プロローグ
スマホのアラームが朝を告げる。
目を開けると陽射しの容赦ない攻撃にあえなく降参しまぶたを閉じる。
徐々に目を開け、明るさに目を慣らしていく。
手のひらで両頬を叩き、眠気との戦いに終止符を打つ、毎朝のルーティーン。
いつもと変わらない朝。
キッチンからは何かを焼くジューっという音、鼻腔をくすぐる香ばしい匂い、
そう、いつもと変わらない、、、、ん?
いやいやいや、待って、俺、1人暮らしだよね?
じゃあ今キッチンにいるの、、、誰?
自然と足はキッチンへと向かう。
ベッドからはちょうど見えないところにあるキッチンだが、距離で言えば10歩もない。
少し歩くとキッチンは姿を現し、そこには1人の女性が立っていた。
俺の気配に気づいたのか、その女性は振り返った。
俺は唖然とした。
そこには俺が担任するクラスの生徒、雨宮詩音がいた。
「おはよ!先生!」
満面の笑みで、彼女は言った。
驚きのあまり声すら出ず、銅像のように固まる。
ようやく思い通りに口が動かせるようになり、思って当たり前の疑問を口にした。
「なんで、、ここに?」
何も変なことは言ってないはずだが、なぜか彼女は首をかしげ、
「なんでって、覚えてないの?」
「覚えてないって、何をだよ」
「先生が私と結婚してくれるって言ったんじゃんかー」
また体が固まる。
こいつは何を言っているんだ?
「先生大好きだよ!」
雨宮は走ってきて俺に抱きついた。
大きく実った胸が俺の腹あたりに当たっているのをなんとなく感じながら、
「これは、、、夢か?」
ぽつり呟いた。