駄悪魔さんと僕。2
彼女に出会ったのは約半年前の冬。
作業ノルマ未達成及び資格取得目標未達成のペナルティとして減らされた給与を受けて、日々の食費にも困っていた頃。
「……これでいいか」
安い鶏肉を合わせ鏡の間に置き、体育座りでじっと眺める。
今思えば疲れていたのだろう。ネットで見かけたうろ覚えの黒魔術を試していた。
朝から晩まで働き、月に休みは一日あるかないか。
頭は寝不足と疲労で朦朧とし、食事も適当。
部屋の掃除もロクにできず、山のように積み重なったゴミ。
縋れるなら、何でも良かった。
目の前が揺らいで、ボヤける。
「……誰でもいいから、助けて……」
思わず喉から嗚咽とも言い難い異音が出てしまう。
息を吸えども妙な音が出るばかりで言葉にならない。
泣いているというよりは奇妙な音がするオブジェのような人間モドキの前に『それ』はいた。
「―――――私を呼んだのは貴方ですか?」
黒い羽。異形の角。
人らしからぬ姿はまさに、ヒトが想像していた悪魔そのもの。
彼女はただ窓から外を見ていた。
たったそれだけにも関わらず、絵画が何かかと思う程の美しさだった。
こんな状況でなければもっと良かっただろう。
「実際に見ると景色が全然違いますね。ここまで淀んでるなんて……おっと、それはダメですよ」
手に持っていた携帯を見えない何かに弾き落とされる。
警察を呼ぼうとしたのがバレたのだろうか。
「さて、と。こうして呼ばれたからには古の盟約に則って貴方の願いを叶えましょう。ただし」
悪魔が微笑む。
文字通り、魂が震えるような笑みだった。
「―――――魂と引き換えに」