プロローグ
この小説は、2011年3月11日。
日本を襲った大地震。
その大地震が影響で伝えられるニュースを見て、書こうと思った小説です。
正直震災当時は載せるべきか、物凄く悩みながら書いていました。
でもこの小説を通して一人でも多くの方に希望を取り戻して頂ければ……そんな想いから書きました。
(それは完全な自己満足でしかないのですが……)
あの震災以降、自然災害が絶えない状況が続いておます。今もコロナと言う大きな壁が私達の日常に立ちはだかっておりますが、あけない夜はないのだと、未来への希望を取り戻す為のお手伝いがこの作品でできたら嬉しいなと思います。
最後に――
この物語は震災に関する沢山の報道を元に作り上げたフィクションです。
実際に経験していない自分には、本当の恐ろしさを理解出来ていないかもしれません。
その点で、不快に感じる事も多々あるかもしれません。
それでも、自分がテレビや新聞を通して見聞きし、感じた事、考えた事を、自分なりに整理して精一杯の形にしました。
暖かい目で見守っていただけましたら幸いです。
願わくば…
人と人との絆が沢山の奇跡を生みますように。
笑顔を
幸せを
生みますように。
そんな気持ちを込めて…
希望~Yell~を贈ります。
――2011年2月14日
バレンタインデー
「はい浩太。バレンタインのチョコレート」
「……へ? 今年はどうしたんだ真奈。毎年俺がどんなにしつこく義理チョコをせがんでも、8年間一度もくれなかったお前が?」
「今年で最後だから。あと一ヶ月もしたら卒業でしょ、私達。そしたら浩太との腐れ縁も終わっちゃつから」
「あぁ、成る程。だから中学校最後のバレンタインくらいは記念にって事か。ありがとな、義理でも嬉しいぜ。おい、見てたかお前ら! 今年ついに俺は、女子からバレンタインのチョコレートを貰ったぞ! 羨ましいか? 羨ましいだろ!!」
「違うよ」
「違う? 違うって何が違うんだよ?」
「義理じゃないよ」
「…………へ?」
「私、浩太の事好きだよ」
「………………はぁぁ〜〜〜?!」
――中学3年のバレンタイン。
俺は15年間生きて来て、生まれて初めて告白された。
小学校生1年の時から、9年間クラスが同じだった彼女――
桜井真奈に。
彼女とは毎日のようにくだらない喧嘩をしてはいがみ合って来た。腐れ縁の女友達。
それ以上でも以下でもない。
大切な友人だと思っていた彼女から突然告白されて、俺の思考回路は一瞬にして停止する。
狼狽える俺を余所に、帰りのHRが終わったばかりの教室には多くのクラスメイト達が残っていて、俺達と真奈の今のやり取りを一部始終見ていた奴らから、一斉に冷やかしの声が上げられた。
「ヒューヒュー、熱いねお二人さん!」
「で? で? 浩太、桜井からの愛の告白の返事は??」
あちらこちらから掛けられる大歓声に、はっと我に返った俺は、我慢出来ない程の物凄い恥ずかしさに襲われて、告白の返事もしないまま一目散に教室から逃げ出した。
この時受けた真奈からの真っ直ぐな告白を、恥ずかしさを理由に逃げ出してしまった己の行動を、後々後悔する事になるなんて、この時の俺はまだ知らない――
人は大切な人を、大切な物を、大切な事を、奪われて初めて気付く、そんな生き物だ。