得る事に成功した。



***



俺達3年が場所の確保に奮闘している間、他の生徒達もそれぞれに動いてくれていた。


まずフォトモザイクアートに使う写真収集を担うチームには主に1、2年生があたってくれていた。

彼、彼女達は効率化を考え、探す地域をいくつかに区分し、それぞれの持ち場を二人一組となって探索にあたってくれた。


学校を基準に南側の、海に近い地域は津波の被害が大きく、散乱した瓦礫の中から探し出して来ただろうアルバムや写真が多かった。

それら泥のついた写真は一枚一枚丁寧に水洗いし、天日干ししてできる限り綺麗な状態へと戻して使用した。

本当は持ち主の許可を得てからフォトモザイクアートに使いたかったのだけれど、こんな状況下ではそれは難しくて……逆に、津波で流された写真を探して集め、フォトモザイクアートを作っていると言う事実を周囲に広める事で、写真の持ち主を探す事を考えた。



学校より北側の地域は津波の被害を免れた家が多く、震災後も自宅で生活を送っている人達の元を一件一件根気強く尋ね歩き、写真の提供をお願いして回った。

勿論断られる事も多かったようだけれど、中には面白そうだと協力を示してくれる人もいて、皆の苦労のおかげで写真は少しずつ、でも順調に集まって行った。



***



震災前の元気だった町の写真を集める一方で、写真収集チームの中には、震災後の傷付いた町の写真を撮って回る撮影部隊も存在していた。

撮影部隊は主に、津波の被害を間逃れた学校の北側の地域に住む生徒5、6人が、自宅からデジカメを持参して活動にあたってくれていた。


撮影部隊は、津波で何もなくなった広大な土地や、散乱した瓦礫の山、家の跡地で途方に暮れる人の様子、家を失った多くの人が肩を寄せあい避難生活を送る避難所の様子など、震災後の今現在の町の様子を淡々と写真に収め、記録してくれた。


けれど、撮影隊が集めてくる写真は決して、震災が残した悲しい傷痕ばかりではなく、苦しい生活を強いられる中にも生まれる、楽しげな人々の笑顔や、逞しい表情の数々も納められていた。


それから自衛隊や海外から派遣されて来た外国の人々や、ボランティアとして駆けつけて来れた多くの人々の優しさや、役場や学校の先生達等、辛く苦しい中でも懸命に働く沢山の大人達の頑張り――


沢山の“今、この瞬間”が写真にはおさめられていた。



***



それら生徒達が手分けして集めた写真は、一度パソコン室へと持ち込まれる。

パソコン室では集められた写真をデータ化して、それを元にフォトモザイクアートの経験者である一年の女子、司を始めとした美術が得意な生徒達が、フォトモザイクアートのデザインからシミュレーション作業を行っていた。


それら作業にはどうしてもパソコンが不可欠で、電気の止まった困難な状況の中、体力自慢の運動部員達が己の肉体だけを頼りに人力で発電し、彼女達の作業をサポートしてくれていた。



***



そして、彼女達シミュレーションチームの細かな指示を受けながら、最後に俺達三年が体育館で実際に写真を貼る仕上げ作業を担った。



***



壁に貼られた写真が増えれば増える程に、人の感心を集め、俺達の活動は噂となって周囲に広まって行った。


最初は一中生徒三十数名で始めた活動だったが、噂が噂を呼び、少しずつ生徒の協力者も増えて行った。



生徒意外にも――

わざわざ写真を提供しに尋ねて来てくれる人。

「頑張れ」と声援を送ってくれる人がいた。

瓦礫の中から見つけた持ち主不明の写真を見に訪れる人も増えて、それに比例するかのように写真の持ち主が見つかる機会も増えて行った。


最初は俺達の勝手な思いつき、我が儘で始めたはずの活動だったが、ふと気が付けば本当に沢山の人達が俺達の活動を応援し、協力してくれるようになっていた。


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