第2話
木々の生い茂った森の中は薄暗く、風で葉が擦すれる音や、小動物、鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「お、早速こんな所に食べられそうな木の実が幾つかある!どれも小さいけど、食べてみるか!んーっ!これ酸っぱい!お!これは甘くて美味しい!よし、危なそうな獣とかいないだろうし、とりあえずこの甘い木の実を集めながら進んでみよう。喉も渇くし、大きめの果実とか水辺があると良いけど…。」
道中、木の実を集めつつ、どんどん奥へと進んでいく。
しばらくすると、突然開けた場所に出た。
そこには泉が広がっていて、そのすぐ側には瑞々しい果実の実った大樹がそびえ立っていた。
「やった!水辺だ!果実もある!」
歩き通しで喉がカラカラだった俺は、すぐさま泉に近付いた。泉の水は透き通っていて飲んでも大丈夫そうだ。
「ゴクゴク…ぷはぁっ!美味しい!生き返るなぁ…。あの樹に生なっている果実も、頑張って登れば取れそうだ!ちょっと変な色合いしてるけど…。」
周辺の木から蔦を取り、ロープのように上手く太い枝の根元に引っ掛けることが出来た。
「しかし高いな…ほっ!よっと!…ふぅ~。」
蔦や枝を使って順調に登っていき、やっとの思いで果実に辿り着いた。
「なんとか取れたものの、これ本当に食べられるのか?薄っすら光ってるようにも見えるけど…。まぁここまで来たし、背に腹は変えられないな!食べてみよう!」
空腹で我慢出来なかった俺は、太い枝に腰掛けたまま、その怪しい果実に、皮も剥かずにそのまま齧り付く。
「グッ…!?」
辛いような、苦いような、酸っぱいような、弾けるような、とんでもない刺激が、たったひと口で炸裂し、
更に、その驚きで体勢を崩した俺が、真っ逆さまに地面に落下したのは言うまでもない。
「うわぁぁー!!」
ズドン!!
「いたぁ~…くないな……あれ?自分思ってたより頑丈?」
結構な高さから落ちたというのに、擦り剥いた程度で至って平気だった。むしろ我慢出来ずに食べてしまった果実のせいで体内の方が心配まである。
「一応体調も問題なさそうだな…ほんのり身体が温まったような気がするくらいか…なんなんだあの果実…。」
少し泉から離れ、ひと息つく為に木の実を拾っていると、
突然「ギャーギャー‼︎」と、先程の叫び声を聞きつけたのか、化け物が棍棒を持って、目の前に現れた。
「うわっ!!なんだこの化け物!!俺を襲いに来たのか!?」
様子を伺っていると、
「グギャー!!」と叫びながら、手に持った棍棒で襲いかかってきた。
「くっ!!危ない!!」
間一髪で避ける事が出来たものの、今は逃げ回るしか手段がない。
かろうじて足の速さはこちらの方が少し上回っているようだが、森林ということもあり、足元が覚束ない。なので、先程までの疲労も相まって躓き転んでしまったのも仕方の無いことである。
「うわっ!!」
ドサッ‼︎
「グギャギャ…‼︎グギャ‼︎」
すぐに化け物に追い付かれ、棍棒を振り上げられる。
「ヤバい…!!くそぉ!!」
(やられる…!!)
そう思って咄嗟に翳した右手の小指、唯一の持ち物である指輪が視界に入った。
(もうこれしかないっ…発動してくれっ…!!)
「クリエイトゴーレムッ!!」