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三人娘の異世界メンテナンス紀行 〜旅と出会いと時々ダンジョン〜  作者: 紀美野ねこ
魔導都市リュケリオン

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59. 手土産があるとだいたいすんなり

「ルル、ミシャ、大丈夫か?」


「平気だよ!」


「大丈夫。クロスケもいるしね」


 ゲーティアにある国境の大門をくぐったのは、朝の三の鐘が鳴ってすぐ。

 そういえば、この国境の街にまで王都の鐘の音が届くわけがないので、北側にある教会が手動で鐘を鳴らしてるそうだ。どうやって時間を測ってるのか正確なところは不明。

 私たちの腕時計よりも若干遅れ気味だったし、ロッソさんとナーシャさんで作った例の女神像があって、それが光るの見て鳴らしてるとか?


 おっと、鐘の話はどうでも良くて、私たちはほぼ一番乗りって感じで国境を越え、魔導都市リュケリオンに向かっている。

 行程は徒歩で三泊四日なんだけど、初日はディーの故郷のエルフの里に寄らせてもらう予定だ。

 で、残りの二泊は野宿。


 最初、野宿って聞いてちょっと不安になったが、歩きでリュケリオンに行く旅人の寄り合い場所のようなところがあるらしい。キャンプサイト的な?

 それなら別に村にでもしてしまえばと思うんだけど、ベルグとリュケリオンでの決め事で、この街道は両国の緩衝地帯になってるらしい。

 どっちにも所属しない=守ってもらえない場所には人は定住しないよね、と。


「ミシャ?」


「ん? えっ、どうかしたの?」


「また考え事してたでしょ?」


 アッハイ。


「もう少し先からが、私のいたエルフの里の領域だ。大丈夫だとは思うが気をつけておいてくれ」


「うん、了解」


 多分、二回目の説明になってると思います。ごめんなさい。

 私はちゃんと周りに注意しながら、ディー、ルルの後ろをついていく。殿しんがりはクロスケに任せてあるので大丈夫だろう。


 そうしてしばらく森の中を進んだところでディーが立ち止まった。

 私の索敵には反応はないけど、ディーには精霊の加護があってわかるんだと思う。


「セルティアの娘のディアナだ」


 前方に向かって普通に話しかけるディー。

 すると、


「後ろの者たちは?」


 どこからか声が聞こえる。すごい……


「私の友人だ」


「……よかろう。里の入り口まで来い。だが、おかしな真似はするなよ」


 めっちゃ警戒されてますね、私たち。

 まあ、自分たち以外との接触を避けてればそんなもんかーって気もする。

 ルルが怒り出すんじゃないかと思ったけど、全然平気そうだった。


「すまんな。皆こういう感じだから慣れてくれとしか言えん」


「ボクは全然。家の前に知らない人が来たら用心するよね」


 ルルの方がよっぽど大人でした。

 それに安心したディーが再び進み、しばらくしたところで開けた場所に出た。

 街道から鐘一つは森に入ったぐらいかな? お昼ぐらいに森に入ったので、まだ日は高い。


「そこで止まれ」


 すっと両サイドの樹の影から現れたエルフ二人。

 うーん、エルフ、普通にイケメンだ。全然タイプじゃないけど。

 まあ、言われたままに立ち止まる。


「戻ってきた理由は?」


「ベルグからリュケリオンに向かう途中なので一時的な里帰りだ。里の皆の分の土産もある」


 土産っていうの? って感じだが、エルフの里に一泊させてもらうのに必要らしく、結構な重さのものを運んできた。何かというと塩なんだけど。

 森の中に籠ってれば、確かに塩分を取るのはちょっと難しいよなと思う。

 ディー曰く、どうしようも無くなると誰かがゲーティアまで買いに出るらしい。そして、ディーが里を出るまでは&里を出てからも彼女の役目だったとか。


「ふむ、そういうことなら」


「待て待て、ドワーフがいるぞ。狼もだ」


 なんか揉め始めちゃったけど、逆に面白くなってきたので静観しよ。

 ルルも全く気にしてないのか、しゃがみ込んでクロスケと遊んでるし。


「はあ……、君たちの判断に困るなら長老を呼んでくれ。それなら良かろう」


 ディーがため息一つついて彼らに諭す。

 そして、塩が入った袋を一つ渡した。ディー、ルル、私で一袋ずつ持ってきてて、合計で15kgぐらいはあると思う。

 ちなみに、ルルが一番大きい袋を楽々と背負ってるんだけど、10kgあると思う……


「……私が行ってくる」


 どっちが若いのかわからないけど、多分、若い方が行ったんだろう。

 残ったのが「どうぞ」派だったのが救いかな?


「すまん。外に出たことのない若いのは警戒心が強すぎてな」


「いや、気にしないでくれ。こちらも急に来たのだしな」


 ディーがそんなことを話しているうちに、さっきの若い方のエルフがもう一人エルフを連れて戻ってきた。

 いかにも長老……という感じではなく、まだまだ妙齢ぐらいに見えるご婦人。でもきっと五百歳オーバーとかなんだろうなあ。


「お久しぶりです。長老」


「久しぶりですね、ディアナ」


 柔らかい笑顔でそう返す長老。流石に貫禄がある。


「私の友人で一泊させたいので連れてきました。その分、塩も多く持ってきたので許可をもらえればと」


 その言葉に長老の目が若干鋭くなる。

 これはいわゆる「見極めますよ」的なアレなのかな。


「ルルだよ!」


「ミシャです」


「ワフッ!」


 まあ、普通に挨拶する以外ないよねと。

 が、長老がクロスケを凝視してて……怖い。

 うーん、これはバレたかな?


「ミシャ、すまんがクロスケ殿の……」


「うん。クロスケ良いよ」


「ワフ」


 いつの間にか自分でオンオフできるようになってたクロスケが毛色変化を解くと、かっこいい金毛が現れて、本来のウィナーウルフの姿に戻る。


「おおおっ!」


 ええー……

 長老以下、エルフたちみんなひれ伏し始めたんだけど……


「生きているうちに神獣様に会えるとは……」


 ん? 神獣?

 うん……気にしないことにしよう。


「で、長老。家族のところで一泊して行きたいのだが?」


「え、ええ、そうでしたね。もちろん、かまいませんよ」


「ワフン」


 クロスケがドヤ顔して可愛いのでわしゃわしゃしてあげよう。

 ディーはともかく、エルフさんたちが不思議な目で見ているが気にしない。


「ルルもミシャも待たせてすまなかった。うちへ案内する」


「おっけー。あ、この塩の袋は?」


「ああ、そうだな。長老、ここで二人が運んでくれた分もお渡ししておきます」


「たくさん持ってきてくれて助かりました。あとは若い者に運ばせるわ」


 そうことならと、私がストンと、ルルがドスンと袋を下ろす。

 私のは余裕だと思うけど、ルルのは重いから頑張って……


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