第8話
白い朝靄がまだ森の中に立ち込めている中、洞窟の拠点で目が覚めた。
「ん~…あぁ…神様のせいでなんか寝た気がしないな…」
「でもお陰で気になることも沢山わかったな…全部夢だったかもしれないから軽い気持ちで捉えておこう…」
とはいえ夢だったとしても、薬草は良いこと聞いたな。早速ゴーレム連れて集めに行ってみるか。
出発前に作業ゴーレムの追加と、機動力を高くした狼型のゴーレムを2体作った。狼型ゴーレムは探索に連れて行って試してみよう。
というわけで薬草を探しに行く為、狼型ゴーレム2体と神様のアドバイス通りに改良した小鳥型ゴーレムを3体、護衛用ゴーレムを2体と運搬用ゴーレムを1体だけ連れて出発した。
狼型ゴーレムには前線で警戒、小鳥型ゴーレムには周囲を飛び回ってもらい、警戒と薬草の探知をしてもらっている。あとは護衛と運搬なので言わずもがなだが、今までのゴーレム全てを、知能特化型のゴーレムと感覚を共有させているので、逐一命令せずとも自立した行動をとってくれている。
「初めて森に入った頃に比べると凄く楽に探索できるようになったな…。」
そして森の深部、まだ足を運んでいないエリアへ進んでいくと、そこには探し求めていた薬草の群生地があった。
この周囲だけ薄らと明るく、神聖な雰囲気さえ漂っている。
が、この辺りを縄張りにしているであろう狼達が周りを包囲していた。しかし小鳥型ゴーレムによる警戒と映像で予め察知していたので、更にその外側から狼型のゴーレムを配置していた。そして一点集中で先手を取らせ、そこに駆け込み、ゴーレム達と包囲網を抜けた。小鳥型のゴーレム達も援護をしてくれ、護衛用ゴーレム達と共に殲滅していく。
そして残すところあと数匹となった頃、1匹の小鳥型ゴーレムから巨大な狼がこちらに向かっている映像が届いたかと思うと、突然小鳥型ゴーレムからの映像が途絶えた。おそらく襲われたんだろう。
そうこうしている内に着いたようだ…木々の間から、バキバキとなぎ倒しながら、悠然と現れた。
「なんて大きさの狼だ…これはさすがにやられるかもしれない…。」
人間を軽くひと飲みにできそうなほどの大きさを持ったその狼は、きっとこの森の主なのであろう。今まで今にも飛びかかってきそうだった狼達が、ボスの指示を待つかのようにすっかり大人しくなっている。
主はこちらを睨み、警戒している。まずは主の周りにいる狼達から倒さないと邪魔をされそうだ。
小鳥型ゴーレムに気を引いてもらい、周囲の狼をこちらの狼型ゴーレムに任せ、主と対峙する。
ジリジリと続く睨み合いの中、パキッと足元で小枝が折れる音がした。その刹那、それがまるで合図かのように、隙を突いて主が飛びかかってきた。
護衛のゴーレムの1体が前に出ている間に、もう1体と共に横に避け、木を盾にしながら弓を射る。前に出た護衛ゴーレムが丸呑みにされてしまったが、それに気を取られたであろう主の前足に矢が深く刺さった。おそらくこれで機動力が削がれたはずだ。その為の犠牲が大きいが…。
しかし気にも止めないような勢いで何度も飛びかかってくる主を、回避し続けている間に、気づかれぬように仕込んでいた運搬ゴーレムの準備が整ったようだ。
主は足の怪我もあるが、口からの血を見るに、どうやら胃袋で丸呑みにしたゴーレムが攻撃しているようで、体力がどんどん消耗されているみたいだ。そろそろ主の限界も近いはずだ。
そう思っていた矢先、主は最後の力を振り絞ったのか、今までにない速さで飛びかかってきた。
先ほどまでと同じように回避をするが、飛びかかったその先に運搬ゴーレムに用意させた大きな丸太で作った杭があり、主の喉元へ深く突き刺さった。短時間であった用意した杭だが、その先端は「返し」がついていて、そう簡単には抜くことはできない。
苦しそうな声をあげる主だが、暴れるせいでどんどん肉が抉られ、しばらくしてその悲鳴も途絶えた。
「ふぅ…何度か死にかけたけど何とかなった…本当に危なかった…。」
主の死体を杭から抜き、体内から飲まれてしまったゴーレムを救い出す。護衛も小鳥もどちらも無事なようだ。
しかしこれほどの巨体、そのままにしておくのは勿体ないので、処理をして運搬ゴーレムに運ばせることにする。
「よし、こんなもんで良いかな…。」
忘れずに薬草も採取し、いくつかは根元から採取し、栽培できるかも試してみることにする。主を担がせているせいで採取できる量は格段に少なくなってしまったが、場所も分かり、縄張りにしている狼達を倒したので、ゴーレム達に来させよう。
こちらへ向かっている頃には予想してなかった疲労を感じながら帰路についた。
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