駄悪魔さんと僕。
「おはようございます」
「おはようございます」
今僕の前にいるのは悪魔さん。
本名ではないけれど、名前を教えてくれないのでこう呼んでいる。
長い黒髪、色気を感じる唇。見通すような鋭い目。
しなやかな身体に妖艶さまで感じる程美しい肌。
そして―――――色気の無い上下ジャージ。
やる気の無い格好から分かるように、彼女は家にずっといる癖に部屋の掃除も料理もせずに一日をネットサーフィンとゲームに費やしている。
だから彼女は、悪魔は悪魔でも、駄悪魔さんなのだ。
「今日の朝ご飯は目玉焼きです」
「またですか」
「それじゃあ行ってきます」
「いってらっしゃい」
今日も僕は悪魔さんの分の朝ご飯を置いて家を出る。
時刻は5時半。始業時刻は8時からだけれど、朝の清掃を考えればこの時間に出なければならない。
道中のコンビニでサンドイッチを購入し、胃袋へ放り込みながら会社へと向かう。
終業時刻は17時。……一応、そういうことになっている。
実際の終業時刻は早くて20時、日を跨ぐことすらよくある話だ。
まあ、僕の仕事の話はどうでもいいことだ。
これは僕とやる気の欠片も無い悪魔な彼女、悪魔さんの話なのだから。