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レベル上げを開始して1日、二人のレベルはあまり上がらなかった。
と言うのも、戦う相手である魔物があまり見つからなかったからだ。
「こっちが寝てたりしてて会いたくないときには出てくるくせになんで探すと見つからないんだよあいつら~。」
そうぼやいてしまうのも仕方がないだろう。
「一応魔法のスキルレベルは暇な時間で上げれたけどやっぱり実戦でどうなるか試したいよね。」
魔物に会わなすぎて暇すぎて魔法を使って木を穴だらけにしていたらレベルが上がったのだ。
「マスター、提案ですが前に見つけたゴブリンの巣だとおもわれる場所にいくのはどうでしょうか?」
「なるほど、いいかもね。あ、でも場所覚えてないや。」
あのあと、ぼくは特に場所を覚えようなんて思ってもいなかったから全然場所がわからないのだ。
「そうですか…私は一応覚えているので案内できますが、どうされますか?」
ちょっとあわれむというか…可哀想なものを見るような目で見るのは勘弁してほしい。覚える気がそんなになかっただけで覚えられないわけではないのだ。
「ま、まぁとりあえずいってみようか。」
「はい。マスター。」
そんなこんなで僕たちはゴブリンの巣へと歩き始めた。なんていうか、手のひらサイズの小さい女の子を先に進ませるのってなんか罪悪感がするね…
「何を考えてるのか何となくはわかりますが別に私は小さいわけではありませんよ?」
「え?」
僕がそんな間抜けな声をだしたのと同時に、アイのからだに異変がおきた。
からだが少しずつ大きくなっていくのだ。
「え?え?」
「マスター、もともとのわたしの大きさを思い出してください。最初に私と契約したときのです。」
「…そういえばそこそこ大きな水晶玉だった気がするな。」
今目の前にいるのは、さっきまでのかわいらしいちっちゃい女の子ではなく、綺麗なお姉さんだった。そう、お姉さんである。
…具体的にはテルよりも身長が頭ひとつ分程度高い。
「なんというか、全てにおいて負けた気がする。」
「何を言ってるのかよくわかりませんが、あのとき小さくなってビー玉サイズになったわけなので、今私はもとの大きさに戻っただけです。」
まぁ小さい方がらくですが。そう言いながらまた案内を始める。
巣までの道中ではこれまでほぼほぼ見かけなかったゴブリンがいっぱいいた。それこそうるさすぎて音だけで場所がわかるくらいには。
「ゴブリンのなかで集会でもあるのかなぁ?」
半現実逃避のために冗談でそう言ってみる
「どうでしょうか。あいにく私の中に記録されている情報はマスターの眷族になった際にマスターから流れてきた記憶情報とダンジョンについての基本情報、あとは自分のスキルのおおよその使い方くらいしかありませんので。」
「ん?僕から流れてきた情報?」
とても嫌な予感がする。もしも僕の地球での記憶がすべて流れているならとても気まずい。男子高校生的にとても気まずい。
「…おそらくマスターが考えているような情報はありません。この世界に来た経緯や、基本的な知識程度です。」
よかった。この世界に来てから一番神様に感謝したいと思った。
「そんなことを言ってる間に…つきましたね。」
目の前には、前に見つけた洞窟があった。
前に来たときとほとんどなにも変わっていない。
変わったところというと、見張りと思われるゴブリンの数が四体に増えているというところだ。
「さて、できるだけ静かに声を出させずに倒そうか。」
「二体ずつでよろしいでしょうか?」
「うん。それじゃあぼくは左にいくから反対はよろしくね!」
アイはうなずくと、可能な限り音をたてないように小さくなってから右から近づいていった。
テルも同じように逆からこっそりと近づく。
そしてお互いにこれ以上はばれそうだという位置につくと、アイが体を大きくする。そしてタイミングを合わせ、魔法を詠唱しながら走り出した。
「「闇よ、貫け ダークニードル」」
二匹のゴブリンが頭を貫かれて一撃で倒れる。
そして残ったゴブリンが仲間を倒されて声を上げようとするが、
「ふっ!」
片方はアイが接近し、地面に叩きつけるようハンマーのように両手を握って上から殴り黙らせ、もう片方はテルが二度目の魔法で仕留める。
「ギッ!」
小さくうめきながら地面に叩きつけられたゴブリンの頭のに、そのままの勢いで一回転したアイのかかとが突き刺さった。
「え?人間じゃなくね?」
「私たちは吸血鬼ですよ?マスター。」
「いやそうだけど。」
そういうわけじゃないでしょ。動きに無理があるよね?そう疑問を抱いていると、アイが、
「私たちは吸血鬼なので飛べますよね?なので殴った勢いそのままに飛んで一回転してかかとおとししました。」
「そういう意味ね。」
こんどやってみよっかな?
「まぁ片付けたし入ってみようか。」
「そうですね、気を付けていきましょうマスター。」