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15の春 未来を奪われた俺達が絶望の中見つけた希望は○年後に花開く  作者: 汐野悠翔


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進路志望②

「お前っ……いつの間に?! 母さんと話してたんじゃ……」

「おばさんは晩御飯の支度があるからって帰ったよ。私は珍しく弱ってる浩太をからかいに来た」

「帰れ! 人が真剣に悩んでれば馬鹿にしやがって」

「ピリピリしちゃって。らしくないなぁ」

「うるせ~。いいからお前、俺の前から消えろ!」

「浩太はさ、何で生徒会長になろうと思ったの?」

「なんだよ急に」

「何で?」

「……何でって、別に……楽しそうだったから? 退屈な学校生活を、会長になったら少しは楽しく出来るんじゃないかって思ったから。まぁ最初はクラスの奴らに無理矢理押し付けらて、仕方なくだったんだけどな」

「いつもの浩太ならさ、どうやって今を楽しくできるかって、目の前のどんな事にも一生懸命に取り組んでたよね。おかげで浩太の代の生徒会はトラブル続きで大変だったけど……」

「嫌々やるより何事も楽しくできたら、それにこした事はないだろ」

「進路だって、そう難しく考え過ぎないで、楽しい事を追求すれば良いんじゃない?」

「…………」

「どんな道を選んだって、選んだ道を浩太なりに楽しめれば良いんだよ。そうやって楽しい事を追求していくうちに、自分の好きなものや、やりたい事が自然と見えてくるんじゃないかな。私はたまたまそれと早い段階で出会えただけ。もしかしたらこの先、他にやりたい事が見つかるかもしれない。将来の夢が変わる事だってあるかもしれない。でも、その度に歩く道を軌道修正して行けば良いんだよ。それまで通って来た道は決して無駄にはならないから。全部全部浩太の中で積み重なって、積み上がった分だけ浩太の可能性がきっと広がって行くはずだよ」

「……」

「だからさ、もし今の段階で将来進みたい道が定められないのなら、高校はそれを探す場所にすれば良いんじゃないかな。高校で色々な事を経験して、自分の未来の可能性を広げる為の場所にすれば良いんだよ」

「可能性を……広げる為の場所?」

「そう」

「でも……何の目標もなく高校に行く事は許して貰えな……」

「だから目標は、浩太が将来やりたい事を見つける事。今の浩太には一日だって無駄に出来ない目標じゃない? あるじゃん。立派な目標が」



そう言ってニッコリ微笑む真奈。

彼女の笑顔を見ながら、それはやっぱり答えを先伸ばしにしているだけなんじゃないかとも思ったが、だからと言って否定ばかりしていては、結局前には進めない。それになにより、ニコニコと満面の笑顔で話す真奈の言葉に、不思議と納得している俺がいたから、だから取り敢えず前に進む事にしたんだ。



「……なんか、とりあえずの答えは出せそうな気がする」

「そう? なら良かった! おばさんもね、本心では浩太の事心配してたんだよ。浩太が夢も目標も見つけられずに苦しんでいるのなら、親として一番力になってあげられる漁師の道を示してあげたいって。でもね、浩太が目指すべき目標を持って、進みたい道を選んだのだとしたら、その時は親として全力で応援するつもりだって」

「……母さんが?」

「うん。おばさんだって、浩太の事誰よりも考えてくれてるんだよ。ただ言葉が足りなくて上手く伝えられないだけで。やっぱり親子だね。浩太もおばさんも、不器用な所は本当にそっくり」

「…………そう……なのかな?」



真奈の指摘に、自分ではいまいちピンとこなくて首を傾げていると、真奈は小さく頷くいていた。

そして、先程までのからかい口調が嘘のように優しい声と笑顔で俺にエールを送ってくれた。



「見つかると良いね。やりたい事」



その瞬間の真奈の笑顔が俺にはとても眩しかった。



「…………ありがとな、真奈。ありがとう――」



気付けばあの日、俺の背中を押してくれた真奈に恥ずかしがって素直に伝えられなかった言葉が、自然と俺の口から溢れ落ちて――



俺は自分の寝言で目を覚ました。

目覚める直前、真奈に向かって送った言葉が真奈に届いたのか俺には分からない。

けれど、思い出を辿っていたはずの夢が、最後に少しだけ現実とは違っていたんだ。

最後に送った俺の言葉に、一瞬真奈が驚いた顔をしていた、そんな気がした。

驚いた後で、嬉しそうに照れ笑いを浮かべていた、そんな気が。


きっと届いたのだと、今は信じる事にしよう。

たとえ夢の中の出来事だったとしても、真奈は今もきっと何処かで生きている。

夢で見た真奈のあの嬉しそうな笑顔が、何故か俺にそんな根拠のない自信を与えてくれた。



夢の余韻に浸りながら、まだぼんやりする視界で俺は机の引き出しを開ける。

そして中から真奈と俺と祐樹の三人が並んで笑っている写真を取り出して眺めた。



挿絵(By みてみん)




「真奈、お前今何処にいるんだ? 過去じゃない今のお前に俺は伝えたい言葉がいっぱいあるんだ。早く戻って来いよ。戻って来てまたお前の笑った顔を見せてくれよ」



俺の呟いた言葉に、当たり前だが誰もいない部屋から返ってくる声はない。代わりに“ぐぅ~”と俺の腹が盛大に鳴る音が響いた。



「…………腹、減った」



どんなに辛くても、悲しくても、寂しくても、人間と言うものは時間がくれば変わらず腹が減るものらしい。自分の正直な腹に笑いが溢れた。


壁に掛けられた時計を見れば、短い針は2時を差し示している。窓の外にはサンサンと輝く太陽の姿が。



「やっべ、寝過ぎた」



どうやら俺は12時間以上も眠ってしまっていたらしい。朝飯を食い逃したのだからそりゃ腹も減るはずだ。ただでさえ育ち盛りの自分にとって、最近のご飯は量が少ないと言うのに。


とは言えこんな時間に配給なんてもうやってないだろう。どうしたものか。


考えている間にも、俺の腹の虫はお構い無しに鳴り続ける。


仕方なく俺は生徒会室の外へと出て、食べ物を探しさ迷い歩いてみる事にした。



――『今の浩太には一日だって無駄に出来ない目標じゃない?』



おっしゃる通り。こんな所に閉じ籠って、くよくよしている時間など俺にはない。地震の後のこんな時でも、俺は俺の将来の為に目の前の事と一生懸命向き合っていかなければならないのだから。


俺は深呼吸して生徒会室の外へと一歩足を踏み出した。



「大丈夫。俺は大丈夫」



そう自分に言い聞かせて、両親いなかなった寂しさを心の奥底にそっと隠し、俺は生徒会室を後にした。



「とりあえず……いつもの配給場所に行ってみるか」



独り言を呟きながら俺は東校舎の階段を下りて行く。

2階まで下りた所で、空中廊下を渡って南校舎に入るとすぐに、杉崎先生とすれ違った。



「おぉ浩太。お前、朝の配給に来てなかったけど大丈夫か? 祐樹が心配して探してたぞ」

「あ、先生。大丈夫だよ。だだの寝坊だから」

「そうか。なら良いんだ」

「それが良くないんだよ。俺、腹減りすぎて死にそうなんだけどさ、配給ってやっぱりこの時間にはやってないよね?」

「だからいつも言ってるだろ。いついかなる時も時間通りに行動しろって。夕方まで我慢するしかないな」

「………ですよねぇ。はぁ~腹減った……」



先生から返ってきた答えに俺はうなだれ肩を落とす。



「ん?……ところで先生、そんな大きなダンボールを抱えてどうしたの?」




肩と一緒に落とした視線に、先生が重たそうに持ってたダンボールが目に付いた。



「あぁ、これか? これはな、お前達の卒業アルバムだよ。そうだ浩太、お前今暇か? 暇だろ! よし丁度良い。お前運ぶの手伝ってくれ」

「え~~?! 腹が減って力が出ないって言ってる俺に肉体労働させんの先生?」

「もっと腹を空かせば、今日の晩飯はまた格別に旨く感じるぞ。ほら、持った持った」



そう言って先生は、俺に強引にダンボールを俺に押し付けて来た。



「重っ!」

「それ、体育館まで運んでってくれ。んで運び終わったら、また職員室な」

「ちょ、先生! 何で俺がこんな事? おい、こら、この横暴教師! 聞いてんのか?」

「じゃ、俺は他にも仕事があるから、後は頼んだぞ~」



俺の訴えを完全に無視して、ヒラヒラと手を振り俺の前から去って行こうとする薄情な教師の後ろ姿を見つめながら、呆気にとられる俺。



一人その場に取り残された俺は



「確かに可能性を広げる為に色々な経験を積み重ねて行こうと思ったところだけどさ、教師に良いように扱き使われるのも必要な経験なのか? あの人絶対、自分が楽したいだけだろ。……はぁ」



愚痴と一緒に盛大な溜息を落とした。



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