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三人娘の異世界メンテナンス紀行 〜旅と出会いと時々ダンジョン〜  作者: 紀美野ねこ
魔導都市リュケリオン

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77. 重い処理を軽くしたい

「確かルルに聞いたときは『マルリーさん以外に開けられない』『マルリーさんが許可を出さないと持ち上がらない』だったかな?」


 絶対安全な金庫と呼ばれていたそれ。

 ノティアを離れる前に解析したかったけど、許可を貰うタイミングがなかったんだよね。


「この長杖(ロッド)はあの金庫と同じで、どちらも古代魔導具なの」


「えっ? それって……売り物にしていいものなんです?」


「かつての私たち『白銀の乙女』が見つけたものなんだから、私たちがどうしようと自由よ?」


 アッハイ……


「すごい! どこで見つけたの!?」


「二つとも北方だったかしらね。金庫はマルリーが欲しいって言ったのと、もともと彼女がお金の管理をしててくれたから譲ったんだけど、この杖は私にも持てなくてね」


「私は素の筋力で持てるだろうと、姉に無理矢理買わされたわけですが……」


「姉?」


「ええ、マルリーは私の姉ですから」


 その言葉に私たちはフリーズする。

 は? いやいやいや…… はあ!?


「あなたたち、マルリーが巨人族なのは知ってるのでしょ?」


「いえ、全然知りませんでした……」


 かろうじて立ち直ったディーが返事してくれるが、私とルルはフリーズしたままだ。

 あー、でも、うーん……そう言われてみると、マルセルさんとマルリーさん似てるや。

 似てるけど、似てるけど!


「逆なら良かったのに、と何度も言われましたよ」


 そう言って微笑むマルセルさん。うん、それ言いかけて堪えてた。

 この話、深く突っ込むのはやめて話題を変えよう。


「それで、古代魔導具って話ですけど、なんで人によって重さが変わるんでしょう?」


「それをあなたに解析して欲しいんだけれど?」


 そーゆーことでしたかー。

 まあ、色々と分かってないことが多いとは言ってたし、これが魔導具として何が付与されてどうなっているのかは気になるところ。


「じゃ、解析しますね?」


「はい、どうぞ」


 一応、持ち主のマルセルさんの同意を得てから解析開始。


《起動》《解析》


 私の詠唱に少し驚いているようだけど、今さら気にしない。っていうかマルリーさんの弟だしね!

 さてと……


「あ、やっぱり重力魔法ってあるんだ」


 それが私の素直な感想だった。


「ミシャ、『じゅうりょく』ってどういうことかしら?」


 あー、うん、『重力』って概念がこの世界に無いんだ。


「えーっと、重力っていうのは、まあ重さによる下向きの力、ですかね」


 実際には星の引力と自転による遠心力を合成した力だったと思うけど、細かい説明はパス!


「重いものほど持ち上げにくいのは、その重さによる力、『じゅうりょく』が大きいからということですか?」


「そうです。で、その重力を操る魔法があるということです」


 マルセルさんもなんとなく理解はしてくれた模様。

 実際どういう理屈かはわからないけど、魔素って重力制御までできるのね。

 重力子、確かグラビトンっていうんだっけ? あれって未発見っていうか、存在もあやふやだったような……


「重いものを軽くできるから、ミシャがその杖を簡単に持てるってこと?」


「そうそう、そういうこと」


 ルルが鋭いので頭を撫でてあげよう。


「あの……ディオラ先生?」


「あ、あー、そうね。この子、ロゼ様の妹だから。内緒にしといて?」


 その言葉に驚くものの神妙に頷くマルセルさん。

 うーん、わかっちゃったからってポロッと言うべきじゃ無かったのかな?


「あなただけが軽く感じるのは?」


「うーん、これは推測なんですけど、重力魔法は動作に魔素の波長……色を選ぶんじゃないかと」


 私は視覚化を掛け、空色の魔素を長杖(ロッド)に流し込む。

 するとそれは付与された術式の上をピッタリと満たし輝いているように見えた。


「なるほど。私も試してみるわ」


 ディオラさんが視覚化を掛ける。やっぱりディオラさんも白なのね。若干、緑成分がある感じだけど。

 そして私から慎重に長杖(ロッド)を受け取って魔素を流し込むと……術式の上には青白い魔素だけが細々と流れているのが見えた。


「少し軽くなったけど、これ以上は無理ね。なるほど……」


 流れた分だけ若干軽くなっているってことは、例の金庫はマルリーさんの白の魔素の青成分+本人の筋力で持ち上げていると。

 まあ、普通の人だと全く軽くならないし、マルリーさんが巨人族で力持ちだからこそっていう合わせ技っていう線かな……


「その『じゅうりょく』魔法というのは便利そうだけど、普通の人には使えなさそうね」


「なんだか、すいません……」


「あなたが謝ることじゃないでしょ。残念だけど仕方ないわ。それに、私たちが持ってるよりは、あなたが使う方が良いってわかったのは収穫よ。

 それと魔素の蓄積量はどうなの? 今までの短杖(ワンド)の数倍はあると思うけど」


「えーっと、七、八倍ぐらいでしょうか? あと、この宝石がなんだか魔素の回復量を上げてくれてる気がします」


 微妙な透明度でうっすら青い宝石。サファイヤとかではないと思うけど、なんだろこれ……


「これはブルームーンストーンですね。希少な宝石というわけでもありませんが、魔素を良く吸うと言われています」


 エリカからもらったローブだけでなく、更に回復力が上がるのは嬉しい。

 MP切れた魔法使いなんて、ゲームだとお荷物でしかないもんね……


「なるほど……。それで、この長杖(ロッド)はおいくらです?」


「それは金貨十五枚です。あ、姉に買わされた時は十二枚だったので、利益は出てますからね?」


 白金貨二枚っていう予算内に収まっててホッとする。

 百五十万……。うん、これは経費、これは経費。仕事道具にはお金かけないとダメ。


「じゃ、これにします」


 先に預かっていた白金貨二枚をマルセルさんに渡し、金貨五枚のお釣りはそのままルルに手渡した。


「似合ってるよ、ミシャ!」


「やっと魔術士らしくなったな」


 長杖(ロッド)にローブ……。どこから見ても魔術士だけど照れ臭いなあ。いっそ魔女帽でもかぶる?

 それにしてもルルに会う前は魔術士って隠そうと思ってたのに、どこで間違えたんだろ……


「ところでディオラ先生。明日は輪講の日ですが、お休みにしますか?」


「いえ、魔術士ギルド本部には行く予定があったし、ちゃんとやるわよ。ミシャのおかげでいくつかわかったことがあるから、それについて皆に教えておきたいし」


 輪講ってまた懐かしい言葉を聞いたけど、こっちにもあるんだ。

 ディオラさんが先生の魔法講義の輪講なら、ちょっと出席してみたいかな……


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