守るか攻めるか
なんと、人生初めて告白されるという経験をした。
でも、相手はまさかの蓮。
予想外だったし、全く恋愛的感情は無かったから、すっぱり断った。
蓮とはこれまで通り、仲の良い幼馴染としていたいから。
だけどやっぱり、蓮と会うのは気まずいかもしれない。
「琴葉~?今日、図書館いく?」
千春はいつも通り誘ってくる。
海と千春も、こんな気持ちだったのかな…?
そう思うと、あの後も何も変わらずに、元水泳部のイツメンとして図書室で顔を合わせている二人を、少しだけ尊敬した。
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「そういえば、みんなは志望校って決めた?」
図書室では比較的黙って真面目に勉強している海が、珍しく話題を振ってきた。
「そう聞いてくるってことは、決まってるんだ。海は頭いいもんね~」
いいなー、と秋実がくちびるを前に突き出して、不満そうにした。
「秋実、まだ決まってないん?!もう11月になるよ?!」
「え?もうみんな決まってるの??」
決まってる人ーと秋実が言うと、7人の中で手を挙げたのは海、蓮、千春、亜美だけ。
「よかった~。琴葉と拓もまだなんだね」
「まじで?!お前ら推薦受けないの?!」
そう。評定がある程度良い人は、みんなが受ける一般入試の前に、推薦入試がある。驚くことに、推薦入試の本番まで3か月しかないらしい。塾に言われて気づいた。
「受けようと思ってるんだけど、2つから絞り切れなくて」
「えー、初耳。どことどこ?」
亜美が私の方を向いて、食いついてくる。
「…大平高校と第三高校」
「え、ほんとに?」
秋実が予想外、というように目を見開く。
「要するに、守るか攻めるかってことね」
ふむふむ、という風に亜美がうなずく。
「ちなみに、私の志望校は第三高校よ」
「攻める方に決めたんだ…すご」
たしか、私と亜美は同じくらいの成績だったはず。
学力も倍率も高いナンバースクールに決めたのは、素直に尊敬する。
「ほら、私は発表しちゃったんだから、他の3人も教えなさいよ」
「お前が勝手に発表したんだろ…。オレは第一。どうせ海もおなじだろ?」
「ああ。もちろん推薦で行く」
「私は頭良くないから…。水泳の成績使って私立の推薦狙い」
「ここの人たち、頭良すぎぃ。ナンバースクール志望、多すぎでしょ」
心から秋実に同意したい。ここにいる7人中3人がトップ高ねらい、ということである。
「そういえば、拓は?」
亜美が視線を向けると、拓は今まで見たことがないほど無表情で答えた。
「まだ何も」
なんか触れちゃいけないところに触れてしまったようだ。少し空気が凍った気がした。
「なんかゴメン…」
亜美もその空気を察したようで、話題を終わらせるように勉強し始めた。
少し気がかりではあるが、私も受験生としてノートを開いた。
~設定メモ~
ナンバースクール…第一高校のように、高校名に数字が入っているもの。学力も倍率も高いトップ高。